表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
種族の輪 《サークル》 ~精霊術師は今日も巻き込まれる~  作者: 蒼田
第三章 バジルの出会いと王都の出会い
97/442

第八十二話 フォレスト・ウルフを討伐せよ! 三 依頼完了

「うりゃ! 」

「この! 」


 最早素材(そざい)など気にしていない。

 出来る(かぎ)りの力を振り(しぼ)り茶色い脅威(きょうい)を切り(きざ)む。


「セ……この! 」

「引いた?! 」

「ここは(まか)せろ! こっちこいやぁぁぁぁ!!! 」


 挑発(ちょうはつ)を使ったスミナの影響で強制的(きょうせいてき)にスミナの方に()きつけられるフォレスト・ウルフ達。

 そして彼女を大盾ごと食いちぎろうと飛びかかるも……


「ははは! 狙撃(そげき)!!! 」


 いくつもの精霊魔法が()となってウルフ達を(つらぬ)き地面に(あな)をあけていた。

 俺とケイロンはそれに(おどろ)(ひま)もなく次の獲物(えもの)に取り()かる。


 (きば)で攻撃しようとしてくるウルフの動きが――ぶれた。

 先読みの発動(はつどう)だ。訓練により徐々に発動をコントロール出来るようになっている。


 次は、()んでくる!


 ジャンプした直後にウルフの下に(すべ)り込み下から上に一閃(いっせん)


 だが三メルほどある巨大なフォレスト・ウルフが俺を()みつぶそうと移動していた。


「そうはさせんぞ! ほら!!! 」


 エルベルが威嚇(いかく)射撃を行い注意をアンデリックから()らす。


 ドゴン! Gyurururu! ドゴン! ……


 その(あいだ)態勢(たいせい)を立て直し、もう一体切り(きざ)んだ。


「ワタシも受けてばかりじゃいけねぇよな。少しくらい減らさねぇと」


 スミナが独り()ちると腰にかけていた大きなハンマーを片手で取り出す。


 ゴン!!!


 また一体大盾にぶつかったようだ。


 ゴン!!!


「へ! 受けて見な、ワタシ特製(とくせい)双魔の大槌ツインマジック・ハンマーをっ! 」


 ゴン! と音が()った瞬間(しゅんかん)大盾をずらしフォレスト・ウルフの脳天(のうてん)に一撃振りかざす。

 するとフォレスト・ウルフの頭蓋(ずがい)ごと地面が陥没(かんぼつ)し、絶命した。

 地面が()れ、相手が足場(あしば)(くず)す。

 事前(じぜん)に知らされていた通りに動きアンデリックとケイロンは強化された体で移動し、次々と首を落としていった。


 指揮官(コマンダー)がエルベルとスミナを脅威(きょうい)認定(にんてい)したのだろう。

 頭をスミナ達の方へ振り配下(はいか)にある主導者(リーダー)に攻撃するように指示(しじ)を出し、残りのウルフを差し向かわせた。

 一体一体とエルベルの精霊弓の餌食(えじき)になる中、数体のウルフ達がスミナに辿り着いたと思うと、ニヤリとスミナが笑う。


「まだまだだ! ほらよ! 連撃(えんげき)!!! 」


 スミナが持っている大槌(おおつち)が赤くなり炎を(まと)う。

 それをぶんぶんと振りかざしながら一体ウルフを焼き(つぶ)す。

 炎に恐れたのかその威力に恐れたのか後退(こうたい)するとそこにはアンデリックとケイロンがおり――二人の(やいば)餌食(えじき)となった。


 ★


「最後は指揮官(コマンダー)だね……はぁはぁ」

「ああ。だがあと一体だ」


 俺はちらっと地面を見た。

 死屍累々(ししるいるい)とはこの事だろう。


 ケイロンもかなり消耗(しょうもう)しているようだ。

 ()れない山での戦闘。これほどにきついとは。


 どんな場所でも実力(じつりょく)発揮(はっき)できるようにするのが冒険者と言うのは分かるが……正直たかがフォレスト・ウルフと(あなど)っていた。

 上位種が連携(れんけい)することでこれほどに違いが出るとは。

 スミナがいたから何とかなったが、いなかったことを思うと背筋(せすじ)(こお)る。


中々(なかなか)(かた)いな、こいつ」


 ドッ! ドッ!


 と、俺の体の二倍以上あるフォレスト・ウルフに容赦(ようしゃ)なく風の()()ち込むエルベル。

 ()()エルベルの風の()でも相手をよろめかせ、移動を阻害(そがい)する程度か。

 が、いけるな!


