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種族の輪 《サークル》 ~精霊術師は今日も巻き込まれる~  作者: 蒼田
第三章 バジルの出会いと王都の出会い
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第七十八話 報告と訓練

「報告(うけたまわ)りました。ではこちらが成功報酬になります」

「「「ありがとうございます! 」」」


 山から下りた俺達は早速冒険者ギルドへ行き、東の山でのことを報告した。

 元スタミナ草の群生地(ぐんせいち)の更に向こう側に洞窟(どうくつ)がある事やそこにモンスターがいることも追加で話す。

 ゴブリンと断言(だんげん)しなかったのは中に入っていない俺達がそう報告しても信じないと考えたからだ。


 報酬を受け取った俺達はそのまま次の依頼を見て見る。


「次はどうする? 」

「山の後だからな。(いく)つかFランクの依頼をこなすか? スミナもいるし」


 初めてのスミナとの連携(れんけい)だった。

 彼女はどうしたこともないような感じだが感じていない所で疲れがたまっているかもしれない。

 なるべく討伐や採取の依頼はベストコンディションでやりたいからな。


「ワタシは大丈夫だぞ」

「やっぱFランクを(いく)つか受けよう。コンディションの事もあるがランクを上げる意味合いもあるからな」

「人数が増えた分、効率が良くなったからね。探し人や動物はエルベルの感知でどうにかなるし」

「ははは、ありがたく思え」

「……お前に言われると(しゃく)だが、確かにFランクだと数こなさなきゃならねぇしな。よし、わかった」


 スミナの了解も得たことで俺達は(いく)つかFランクの依頼を受けるのであった。


 ★


 ある日の昼下がり。

 今日は低ランクの依頼も多くなく午前中で仕事が終わった。

 よって早めに訓練を受けている。


「おらおら! どうした! 息継(いきつ)ぎなんてしてるとモンスターにやられちまうぞ! 」

「くっ! 」

(つよ)っ! 」


 ガルムさんの剣撃が俺()を襲っている。

 ケイロンもガルムさんの訓練に興味があるらしく今月から一緒になって受けることになった。もちろん代金は上乗(うわの)せだ。


 ゴン! ゴン!


 ガルムさんの大きな()剣と俺達の()剣がぶつかり合う。

 お、重い!!! 俺は身体強化に筋力増強(パワーライズ)も使ってんだぞ!

 押し()ける……!


「ハハッ!!! 」


 上段から振り下ろされる剣を先読みで受け止め反撃(はんげき)しようとするが――


相方(あいかた)がお留守(るす)だぜ! 」

「くっ! 」

 

 ドゴン!!!


 ぶつかった瞬間、俺に乗っかかるような形で体を(あず)け、ケイロンに回し()りを()り出した。

 見事(みごと)()き飛ばされたケイロンは壁にぶつかりノックアウトになった。


 その様子に気を()られた瞬間、俺も()き飛ばされたのであった。


「二人(がか)りで戦ってるのに傷一つ付けられないなんて」

「なんで強化された俺達よりも()のガルムさんの方が力強いんですか……」

「ははは、年季(ねんき)が違うぜ。兄ちゃん達よ」


 傷だらけになった俺達は巨大な木剣を肩に(かつ)いでこちらを見下ろすガルムさんをジト目で見た。

 強すぎるだろ。絶対にヒュージ・スケルトンより強い。

 ガルムさんもフェルーナさんも前はランクいくらだったんだ?


「だが、そうだな。見てる感じの見込みがはやい。アンデリックの兄ちゃんはそろそろ重撃とか(おぼ)えれるんじゃないか? 」

「重撃、ですか」

「ああ。ま、渾身(こんしん)一撃(いちげき)ってやつだ。今の所はな」

「今の所、と言う言い方をするところからその先があるのですね」

(するど)いな、ケイロンの兄ちゃんは」


 笑いながらケイロンの方を向く。


「斬撃なら斬撃の先がある。重撃なら重撃の先があるってもんだ。武技は極めていくと最終的に独自武技(オリジナル)を使えるようになるから面白れぇ。理論(りろん)だって()まなきゃならねぇ魔法とは(まった)く違う。訓練すればするほど強くなれる! 」

独自武技(オリジナル)ですか」

(ちな)みにガルムさんも使えるのですか? 」

「……使える」


 ニタァっと笑い、自慢(じまん)したげな顔だ。

 これは……地雷(じらい)ふんだか?


