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種族の輪 《サークル》 ~精霊術師は今日も巻き込まれる~  作者: 蒼田
第三章 バジルの出会いと王都の出会い
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第八十四話 新たな武技と龍人族

「お、やるようになったなっと! 」

「連撃! 連撃! 連撃! 重撃!!! 」

「そうはいかねぇ! ハッ! 」

「ぐぉ!!! 」


 何十連撃も()り返したのち重撃でガルムさんの体本体(ほんたい)に切りかかる。

 だがそれをあたかも予見(よけん)していたかのように紙一重(かみひとえ)(かわ)し、俺の腹に一撃を加えた。

 そして俺は今グロッキーな状態である。


 次の獲物(えもの)と言わんばかりに横で見ていたケイロンを見つけ、勝負を(いど)み始めるガルムさん。

 ここまでくるともはや戦闘狂(せんちょうきょう)である。

 ギランギランとした目がケイロンを襲い、また木剣が交差(こうさ)する音が()(ひび)いた。


「ラララララァァァァ! 」

「くっ! 」

「……武技を使ってないのにあの速度ってどういうことですか」


 ガルムさんの剣撃の速さと重さにドン引く。

 外から見るとあそこまで早いのか。

 良く俺は受けれてたな。遠い目で二人の剣捌(けんさば)きを見ながら考える。


 以前は一方的にやられていたが日々(ひび)訓練(くんれん)により使用できる武技の範囲(はんい)が広まった。

 連撃と重撃そして跳躍である。

 文字通り連続で攻撃する武技と渾身(こんしん)一撃(いちげき)(あた)える武技そしてジャンプをする武技である。

 連撃の場合、普通の連続した攻撃と違うのはその切り返しの速さが異常(いじょう)に速いことで、重撃の場合は最大限以上の力を()めることが出来るという点である。また跳躍は通常のジャンプの数倍以上跳ねることが出来、また着地(ちゃくち)の時に衝撃(しょうげき)緩和(かんわ)されているようだ。


