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act.11「クソったれ……!!」

 珠々奈は、怪異に目掛けてダイブし――その瞬間、ステラギアを武器に変形させる。


 珠々奈の意志に呼応したそれは、ひと振りの剣へと形を変えていた。片手で容易に振るえるサイズの片刃の剣だ。

 これが珠々奈の攻撃形態(アサルトフォーム)だった。


 それを怪異の頭部――その大部分を占める巨大な目玉目掛けて、突き入れる。


「――喰らえぇッッ!!」


 ――こういった目玉を全面に押し出した見た目の怪異は、そのまま目玉が弱点になっていることが多い。

 それは、数多の戦闘を潜り抜けてきた珠々奈が、その経験上で得た怪異の共通点だった。


 だから……こういうタイプの怪異が現れたら真っ先に目玉を潰す――!


 そうすれば、怪異は致命傷を負い、その活動を止める――はずだった。


「なっ……!?」


 だが、珠々奈の剣の切っ先は――いとも簡単に目玉の表面で受け止められていた。

 その長い刀身は、怪異の目玉に先端を押し当てたまま静止する。


 剣が……入っていかない。


 いや、違う……!


 よく見ると珠々奈の剣は、その目玉には届いておらず……その数センチ先に張られていた、薄い膜のような結界に阻まれていた。


 そして珠々奈は、この結界とよく似たものを知っていた。


 これは――。


AMFアンチマジックフィールド――!!」


◇◇◇


 俺は楠木さんの口から放たれた言葉に、驚きを驚きを隠せなかった。


「本当ですか、それ……?」

『ええ、間違いないです』

 

 そして、俺にもう一度、その言葉を告げる。


『あの怪異は……恐らく、AMFが使えます』


 いや、使えますって……。


「その、AMFって……魔法少女が使うものなんじゃないんですか?」

『その解釈も間違ってないですが……もともと私たちが言う魔法というのは、怪異が使う力のことなんです』

「怪異が……?」

『はい。そして魔法少女が使う魔法は、あくまで怪異の力をこちら側で解析したものに過ぎないんです』


 つまり、オリジナルはむしろ怪異の方で、魔法少女の力の方がコピーということか……。

 確かに、それならばAMFが使える怪異がいることにも納得がいくけど……。


「だったら、AMFを破る方法とかもあるんじゃないですか?」

『もちろん、あるにはありますが……』

「じゃあ、それでさっさとやっつけちゃえばいいじゃないですか。それなのになんであの子は、あんなに苦戦してるんですか……?」


 俺がそう聞くと、楠木さんは躊躇しながらもこう言った。

 

『ダメなんです、彼女の力だけじゃ……』

「え……?」

『AMFを破る唯一の方法は、その結界が許容できるそれを上回る魔力をぶつけることです。でも……そんな魔力は1人の魔法少女に扱えるはずがないんです』

「それじゃあ、一体どうやって倒せばいいんですか?」

『それは……複数の魔法少女が、同時に魔力をぶつければいいんです。そうすれば……AMFの魔力許容量を超えることが可能なはずですから。でも……』


 ……そうか。

 そういうことか。


 今、ようやく分かった。千景さんがあんなにはっきりと、俺の出番が来ると断言した理由が。


 つまり千景さんは、最初から分かっていたのだ。この怪異がAMFを展開することが出来て――あの子1人だけじゃ歯が立たないと。

 そして、AMFを破るには――俺の魔力が必要になると。


 だけど、今の俺は……魔力を放つどころか、どうやって使えばいいのかすらよく分かっていないのだ。そんな奴の力をどうしてアテにできるんだ?


 空を見上げると、空中で戦っていた少女は、徐々に怪異の力に押され始めていた。

 当然だ。いくら攻撃したとしても、その刃が怪異に届くことはないのだから。


 俺は、どうすれば……。

 こんなところで手をこまねいていることしか出来ないのか……?


 ……。


「……ックソったれ!」


『ちょっと、芹澤さん!?』


 気付けば俺は、走り出していた。

 今の俺が向かったところで、何ができるのかは分からないけど。

 ただ黙って見ているだけよりは、全然いい。


『勝手に持ち場を離れないでくださいっ……!』


 通信から楠木さんの慌てた声が聞こえてくる。だが、俺は走ることをやめなかった。


 ――自分が何を出来るかなんて、やってみてから考えればいいだろ……!


 今はとにかく、あの子の元へ――!


 そして俺は、剣と魔法が飛び交うその中心へと向かったのだった。

 最後までご覧いただきありがとうございます!

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