第31話 救出作戦4
数往復し、人質を全員病院に運ぶことが出来た。
愛奈と八乙女には軽症者の手当てをしてもらっている。
まあ、軽症者は意識がないだけで何もしなくても大丈夫だとは思うが。
問題は重傷者だ。
重傷者の中には勇人もいる。
愛奈の能力では治療できないほどの重傷だ。
少しまずいな。
まずは勇人から手術するか。
幸いにもここには大量の薬品や手術道具がある。
雪が勇人に静脈麻酔薬を点滴で投与する。
元々意識はないが途中で目を覚ましたらショック死してしまう可能性があるからな。
それに、麻酔なしで色々な場所を切開するのは俺でも苦痛を感じる。
こんな時のためにも愛奈の能力をもっと強化させておくべきだった。
まあ、今更後悔しても何も変わらない。
重傷者全員の手術が終わった。
正直、危うい場面もあったが雪のサポートもあり全員無事に手術を終えることが出来た。
もう少ししたら目を覚ますはずだ。
軽症者の治療室へ様子を見に行くとすでにほとんどの人間が目を覚ましている。
その中には晴翔、歩、安藤季里奈、の姿もある。
歩と晴翔は楽しそうに談笑している。
後遺症などの心配はなさそうだ。
安藤季里奈は愛奈、八乙女と何かを話している。
こちらも同じく大丈夫そうだな。
歩と晴翔は俺に気づき近づいてきた。
「久しぶり暁。」
そう言って歩は俺に抱きついてきた。
歩はたまにスキンシップが激しくなる時がある。
この癖を女性に向けさせないように注意しなくては。
特に今、俺たちのチームには女性が4人もいる。
そんな邪推な思考を捨て、素直に回復を祝ってやろう。
「怪我人は寝てろ。」
歩と晴翔がベッドに腰を下ろし事の顛末を聞く。
大体の内容はこうだ。
俺、雪、愛奈、八乙女が転送されて1日目の夜にpt節約のために食料を近くのコンビニまで調達しに行き、その途中で運悪くbeastのメンバーに出くわし、そのまま誘拐されたらしい。
大方予想通りだった。
部屋が荒らされた形跡がなかったことから、4人が外に出たとしか考えられない。
Beastのメンバーが家に侵入し4人を誘拐した後に荒らした後を片付けるとは思えない。
「まあ、不用心だったな。説教は栗花落から受けてくれ」
この失態は気の緩みが原因だ。
あとで雪に説教するよう伝えておこう。
それよりも俺の心配事は2つある。
一つ目は勇人の事だ。
勇人は神殺人殺が始まって2つの失敗をしている。
一つ目はバトルロワイヤルでのこと。
もう一つは今回の事。
今回俺達が不在の間、勇人は雪にリーダーを任されていた。
リーダーとしては今回のような事を予測して外出をさせてはいけなかった。
勇人のこの2つの失態はチームの命に直接かかわることだ。
被害者である人間が気にせずとも正常な人間であれば責任を感じてしまう。
それも、今回は頭がよく責任感が強い勇人だ。
心が壊れていてもおかしくはない。
愛奈のような能力でも傷は治せても心は治せない。
俺も、心の傷を治すのは不可能だ。
壊すことなら容易いが。
まあ、このことは勇人が起きてから何とかしよう。
今は、最重要案件がある。
俺は雪を人気のない場所に呼び出した。
「今から、誰一人として病院外に出さないでくれ。それと人がいる部屋のカーテンを全部閉めておいてくれ」
「いいけど、どおして?」
「あとで話す」
俺はそう言い残し病院の外に出る。
あとで、話すとは言ったがこればかりは言えないな。
俺の過去に関することだから。
病院の外は変わった様子はない。
だが、周辺に人の気配がある。
俺はその気配の中で一番強そうな気配をしている奴に向かって殺気を放つ。
木の陰から男が出てきた。
その男は少しやせ型だが、確実にKINGよりも強い。
KINGは元軍人だが、軍人は常識的な訓練を受けている。
だが、こいつは俺と同じくその常識の範疇を優に超えているであろう訓練を受けている。
「見ない顔だな。俺が出てくるのをずっと待っていたのか」
俺はそいつに話しかける。
「あの人の言う通りだったな。待っていればお前が出てくると。」
「で、俺に何か用か?」
「ああ、あの人からの命令でお前を殺せとあった。」
「そうか、残念だがお前じゃ俺を殺せない。今なら見逃してやるからさっさと帰れ。」
そう言うと目の前の男は不敵な笑いを初めた。
気持ち悪い。
不快感を覚えるその笑いを見届ける。
「俺の星の数を教えてやろうか?」
星の数という能力の強さといって差し支えない重要な情報を教えてくれるらしい。
こいつ、体作りや戦闘能力は訓練してるはずなのに戦略は何も学んでいないのか?
「ああ、教えてくれ」
「75個。それが俺の星の数だ。」
自信満々に言ったその星の数は確かに一般人にしてみれば多い方かもしれない。
いや、一般人であれば逆立ちしても届かないような獲得数だろう。
実際この第一ステージのクリア条件は星10個以上だから75個はそうとう上位なはずだ。
だが、俺を含め特殊な訓練を受けた連中ならもっと星を獲得していてもおかしくない。
何なら75個はあまり多いとは思えない。
「それを聞いて俺が怯むとでも思ったか?それよりもお前、俺の事知っているのか?」
「は?お前の事なんて知るわけ無いだろ。あの人からは顔写真だけもらった。」
「だろうな。それよりもお前、そいつから使い捨ての駒にされてるぞ」
「そんなわけあるか。俺とあの人はもう師匠と弟子のような関係だ。」
そんな雑談をしながら俺はここに居るこいつの仲間の位置と人数を気配で特定することに成功した。
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