 今回連撃から最後の重撃で一矢(いっし)(むく)いようと思ったのだがだめだったようだ。


()けませんよ! 」


 ケイロンが細剣(レイピア)()した木剣でガルムさんの木剣を(はじ)く。

 が、ガルムさんの方が一枚(いちまい)上手(うわて)だったようだ。

 すぐさま剣を戻し高速で剣で攻撃を始めた。


「くぅ」

「あめぇ!!! 」


 ケイロンの剣を(はじ)き飛ばしたと思うと()りを入れて壁の方向へ()き飛ばした。


「跳躍! 」


 俺はグロッキーから回復し、足をしならせてケイロンの所へ行きキャッチした。


「ナイスキャッチ! 」

「ナイスキャッチじゃないですよ。ガルムさん。何ケイロンを()き飛ばしてるんですか」

「わりぃわりぃ。だがよ、仕方ないのかもしれねぇが一撃が軽すぎるぜ、ケイロンの(じょう)ちゃん」

(じょう)ちゃん? 」

「あ。これ秘密だったんだっけ? 」

「……ばらしましたので大丈夫ですよ。それよりデリク。降ろしてくれないかな? 」


 顔を赤らめケイロンがこちらを見上げた。

 おっと、これはいけない。所謂(いわゆる)お姫様()っこ状態だった。


 一旦(いったん)彼女を降ろし、服を整えガルムさんの方を見る。


「ガルムさん、気付いていたのですか? 」

「……むしろ良く今まで気付かなかったな。俺達獣人族は人族よりも鼻がいい。多分獣人族なら誰でも気付いてるんじゃないか? 」


 ガルムさんの一言で俺は打ちひしがれた。

 マジですか。俺だけですか。気付かかなかったのは。

 と、言うことはフェルーナさんとフェナも気付いているのか。

 エルベルも気付いていたようだし、スミナはどうだ? 気付いてそうだな。

 はずっ! 俺だけかよ……。


「パパ! お客さんよ! (ひさ)しぶりのお客さんよ! 」

「お、ホントか! 今行く! 」


 フェナが元気いっぱいにガルムさんを呼びにきた。

 新しいお客さんのようである。

 フェナは(うれ)しさのあまりかはち切れんばかりに尻尾(しっぽ)()らしている。

 ガルムさんはこちらを振り返り瞳を向けた。


「すまねぇ。今日はここまでだ。また明日だ」

「「はい!! 」」


 ガルムさんは木剣を倉庫(そうこ)に戻すとすぐさま宿の方へ行ってしまった。


「僕達どうしようか」

「お客さんってのも気になるな」

「行ってみるの? でも仕事の邪魔(じゃま)はいけないよ? 」

「見るだけだって。さ」


 そう言い俺は立ちケイロンに手を()し出す。

 ケイロンもそれをとり手を(つな)ぎ二人で宿の中へ入っていくのであった。


 ★


 宿に入った俺は即座(そくざ)後悔(こうかい)した。

 これはないだろ……。

 俺の頭の中で今の状況を笑うエルベルとそれにつかかって喧嘩(けんか)するスミナが思い浮かぶ。そして目の前の人物——執事服を着た男性だ。騒動(そうどう)しか起こらない。


「執事だね」

「執事だな。貴族様か? 」

「みたいだね。でもなんでこの店にきたのか……あ」

「ケイロンを連れに来たんじゃないか? 」

「いや多分違うよ。あの執事の頭の方を見てごらん」

「頭? 」

「角があるでしょ。鹿(しか)のような角。あれ、龍人族の特徴(とくちょう)だよ」


 裏口(うらぐち)から入った俺達は受付の方をそーっと見て、分かったことをケイロンが指摘(してき)する。それを聞きパッと執事の方を見る。

 龍人族ですと?! この前の吸血鬼族もそうだけどなんでこの国にはそんな希少種(きしょうしゅ)が多くいるんだよ!!!

 しかも龍人族の貴族?!


「角が青だから水龍人だね。正確には龍人族水龍人ってとこかな。水龍人で貴族と言うと……まさか?! 」

「え? まさか知り合い? そんなことないよね? 」

「い、いやぁ……この時期(じき)だし。ドラゴニカ王国から来たという可能性もあるし。うん。多分違う」


 水龍人の執事が台帳(だいちょう)にササっと記載(きさい)すると(とびら)を開けにその()を離れた。

 その(すき)にこそこそっと(こし)を低くしてガルムさんの下まで移動する。

 ガルムさんもかなり緊張したようだ。今俺達が下にいることに気が付いてない。


「ガルムさん、ガルムさん。どうなってるんですか」

「うぉっ! なんて所にいるんだ?! 」

「しー!!! で、誰かわかりますか」

「……言えるはずねぇだろ」


 俺達は小声(こごえ)でやり取りする。

 今はフェナはいないようだ。多分失礼(しつれい)があってはいけないと思いフェルーナさんが事前(じぜん)にどこか移動させたのだろう。


「さっきのって水龍人ですよね? まさかとは思いますが……」


 そう言い切る前に(とびら)がゆっくりと開いた。

 最初に現れたのは帯剣(たいけん)している騎士だった。彼らが中に入り安全を確認し(とびら)(ささ)える。

 次はメイドや執事のような使用人だった。彼らはそれぞれ横に並び主人が入ってくるのを背筋(せすじ)を伸ばして、待つ。


 そして一人の水龍人が現れた。


 机の下からそーっと見て最初に気が付いたのはその角であった。鹿(しか)の角のような形状に水色で透き通った角。扉の向こうから差し込む太陽(たいよう)の光を()びて(かがや)いている。まるで宝石のようだ。そして何より周りにいる他の龍人よりも二回りも三周りも大きい。

 次はエルベルと同じくらいの高い身長だろうか。一歩一歩前に進むにつれてその身長の高さが分かる。体つきは比較的スマートで肌白いくあまり特徴的ではない。

 しかしそれを弱点としないほどの、いやむしろそれを存分(ぞんぶん)()かした顔をした女性であった。


 『麗人(れいじん)


 この一言(ひとこと)(もっと)適切(てきせつ)だと思う。

 が、(まと)っている雰囲気(ふんいき)は冷たいものそのものだ。

 服の影響もあるかもしれない。青を基調(きちょう)とした服に金色の刺繍(ししゅう)(ほどこ)されている長いドレス。

 種族のせいか原因が他にあるのかは分からないが、少なくともここからは冷たさが伝わってくる。


 そしてぼーっと見ていた俺達に気が付いたのだろう。

 ゆっくりと顔を俺達の方へ向け、金色の瞳が俺達を射貫(いぬ)いた。

 やべっ!


「あら? ケイロンじゃない」

「……やっぱりティナだったんだね」


 ケイロンは――いつも俺の期待を裏切(うらぎ)らない。

お読みいただきありがとうございます。

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新しく始めた異世界転生ものになります!
ハズレ枠の転生貧乏貴族は武姫を継承し最強へ至る
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