「さ、見せてや「今さっき魔法を(ないがし)ろにするような言葉が聞こえたのですが」……」


 木剣をトントンと肩で(たた)き俺達の方へ向かって来ようとすると、宿の方からフェルーナさんの声が聞こえた。

 恐る恐ると言った感じでガルムさんが声の方向を見ると顔が硬直(こうちょく)していた。


「フェ、フェルーナ、これは違うんだ……」

「何が違うというのですか? 」


 一歩一歩ガルムさんに近付(ちかづ)いている。

 俺達はガルムさんの後ろにいる為にその顔が見えた。

 笑ってるのに目が笑ってねぇ……。

 こっちはこっちで地雷(じらい)だったようだ。


「夫はこれから用事がありますのでまた後程(のちほど)。オホホホ」

「やめろー! 」


 顔面にフェルーナさんの手をめり込ませ悲鳴(ひめい)を上げながらガルムさんは宿の方へ旅立ってしまった。

 生きて……帰ってきてくださいね。


 ★


「で、どう(もう)し開きを? 」


 ここはとある領地のとある貴族の屋敷(やしき)

 若々(わかわか)しい声の主の前には五十代くらいの貴族服を着た少し肉付きの良い男性とその隣に執事服を着た細めな男性がいた。

 そして声の主の(となり)には服がはち切れんばかりの筋肉をもつ男性と細身(ほそみ)な、如何(いか)にも文官と(おも)える男性が(ひか)えている。


「今回の件は我が息子の独断(どくだん)でございます。我々(われわれ)(まった)く何が何やら……」

「ほう。ならその親である貴様には責任がないと? 」

「ぐぅ。しかし……」


 両者が言い(あらそ)っていると執事服を着た男性が手を上げ発言(はつげん)許可(きょか)を聞いてきた。

 ん? とそちらへ不機嫌な顔を向け、(にら)みつける。

 執事は少したじろぎながらも手を降ろさない。


「……発言(はつげん)を許す」

「ありがとうございます。今回の(けん)、旦那様は本当にご存じでありません。私達家臣(かしん)一同このような計画(まった)く知りませんでしたので」

家臣(かしん)が知らなくとも貴様の主君(しゅくん)一計(いっけい)(あん)じていることくらいあるだろ? 」

「あるかもしれませんが……今回のような婚約(こんやく)(かん)することはまず書面をもって複数の文官で確認いたします。我々も寝耳(ねみみ)(みず)でございました」

「かと言い、今回の騒動(そうどう)。どう治めるつもりだ? 無論(むろん)僕達も火消(ひけ)しに回った。だがそれで完全に鎮圧(ちんあつ)できるものではないだろ? (うわさ)とはそういうものだ」


 その言葉を受けてか、放たれる殺気のせいか顔色を青くしている貴族と執事。

 が、それでも執事は(あきら)めない。


「せめてお時間をください。精一杯(せいいっぱい)(うわさ)()しに回りますので。何卒(なにとぞ)何卒(なにとぞ)……」

「……これが付き合いのない者ならば良かったのだが、今回だけだ。だが、時間はないと思えよ? 」

「「ありがとうございます!!! 」


 こうして貴族と執事は早々(そうそう)にこの屋敷(やしき)を出ていった。


「で、どうするよ。親父」

「ケルマ、いつも言葉使いを直すよう言っているでしょう? しかし本当にどうするのですか? 父上」

「う~ん。どうしよう」


 さっきとは()って変わって言葉使いが(くず)れる(わか)い声の持ち主。

 二人の言葉が意味するようにこの若く見える男性は二人の実の父親だ。


「僕としてはケイロンに戻ってきてほしいけど」

「メイド隊の手紙によるとケイロンは意中(いちゅう)の相手を見つけたそうですね」

「アドレノ! それは本当か?! 」

(うそ)と言ってくれ!!! 」


 アドレノの呼ばれた青年はいつの間にか手に一枚の手紙を取り出して、読んでいた。


「なんともラブラブの(よう)で」

「なんだよぉぉぉ!!! ケイロンに近付(ちかづ)く虫が増えたのか! 」

「僕のケイロンちゃんに手を出そうとしている(おろ)かな虫はどこの誰かな!!! 」

「待ってください二人共。それだけで判断しないでください。何やら手紙によるとその者と一緒にいるとトラウマが発動しないとの事。これは良い事では」


 それを聞き今にも怒りを爆発させそうな二人がふと止まる。


「それは本当かな? 」


 恐る恐ると言った感じで、アドレノを見る父。

 アドレノのも信じがたいといった感じだが、それを肯定(こうてい)する。


「……そうか。ああ……どうしよう」

「親父、なら行くしかねぇんじゃねぇか? 」

「それは私も同意ですね」

「……そうだね。この(さい)だ。(みんな)見極(みきわ)めようじゃないか!!! 将来(しょうらい)の僕達の家族を!!! 」


 

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新しく始めた異世界転生ものになります!
ハズレ枠の転生貧乏貴族は武姫を継承し最強へ至る
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