第八十一話 フォレスト・ウルフを討伐せよ! 三 ファースト・コンタクト
朝早くに朝食を済ませ、馬車の停留場へ。
俺達四人は早速御者にお金を支払い目的の村へと向かった。
「ここがそうなんだ」
「ああ。だが少し雰囲気が暗いな」
「早く行こうぜ! 」
早くに着き、村で降り、村を見まわす。
この村は農作物が産業の村だ。
が、フォレスト・ウルフ達が暴れまくっているせいか村の雰囲気は暗い。
「早速村長の家に行ってみようか」
村長宅。
この村長の家は木で出来ていた。
周りの家より少し大きいが、ほんの少しだ。他は変わらない。
「今回は農作業の為の牛が狙われまして……」
「牛ですか。それは災難でしたね」
「牛が? 」
「ここは作物を育てているんじゃなかったのか? 」
「牛? 非常食か? 」
「違う違う……」
あまりにも見当違いな言葉が飛んできたので一旦彼女達の方を向き説明する。
「畑を耕すのに使うんだよ」
「え? 食わないのか? 美味いのに」
「食べることもあるが、基本耕す用だ」
「「「なるほどなぁ」」」
全員頷き分かったかのような声を上げるが、本当に分かったのだろうか?
村を一目見ただけだからわからないが、少なかった牛がやられたのだろう。
牛舎が見えなかった。多分もっと農作業寄りな場所に置いてあると思う。
そして日を追うごとに村を襲うフォレスト・ウルフの数が増えた、と。
「はい。御想像の通りでございます」
「分かりました。これから調査と討伐に向かいますので皆さんは出来る限り家から出ないようにしてください」
「村の者に伝えておきます。よろしくお願いします」
そう言いよぼよぼの村長は家を出ていき、俺達も山へと向かうのであった。
★
山に入り早速エルベルに探知を頼む。
「風の精霊よ」
精霊弓を水平にかざし小精霊を放つ。
光が放出され、そして弓に再収束した。
「やっぱりいるな。かなりの数が」
「どこら辺にいる? 」
「ここより先。中腹辺りから多くなっている」
「厄介だな」
エルベルは前を指さし、ケイロンの問いに答え、俺達は前を向く。
山登りにも体力を使うし足場が悪い。
が、可能な限り一気に倒したい。突いた反動で村を襲われたら元も子もないからだ。
「エルベル。どのくらいいそう? 」
「三十以上はいるな。どうする、デリク」
「引き返す? 」
心配そうにケイロンがこちらを下から覗き込む。
本当に多いな。いや集団から離したらどうにかなるか?
集団ごとに引き離しながら最終的に一個集団と戦う感じにして……。
「数からすると指揮官級がいるんだろうね」
「多分な。フォレスト・ウルフの指揮官級の能力は連携だっけ? 」
「ああ、資料にあったな」
「十体に一体の割合だ! 」
ふんす! と胸を張りながら言うエルベル。
いても不思議じゃない。
今回の村のように連携した襲撃が見られる場合ほぼ確実にいると資料にあった。
とりわけそれが珍しいわけでもなく、ゴブリンの上位種よりもメジャーな存在だ。
だが、数がな……。三十体以上か。
「……行っても行かなくてもじり貧だな。よし倒しに行こう。出来れば挟まれたくないからスミナ、エルベルの指示に従って移動してくれ。エルベルは相手の横を大きく外れる形で誘導してくれ」
「「了解だ!! 」」
エルベルの指示の元スミナを最前列にして俺達は山の中を移動した。
足場が悪い中俺達は差し込む朝陽の角度が変わってきているのを感じながらも移動する。
途中獣のような足跡が多く見られた。
エルベルの探知を疑っている訳ではないが、その多さを実感した。
ランクの高いモンスターと二回戦ったが、連携する複数の相手と言うのはあまり経験がない。多対一というのはゴブリン達と戦った時に経験したが本格的に連携してくるのは恐らくこれが初めてだろう。
緊張しながらも俺達は前に進みそして……。
「全員、構え」
エルベルが言うと同時に俺達は剣に弓に大盾を構えて足を止め気配を探る。
「こっちか! 」
ゴン!
ギャイン!
スミナが相手の襲撃に気付き即座に移動し盾で相手の牙を防いだようだ。
「はっ! このくらいなんともねぇ! 」
「シッ!!! 」
スミナが受けている間に回り込みフォレスト・ウルフの首を一撃で落とす。
「次っ! 」
更に奥から飛びかかろうとするウルフをケイロンが体をずらし、避けてその首に細剣を突き刺した。
が、その後ろからもう一体のウルフが噛みつこうとしている。
ケイロンもそれに気付き回転の力を使って細剣で応じようとするも――
「なっ! 」
足がぬかるんで靴が沈んだ。
まずい!!
「このがっ! 」
と、ウルフを蹴り飛ばし、止めを刺す。
彼を見上げ、安堵しケイロンが見上げてくる。
だが戦いはまだ終わっていない。
次々にウルフが出てくるも、そこでスミナが声を上げる。
「オラオラ、どうしたぁ!!! 」
ウルフ達の目線が一気にスミナの方を向いた。
どうやら『挑発』を使ったようだ。
「ははは! 爆散せよ! ははは! 」
挑発に乗りスミナに飛びかかろうとするウルフ達をエルベルが一網打尽にし、一際大きな個体を倒し、初戦は終わったと思ったのだが……
「ウォォォォォン!!! 」
「こいつ! 」
「別の奴を呼びやがった?! 」
「——」
パン!
別グループを呼ぶために雄たけびを上げていたウルフはエルベルの攻撃を受けて死亡した。
「慎重に行くつもりだったのに! 」
「やられた! 最後の力を振り絞って! 」
「群れ同士が、連携してる? 」
エルベルが何やら知ってそうな顔をして呟いた。
「そんなことあるのか? 」
「ああ。森にいた頃は最下級の指揮官級である主導者の上の個体がいる場合があった」
「対処は? 」
「上位階級である指揮官を落とす。これに限る! 」
「「「了解! 」」」
その言葉を信じ、全員で意思を確認する。
足音は聞こえない。まだここまで来ていないようだ。
今の内に作戦を。
「多分二十体程が連携して襲い掛かってくる」
「ワタシが引き付けてやるよ」
「頼む。その間に俺とケイロンが数を減らす」
「うん! 」
「ならオレは指揮官の注意をバラすのが役目だな」
「その通りだ」
「来たぞ!!! 」
小精霊を飛ばして周囲を警戒していたエルベルが叫ぶ。
それと同時に俺達は再度剣を構え、待ち受けた。
サッ! サッ! サッ! とするかしないかの足音だ。
これがフォレスト・ウルフの脅威の一つでもある環境への適応性だ。
山のような足場の悪い場所でも短い時間で適応してしまう。
「かかってこいやァァ! 」
スミナの挑発で数十対四と言う戦いの狼煙が上げられた。
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