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act.27「怪異を探せ!」

「――ここが噂の廃病院か」

「ですね……魔力反応は確かにここを指してますから」


 駅から数十分歩いたところに、その場所はあった。

 かつて病院だった――それだけは外観で分かるが……その外壁は剥がれ落ち、周囲は雑草が生い茂り、一般的な病院のそれとは似ても似つかなかった。

 おそらく、放置されてから結構な年月が経っているのだろう。


 ……いや、マジでお化け屋敷なんですけど?


 さっきまでいた賑やかな駅前からたった2、3キロ進んだだけなのに、ここまで雰囲気変わるんか?


「さ、行きましょう」


 そう言って珠々奈は、まったく躊躇することなく入っていこうとする。


「ちょ、ちょ……! 入るの早くない……!?」

「今更何言ってるんですか? 怪異はこの中にいるんですから、入らないと始まらないじゃないですか。というか……もしかして怖いんですか?」

「い、いやー、別に怖いって訳じゃないんだけど……色々と、その、心の準備ってものがさ……」

「訳わかんないこと言ってないで、さっさと入りますよ」

「ちょ、ちょっと……!」


 俺の声を無視して、中に入っていく珠々奈。

 これは……俺もそろそろ覚悟を決めて入るしかないか……。

 俺は意を決して、珠々奈の後を追った。


 建物の中は、案の定というかなんというか、荒れ放題だった。

 色々なものが散乱していて、割と足の踏み場がない。

 しかもその中には、医療機器やカルテみたいなものも混ざっていて、嫌でもここが元は病院であったことを再確認させられる。


「それで……? 怪異どこよ? さっさと倒して帰ろうよ……」

「反応ではこの辺のはずなんですが……」

 珠々奈がキョロキョロと周囲を眺める。


 建物の構造上外の光が入り込みにくくなっているのか、辺りはぼんやりと薄暗かった。思わず今が昼間だということを忘れてしまいそうになる。

 なので当然、怪異を見つけるというのも一筋縄ではいかない。建造物に侵入しているということは大した大きさの怪異ではないのだろうが……それだけに、このゴミと瓦礫の山の中からそれを見つけ出すのは至難の業だった。


 俺はすぐそばの壁にあった照明のスイッチのようなものを、パチパチと押してみる。しかし当然、なんの反応もしなかった。

「やっぱり電気はきてないよね……」

 まぁ、ここまで荒れた状態なら、とっくに電気も止められているに決まっている。


「……あ!」

 するとステラギアの機能を使って魔力の反応を確認していた珠々奈が、突然声を上げた。


「え、何?」

「怪異が動き始めました。……こっちです」

「どこ!?」


 視界の端で、ネズミくらいの大きさの何かが、ゴソゴソと動く。

 ……もしかしてアレか?


「あ……アレです!」

 やっぱり。

 ってか、思ってたよりだいぶ小さいな。

 とても人に危害を加えられるようには見えないんだけど。


「アレって、そこまでして倒す必要あるの?」

「当たり前です。今は小さいですが、いずれ大きくなって脅威度A以上になることもあります」


 おお、それは……ヤバいな。


「それに、小さいままでも人に悪影響を及ぼす可能性だってあるんです。現に、心霊現象として目撃され始めているみたいですから」


 そうか。そういえばさっき、心霊スポットとして話題になってるみたいなことを言ってたっけ。

 確かにそれなら……これ以上野放しにしておくのは危険か。


 それにしても、すばしっこい怪異だ。

 ちょこまかと動き続けており、少しでも目を離したら見失いそうになる。


「挟み撃ちにしましょう。私はこっちから行きます。あなたはそちら側から回り込んでください」

「う、うん」


 珠々奈はステラギアを展開して攻撃形態(アサルトフォーム)に変形させる。俺もそれに倣って――攻撃形態にはまだ出来ないので飛行形態(フライトフォーム)に変形させた。


 俺たちはふた手に別れ、怪異を追い詰めていく。


「あ、そっちに行きましたよ!」

「え? どこ!?」


 ヤベェ、しっかり見失った。

 くそ、ここで逃す訳には……。


 俺は思わず、後ずさりをしてしまう。


 その時。

 ――むぎゅ。

 何か柔らかいものを踏んだ。


 ギエエェ……。


 ……ん?


「あ……怪異の反応、消滅しました」


 …………え??


 こうして、俺の初任務は呆気なく幕を閉じたのだった。

 

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