第25話 塔5
その後も色々と雑談し、ようやく2人と合流することが出来た。
「急に走り出したから驚いたじゃない」
合流するなり雪は説教交じりに声を掛けてくる。
「雪ちゃんごめん、暁君は私を助けてくれたんだよ。あまり責めないで上げて」
「暁君って・・・」
愛奈の俺への対しての呼び方が変わっていたことが気になったのか雪はこちらを睨んでくる。
「それよりも先に進もう」
「そ、そうね」
雪の動揺はまだ収まっていないようだ。
あとで事の経緯を話しておくことにしよう。
4人全員が集まったことにより雪が見つけ出した扉を通過することが出来た。
それから俺たちは約10階層ほど登り、やっと最上階までたどり着いた。
「ここが最上階ね、この先にいるはずのボスを倒せばゲームクリアのはずよ」
ボスがどれほどの強さかは定かではないが3階層の時点で守護神レベルの敵が現れたことから相当の強さと予想することが出来る。
それは雪も想定しているはずだ。
「一応前もって役割を確認しておくわ。まず、私と如月君がメインで戦闘する。柚は私たちのサポート。愛奈は仮に誰かが負傷したらそれの手当てをして頂戴。」
雪の作戦に全員が同意し扉を開ける。
扉の先がどのような構造なのか、ボスがどのような敵なのか詳細が分からないためあまり作戦を立てることが出来ない。
扉の先での臨機応変な対応が求められるな。
扉の先に足を進めると見覚えのない学校の校舎だった。
ここは、職員室だろうか。
「此処は・・・」
「どうした?」
雪はこの場所を知っているかのように驚いている。
「私たちの学校よ。でも、なんでこんなに都合よく私たちの学校が最後の階層になったのかしら」
雪の疑問の回答としては2つ考えられる。
1つ目は完全に運。
ランダムで選ばれただけ。
でも、これはほぼ天文学的数値だ。
よってこの考察は却下。
2つ目は参加者の記憶を参考に作られている。
参加者と言っても俺は間違いなくこの学校を見たことがないから除外される。
つまり3人の内誰かの記憶をもとに作られているはず。
まあ、3人の誰の記憶かはこの際重要ではない。
この考察が正しければ神殺人殺の秘密に少しは近づけるのではないだろうか。
思い返せば最初に挑戦したゲーム会場の無人島、なぜか見覚えがある気がする。
だが、どこで何故見たかは思い出せない。
今はこんな考察をしている場合じゃないな。
そう自分に言い聞かせ目の前のゲームに集中する。
「とりあえず皆でボスを探しに行くわよ」
「おー!」
「愛奈もっと緊張感を持ちなさい」
「大丈夫だって。何かあれば暁君が守ってくれるんでしょ」
愛奈はそう言って俺の方を見る。
「努力はするが、絶対に守れる保証は無い」
その間、雪はつまらなそうに俺たちを見ていた。
そうして俺たちは屋上まで来た。
「いたわね」
俺たちは物陰に隠れているが前方には中世の騎士のようなこの学園に似合わない見た目のおそらくボスが仁王立ちしている。
一見4人がかりなら難なく倒せそうな見た目をしているが数々の経験を積んできた俺にはわかる。
奴は相当強い。
バトルロワイヤルで遭遇したあの殺し屋や守護神とは比べ物にならないほどの覇気を感じる。
あいつに雪たちが勝てるのだろうか。
今回俺は雪の試験を兼ねているためあまり貢献しない予定だったが、もしもの時は俺があいつ(ボス)を始末するか。
「とりあえず、私と如月君で先行してボスに攻撃を仕掛ける。如月君もそれで良いわよね」
この質問の意図は俺も手伝えという事なのだろう。
「分かった」
「そのあとは臨機応変に各自で対応ってことで。じゃあ、行くわよ」
雪の合図で俺と雪はその場から飛び出しボスへ走る。
俺の立ち位置は全員を守れる位置つまり雪と八乙女、愛奈との間がベストだろう。
そう判断し良い感じに雪をサポートできる位置まで到着した。
雪は守護神に放った威力以上の水圧の刃をボスに投げた。
ボスはそれを容易く受け流し、ついでに水の刃をさらに勢いを付け俺めがけて飛ばしてきた。
その速度は普通の人間が目で追えないレベルの速度に達している。
避ければ後ろにいる八乙女と愛奈にあたってしまう。
俺は仕方なく持っていたナイフで水の刃を受け流した。
水の刃は近くにあったコンクリートの壁を貫通し勢いが弱まることなく何処かへ消えてしまった。
雪は俺を信じてなのか、はたまた心配していないのかは定かではないが俺の方を向くことなくボスから目線を外していない。
良い判断だ。
あのボス相手だと目線を外したらその瞬間首が飛んでいる。
雪は、今度は掌に火球を生成させそれをボスに放った。
火だと受け流される心配はないと判断したのだろうが手練れ相手だとそういう常識は通用しない。
ボスはその火の玉すらも受け流し俺めがけて火球の軌道を修正した。
俺は先ほどと同じように火球を受け流す。
このままでは、雪の体力が先に尽きるな。
俺はそう判断し一度雪たちを引かせることにする。
「栗花落、ここは一旦引いて作戦を改めろ」
「でも、そんな隙ないわよ」
「俺があいつの気を引くからそのうちに引け」
「いくらあなたが強いからと言ってあんな奴相手に時間稼ぎなんて無理よ」
「いいから心配するな。八乙女と愛奈を連れて一旦引け」
俺がそう指示を出すと雪は「分かった」と言って後ろに下がる。
そして八乙女と愛奈を連れて屋上から去った。
さて、雪たちが戻ってくるまで殺さない程度に遊んでやるか。
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