「よし! これから全力(ぜんりょく)で行こう!!! 」

「よし来た! 」

「了解!」

「待ってたぜその言葉を! じゃ、ワタシからだな! うぉぉぉぉぉぉ! 戦士の咆哮(ウォー・クライ)!!! 」


 スミナの武技の発動(はつどう)により俺とケイロンの体に力がみなぎる。


「次はオレだな! 受けてみよ! この風の()を!!! 」


 一気(いっき)に小精霊達がエルベルの弓に集まり複数の光球(こうきゅう)を作り出す。

 そして一斉(いっせい)にそこから()き放たれ四つの光球(こうきゅう)()となり的確(てきかく)にフォレスト・ウルフの(ひざ)(つらぬ)いた。


「Garururururururu!!! 」


 悲鳴(ひめい)ともとれる音を放ちながら指揮官(コマンダー)(くず)れ落ちようとしている。

俺とケイロンは並走(へいそう)しながら剣を(かま)えた。


跳躍(ちょうやく)! 」


 ケイロンが武技で青い残像(ざんぞう)を残しながら巨大なウルフの上をとる。

 俺は剣を(かま)えたまま(ひざ)をつこうとしている茶色いウルフの下をとり――


「「斬撃!! 」」


 ケイロンが上から剣を振り下ろし、俺は下から剣を振り上げ、指揮官(コマンダー)の首がポロリと落ちた。

 もう村を(おびや)かすウルフはいない。


 ★


「おお……ご無事(ぶじ)で! 」


 俺達が戻ると村長達村人が出迎(でむか)えてくれた。

 総出(そうで)出迎(でむか)えられ()れくさい。


 話を聞くところによると山の方からウルフの咆哮(ほうこう)が聞こえて何事(なにごと)かと思ったと。

 それでもしかしたら俺達に何かあったのかもと心配してくれ、外で待ってたみたいだ。

 あれだな。他の()れを呼んだ時のあの咆哮(ほうこう)だな。


「お兄ちゃんありがとう! 」

「すげー! あのウルフ倒すのすげー!!! 」


 村人達が(むら)がってくる。

 大人からはお(れい)が、子供からは称賛(しょうさん)が送られて来た。

 ()ずかしながらも無事なことを伝え、お(れい)称賛(しょうさん)の言葉を受け取る。

 横を見ると子供達に無垢(むく)な目で称賛(しょうさん)されてたじろぐエルベルがいた。

 いつもなら調子(ちょうし)に乗りそうなのに(めずら)しい。

 っと、村長に頼み事をしないと。


「あー、コホン。村長、いいですか? 」

「何でしょうか? 」


 笑顔でこちらを見てくる村長。

 五年くらい若返(わかがえ)った感じがするのは気のせいだろうか?

 余程(よほど)フォレスト・ウルフ達が(なや)みの(たね)だったと見た。


「俺達はこの後の便(びん)で帰ろうと思います」

「ええー! なんでだよ! とまってけよ! 」

(ぼう)や、いけません。まだお話の途中(とちゅう)です! 」

「だがよ。このまま返しちゃ、村の名折(なお)れじゃねぇか? 」

「あら、この村に名前なんてあったかしら」

「……今から考えんだよ」


 子供達とは別に夫婦漫才(まんざい)()り広げられていた。

 そして小さい子が目を(かがや)かせこちらを見てくる。

 その期待(きたい)を裏切るようで心が痛い。


「フォレスト・ウルフの討伐証明部位である(きば)と魔石、そして取り切れるだけの毛皮(けがわ)はとっているのですが……」

「ほほほ、その後処理(あとしょり)の事ですな」

「はい。(もう)(わけ)ありません。採取できたウルフは燃やしたのですが、まだ素材(そざい)として残せるウルフもいました」

「なのでまだ売れる個体は残しています。後処理(あとしょり)対価(たいか)としてまだ残っているウルフの毛皮(けがわ)()し出せれば、と」


 俺とケイロンがそう言い切る前に村の男衆(おとこしゅう)がリアカーを持ってきた。

 その手早(てばや)さに驚きながらも「(かま)いませんよ」と言うと「ありがとよ! 」と早速山へ向かって行ってしまった。


(さわ)がしくて()みませぬな。復興(ふっこう)の事もあってのあの()り切りようなのでしょう」

「ははは! 持ってくがいい! 」

「ま、いいんじゃねぇか。俺達も()り切れなかったんだしな」

「魔石だけでもかなりの物になるね」

「と、いうわけであとはよろしくお願いします」

(まか)されましたぞ」


 そう言い村長は依頼完了のサインを書き依頼書をこちらに渡してきた。

 それを受け取り手を振りながら、次にこの村を通る馬車の便(びん)で俺達はバジルの町へ戻るのであった。

お読みいただきありがとうございます。

もしお気に召しましたらブックマークへの登録や広告下にある★評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新しく始めた異世界転生ものになります!
ハズレ枠の転生貧乏貴族は武姫を継承し最強へ至る
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