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種族の輪 《サークル》 ~精霊術師は今日も巻き込まれる~  作者: 蒼田
第三章 バジルの出会いと王都の出会い
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第七十九話 フォレスト・ウルフを討伐せよ! 一 準備

「なぁケイロン。後何が必要だっけ」

「ええ~っと食料と薬関係かな」

「オレはパンがいいぞ! 」

「ワタシは食えりゃぁなんでもいいや」


 俺達は今混雑(こんざつ)した市場にいた。

 午前中にFランクの依頼をいくつか受けて明日の依頼の準備をしている。

 今回の依頼は俺達に合わせる形となった。


「明日はフォレストウルフの討伐か」

「ちびっこドワーフ、ビビってんのか? 大丈夫だ! 俺が後ろから(たた)(つぶ)してやろう! 」

「この駄乳エルフ。ワタシがビビるわけねぇだろが! まだ鉱山の方がよっぽど危険だ! 」

「鉱山か。いつかは依頼があると思うから行かないといけないけど、そんなに危険? 」

「ああケイロン。危険だ。まず武器が(かぎ)られる。それに暗闇(くらやみ)()れるまできついかもな」

「俺は短剣(ダガー)の練習でもしていた方がいいのか」

「そうだな。長剣(ロングソード)はきついかもな。長すぎる」

「……今の内にドルゴさんの所へ行って短剣(ダガー)をもう一本増やしておくか」

「ま、待ってくれ。出ていった手前(てまえ)すぐに戻るのは……(はず)い。もう少し、もう少し時間をくれ」

「ハハハ、いざと言う時は精霊様の加護でどうにかしてやる。頼るがいい」

「「「不安しかない……」」」


 話しながら混雑(こんざつ)()けていくとドライフルーツを売っている店があった。

 茶色い屋根(やね)簡素(かんそ)なテント。店と言うよりかは野営のようだ。

 恐らく時々(ときどき)こうやってくる行商か近隣(きんりん)の村から来ている人だろう。


「この()しベリーを……いくつ? 」

「いえ、私に聞かれても」


 個数が分からずつい店員さんに聞く形になってしまった。相手は少し溜息(ためいき)をついた。

 ケイロンの方を向き、確認する。


「四人だから……そうだね。百あればいいんじゃないかな? 」

「じゃぁ百で」

「はいよ」


 店員がベリーが入った袋を一つこちらに渡してきたので手を伸ばし受け取ろうとするがケイロンと手が()れてしまった。

 が、それを気にせず受け取りケイロンの小袋(アイテムバック)に入れてもらう。


 ふぅ。中々(なかなか)にきついぜ。女の子とわかってから意識をしないようにしているが、こう接触(せっしょく)があるとどうしても意識してしまう。討伐依頼よりも(きび)しい……。

 まぁケイロンも気にしていないようだし、そのまま行くか。


 こうして順調(じゅんちょう)に買い進めていくのであった。


 ★


 デリクは少し僕の事を女の子として(あつか)ってもいいんじゃないかな?

