第35話 訓練2
「これで私の方が有利ね」
確かに雪の言う通り地面を歩けない分俺の方が不利だ。
俺は木を渡っていかなければ移動できない。
雪はその隙を逃すまいと水の刃を放つ。
俺は木を蹴り他の木に渡ってそれを回避する。
俺がいた木は完全に切断された。
それだけではない、水の刃は軌道を変えて俺の方へと向かってくる。
回転を加えたか。
俺はさらに他の木に飛び移り回避する。
今回は水の刃は飛んでこない。
だが、追い打ちをかけるように雪は水の刃を連射してきた。
俺は拳を強く握り全力で空気を殴る。
その勢いで空気が押し出され嵐のような風が発生した。
「嘘!!」
雪は驚いているが無理もない。
雪が連射してきた水の刃は風圧で全てなくなった。
その隙に俺は雪の眼前まで迫り腹パンした。
「今日はの実践訓連は終了だ。」
「まだやれるわよ」
雪は不満そうだが、これからやる体力づくりの方が過酷なものになることをまだ知らない。
「じゃあ、そのあり余った体力を使ってもらおうか」
「分かったわ」
そうして雪の体力作りが始まった。
雪は知略化で能力の扱い方はそこそこだが、体力面では歩に及ばない。
第一ステージが終わるまでに少なくとも歩以上の体力を付けさせることが目標だ。
それから全力ダッシュ100本、腕立て伏せ100回、腹筋100回etc…計5セットを全てやり切った。
「お疲れ」
雪はへとへとになりその場に座り込んでいる。
「あなたも一緒にやったはずなのに何で平気なのよ」
「まあ、幼少の時からもっと過酷な訓練をしているからな」
最近は俺の過去の事を話すようになってきた。
もう、すべて話してもいいかもしれない。
きっと雪なら俺の事情を理解してくれる気がする。
一瞬そんな思考をしたが、今はまだ早いと結論付ける。
「明日からこれを毎日するからな」
「冗談でしょ、私は人間なのよ。彼方みたいな化け物と一緒にしないで。」
「俺の訓練を耐え抜けば晴れて雪も化け物の仲間入りだ。」
そんな冗談を言っているうちに雪の体力は回復した。
「彼方、この後予定ある?」
雪からの突然の誘いで少し困惑する。
この後は能力の訓練を一人でやろうと思ったが俺の勘が断るなと言っている。
「いや、この後はずっと暇だ。」
「じゃあ、少し付き合って」
それから俺と雪は病院の外に出る。
向かう先は雪の家だそうだ。
「家に帰って何するんだ」
「とりあえずは、服とかの調達ね。」
「服はptで買えばいいだろ」
神殺人殺のptは本当に何でも買うことが出来、俺の今着ている服もptで買ったものだ。
「これだから男は、お気に入りの服を着ていると本調子になるのよ」
そんなものか。
俺にはさっぱり分からないな。
雪と並んで歩いているが不思議と気まずさを感じない。
まあ、何度も密会していればこんなものか。
「ねえ、最近愛奈と絡んでいるようだけど何なの?」
唐突にそんなことを言い始めた。
「ああ、最近仲良くなった」
「それにしてはくっつきすぎだと思うのだけれど」
まあ、確かに愛奈はスキンシップが激しい方だと思う。
だが、雪には関係ないだろ。
けど、それを言ったらめんどくさくなりそうだ。
「愛奈から来ているんだから仕方が無いだろ。」
「あなたの力なら余裕で振りほどけるでしょ。」
「出来なくはないが・・・」
そんな話をしているとようやく雪の家に到着した。
その家を一言で表す言葉を俺は知っている。
めちゃくちゃ大きい。
それが率直な感想だ。
現代日本とは思えない構造。
異世界の貴族が住んでいるようなお城が堂々と立ってある。
仕事で何度かこのような家に侵入することがあったが、個人でこれほどの家に住んでいる人間を初めて見た。
「私の父はTHSの社長なの」
俺の様子を見て察したのか雪が話す。
THSというと知らない人はいないレベルの大企業だ。
そういえば、THSの社長は栗花落という名前だったか。
栗花落家は世界に名を轟かせている名家の一つ。
最近は代を交代してさらに業績が伸びたと聞いている。
「いい父親何だな。」
「良い父親ね。」
雪は意味深な返答をする。
「とりあえず入るわよ」
そういわれ、俺はお邪魔しますと言い中に入る。
家の中は外見と同様に圧倒的迫力がある。
今にもぞろぞろとお手伝いさんがやってきそうだ。
「お手伝いさんはいるのか?」
「ええ、いつもはいるけどこの騒ぎだとさすがにどこかに行っているわね」
普段はいるのか。
まあ、この家の広さだとお手伝いさんが居なければ掃除が行き届かない。
だが、この家から複数の気配を感じる。
しかも、一般人ではない。
かなりの実力者が複数いる。
俺は雪の腕を掴み制止させる。
「誰かいる」
「大丈夫よ。それ、多分父と護衛の人だから。」
そういう事なら安心だが、まだそうと決まったわけではない。
ちゃんと警戒するにい越したことはないな。
「確認できるまで俺のそばを離れるなよ」
雪は顔を頬を赤くし「分かった」と小さく呟き俺の背中に隠れた。
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