第24話 塔4
「あなた、どれだけ強いのよ」
雪が数秒の戦闘を生で見て驚いている。
「能力を使っただけだ」
「彼方の能力って身体能力を向上させる能力だったわよね。それだけであの動きは可能なの?」
雪にも俺の本当の能力を話していない。
だが、彼女の洞察力は目を見張るものがある。
現に今も俺の能力を疑っている。
彼女の口の堅さは確かだが、話すメリットもないため今はまだ黙っておくことにしよう。
「出来たんだから可能なんだろ。」
「それもそうね」
雪は納得してくれたような返答をしたがまだ疑いの目は残っているはずだ。
「それよりも早く2人を探しに行くぞ」
それから数分探し回り八乙女柚を発見することが出来た。
「柚、大丈夫だった」
「問題ありません。能力を使って敵に見つからないように行動していましたから」
「そう、なら良かったわ。」
「それよりもまだ、愛奈さんとは合流出来ていないのですね」
「ええ、だから一刻も早く見つけないと」
その瞬間一色愛奈の叫び声が微かに聞こえた。
雪と八乙女はその声が聞こえていなかったのか何事もないように一色愛奈を探している。
恐らく敵(守護神)と接触したのだろう。
「2人ともそこで待っていてくれ」
俺はそう言ってある程度の速度で声の方向へ走った。
そして、2人が見えなくなったことを確認し俺が出せる全力の速度で声の方向へ走る。
「見つけた」
俺が一色愛奈を視認した時彼女は守護神の前で戦意喪失しているかのように跪いていた。
守護神は彼女を殺そうと腕を振り上げた。
まずい、間に合わない。
俺は仕方なく能力を発動し一色愛奈の目の前と今いる自分の座標を入れ替え、守護神の攻撃をナイフで往なした。
そして守護神の体制が崩れたのを確認し即座にナイフで守護神の首を落とす。
守護神は機能停止状態になり粒子化しやがて消えていった。
一色愛奈を助けられたのは良かったのだが能力を見られてしまった。
俺としたことが重大なミスを犯した。
どうするか…
そんなことを考えていると突然、
「ありがとーー」
彼女は泣きながら抱き着いてきた。
俺の服には彼女の涙と鼻水が付いた。
「ああ、無事で何よりだ。それよりも俺の能力の事なんだが..」
俺は彼女に口止めをすることにする。
「すごいね、如月君の能力。身体能力を伸ばしただけであんなに速く走れるもの何だね」
なんか都合よく解釈してくれたな。
俺は彼女の誤解をそのままにしておくことにした。
そして一色愛奈が落ち着くまで待ち2人で雪と八乙女のいる場所まで歩いて行く。
意外と距離があるな。
俺が全力で走ったこともあり数秒程度走っただけでそれなりの距離になっていたようだ。
その間、八乙女と二人で行動していた時と同様に気まずくなると思ったが実際はそうではなかった。
「如月君は好きな食べ物とかはないの?」
「そうだな、カロリーメイトなんかの食べやすいものが好きだ」
「へー。おいしいよね」
このような会話が続いている。
話題を振ってくれるのは嬉しいが正解を答えられているかが不安だ。
果たしてさっきの質問の回答は一般的な高校生の回答として相応しいのだろうか。
「一色は、」
毎回話題を振らせるのも悪いと思い今度は俺から話題をふろうとしたが遮られた。
「一色じゃなくて愛奈で良いよ。むしろ愛奈って呼んで」
一色愛奈は食い気味で言って来た。
だが、雪と同様に関係を怪しまれる可能性だってある。
いや、確かに雪とは多少俺の秘密を共有している仲だが、一色愛奈との関係とは何だ。
俺は長考し彼女との関係は知り合いから友達に進化したと結論付けた。
友達なら名前で呼び合うのも不自然ではないはずだ。
「じゃあ愛奈で」
「うん。それで良し」
「どういう経緯で愛奈は栗花落や八乙女、安藤と仲良くなったんだ?3人とも性格が全く違うだろ。」
ここで、雪の情報を少しでも入手しておけば後々彼女との交渉などがあったときに有利に働くだろう。
「そうだね、あんまり覚えてないけど孤立していた雪ちゃんに話しかけたら自然と仲良くなったのかな?」
「孤立?」
「雪ちゃんってほら結構思ったこと口に出しちゃうでしょ。それに雪ちゃんのお父さんが会社の社長ってこともあって変に言い寄っている人がいたんだよね。」
なるほどな。
確かに雪のあの性格的に簡単に友人が出来るとは思えない。
そこも、彼女の弱点だろう。
まあ、これからその弱点をゆっくり直していくか。
「それよりも私も暁君って呼んでも良い」
「ああ、好きに読んでくれ」
「じゃあ、暁君はどうやってあの3人と仲良くなったの」
俺があいつらと仲良くなった経緯か。
そして俺は少し前の事を思い返す。
俺は仕事を引退して普通の高校生になろうと決意しいざ高校に入学しても独りぼっちだった。
それも仕方なく俺は普通の高校生というものを全く知らなかったのだ。
俺が今まで常識だと思ってきたことはほとんど常識ではなかった。
例えば日常的に殺人の訓練をしないことや気配を消さないことなど前職では常識だったものが常識ではなくなっている。
それが原因で俺はずっと一人だった。
まあ、一人は慣れているが周囲の人間はこちらを憐みの目で見てくる。
その中であの3人だけ俺に話しかけてきてくれた。
後から話を聞くと歩が面白そうだから話しかけようという事になったらしい。
そんな理由でも俺は嬉しかった。
以前の事を思い返したが、本当の事を言うわけにはいかない。
「そうだな、普通に話しかけられて普通に仲良くなった」
「まあ、普通はそうだよね」
こんな普通な回答でも愛奈は喜んでいる。
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