 次の依頼の必需品(ひつじゅひん)を買いながらケイロンは一人そう思っていた。


 大体さ。こんなに女の子に(かこ)まれて何ヘラヘラしてるのさ。

 僕だって……。


 歩きながらエルベルを見る。

 そして手を胸に当て、絶望する。


 あれは、仕方ない。そう。仕方ないんだ。

 緑のジャケットの下のパツンパツンになった黒いインナーにほっそりとした足。

 武器を通り()して凶器(きょうき)だよ。


「ケイロン。どうした? 」

「いや、なんでもないよ」

「オレの方を向いてたがなにかあったのか? 」

「……現実の理不尽(りふじん)()ちのめされてただけだよ」

「なんじゃそりゃ」

「気にしないで、デリク」

「おや、アンデリックとケイロンじゃないか。(ひさ)しぶりだね」


 声がする方を見るとそこにはクマツさんとベアおばさんが仲良(なかよ)蜂蜜(はちみつ)を売っていた。

 売っている物は蜂蜜(はちみつ)だけでなく柑橘(かんきつ)系の保存食全般(ぜんぱん)なのだがどうしても蜂蜜(はちみつ)のイメージが頭からはなれない。

 僕達は道を行っている(あいだ)にどうやらこの店の前を(とお)りすがろうとしていたようだ。


「「お(ひさ)しぶりです! 」」

「ああ、(ひさ)しぶりだ。お、スミナちゃんじゃないか。冒険者になれたのか? 」

「そっちのエルフの嬢ちゃんは初めてだね。私はこの店のベアよ」

「俺はクマツだよろしく」

(ひさ)しぶりだ」

「オレはエルベルだ! 」


 自己紹介をして二人に手を振るクマツさんとベアおばさん。

 そっか。スミナはこの町で()らしていたからこの二人と顔見知りなんだ。


「何か買っていくかい? 」

「お、いい匂いがするぞ! 蜂蜜(はちみつ)か! 」

「店自慢(じまん)蜂蜜(はちみつ)だ。一瓶(びん)どうだい? 」

「買った! 」


 匂いに()れられエルベルが速攻(そっこう)蜂蜜(はちみつ) (小)の(びん)を買ってしまった。

 お金と同時に(びん)を受け取る彼女。

 (びん)から(ただよ)ってくる良い匂いを堪能(たんのう)しているのかご満悦(まんえつ)な顔をしている。


「では俺達はこれから行くところがあるので」

「すみませんが」

「いいよ、いいよ。また今度依頼を受けてくれよ」

「「「はい!!! 」」」


 こうして僕達は次の目的地である商業区の薬屋へ向かった。


 ★


 薬屋『アルケミナ』。そう看板(かんばん)には書かれていた。

 そう看板(かんばん)には『薬屋』と書かれている。


「なんだ……。この禍々(まがまが)しい店は」

「え? あれ人骨(じんこつ)? 本物じゃないよね? 」


 目の前には人の頭の骨を()したであろう(かざ)りが置いてある。

 更に横にはカラスの羽に骨を組み合わせたオブジェ。

 (きわ)めつけは――


 ドゴン!!!


「うぉっ! 」「きゃっ! 」「「わっ!!! 」


 奥からしてきた爆発音だった。


 (きゅう)()った音に吃驚(びっくり)したのかケイロンが俺にくっつく。

 甘い(かお)りがするが、目の前の光景(こうけい)が全部台無(だいな)しにしている。


「は、入って……見るか? 」

「この中に入るの?! 」


 信じられない、といった顔をしてケイロンが聞いてくる。

 だがやっと見つけた薬屋だったんだ。


(いく)つかあたってもなかったからな。これが最後のチャンスかもしれないし」

「で、でもぉ」

「お、お、おいデリク。本当に行くのか? 」

「ん? 中から鉄の臭いがするぞ? 」

「鉄? 」


 スミナの言葉に全員が彼女の方を見る。

 薬屋からしたらいけないような臭いだろ!

 そう心の中で(つぶや)きながらも「このままでは(らち)()かない」と思い、()(けっ)(とびら)を開けた。


 ギギギという音を立て中に入る。

 木製の壁と床に薬草の青臭いにおい。

 ぱっと見誰もいないようだ。


 恐る恐る奥へ行き一先(ひとま)ず店員を呼んでみる。


「すみません。どなたかいませんか? 」


 反応がない。どうしたものか。

 俺の腕をぎゅっとする感じがした。

 腕の方を見るとケイロンがかなり(ふる)えている。

 そして俺の方を見ると首を振り「帰ろうよ」と無言(むごん)で伝えてくる。

 が、これが最後かもしれないんだ。行くしかない。

 薬関係は持っていないとまずいからな。


「すみません!!! 」


 今度は少し大きめに声を上げた。

 さっき爆発音がしたんだ、誰かはいるはずだ。


「はぁぁぁい」


 奥から女性の間延(まの)びしたような声が聞こえてきた。

 良かった。いたようだ。一先(ひとま)ず胸を()でおろす。

 

 奥からゆっくりとした足音が聞こえてくる。

 それと同時に異臭(いしゅう)(ただよ)ってきた。

 こ、これ、本当に大丈夫なんだよな!

 薬屋なんだよな!


「うう。この臭い」

「オ、オレも嗅いだことないぞ! こんな臭い! 」

「すげぇ臭いだ。だが何故(なぜ)か鉄の臭いが()じってんのは気のせいか? 」


 メンバーの方を見ると鼻をつまみだしていた。

 あのエルベルでさえ顔をしかめている。

 確かに顔をしかめたくなるような嗅いだことのない臭いだ。


「おまたせしました~本日はどのようなご用件(ようけん)でぇ? 」


 出てきたのは女性魔法使いが(かぶ)るようなとんがり帽子(ぼうし)に黒い服。そしてなぜか服が()れている。


「く、薬を買いに来たのですが……。大丈夫ですか? 」

「何がですかぁ? 」

「さっき爆発音が聞こえたのですが」

「あ~あれですかぁ。大丈夫ですよぉ~。ちょっと配合(はいごう)に失敗してしまって薬品が爆発しただけなのでぇ」

「「「それは大丈夫じゃない!!! 」」」


 腑抜(ふぬ)けた店員に全員でツッコミを入れた。


「ふぇ~? 」


 この店員はどうやらどこかおかしいらしい。

お読みいただきありがとうございます。

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新しく始めた異世界転生ものになります!
ハズレ枠の転生貧乏貴族は武姫を継承し最強へ至る
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