邪なる者 エカテー・ロックライド
廃墟となった村の前に一人の女性たっている。
螺旋を描いている金髪ロングに青い瞳、百七十センチメルほどの身長と豊満な胸。そして体には茶色い外套を羽織っている。
「おやおや、エカテー嬢。今日も派手にやったね」
「……ごみを掃除しただけよ。それに貴方達もやったじゃない」
「ごみとは酷い。彼らもモンスター達と同じ一つの生命だったのに」
「邪神様は、寛大。このくらい、いい」
「そうだね、相棒。ま、このくらい大丈夫かな」
エカテーの前から迫ってくる気配がした。
現れたのは帽子をかぶった黒い長身の女性。
だが声は二人分聞こえる。
知性ある武器のルータと魔女の二人だ。
「さ、ここから離れましょう」
エカテー先導の元二人と一つはこの村から離れていった。
森の中を二人が移動しているとエカテーが魔女に聞く。
「村を襲うのはいいけれど何とかならないの? 」
「何が? 」
「私達の移動がバレるじゃない。こんなリスクを背負ってまで村を襲う必要があるの? 」
「もっともな意見だね、エカテー嬢」
「そう。でも、正論だけではだめだめ」
「君にはもっと強くなってもらわないとね」
「それが村を襲うことにどうつながるのよ……。憲兵や騎士団に襲われたらそれこそ目も当てられないわ」
はぁ、と少し呆れたような声がルータからしたが気にも留めずにエカテーは前に進む。
「君には才能がある。だけど才能は使ってなんぼだよ」
「それは分かってるわよ」
「相棒の能力と君の召喚は非常に相性がいい。何せ君は普通の召喚士とは違って帰還も使えるからね。だけど、それだけだ」
「どういうことよ」
「つまりだ。君が村を襲い死体を増やして相棒がエネルギー・ストックをためる。そしてそのストックに応じて君が召喚と帰還を行うと必然的に召喚できる幅も数も増やせるわけだ」
「お腹いっぱいまでまだまだある」
「そう。まだまだあるんだ。だから村を襲い出来るだけストックをためる。良いじゃないか。騎士が来たら逆に返り討ちにすればいい」
移動していると森に光が射しこんだ。
どうやら出口が見えたようだ。
「でも君自身まだ成長途中。だからこうして見つかりにくい場所へ移動しているのだよ。それにもっと襲って力をコントロール出来るようにしないとね。最初に行った帰還の時のようにしくじるのは流石にごめんだからね」
「練習、練習」
「……そう言えばあのスケルトンはどうなったかしら? 」
ルータの言葉で思い出し、エカテーは独り言ちた。
バジルの町でミスをして発生したヒュージ・スケルトンを思い出す。
「結局相棒が――力は弱いけれど――帰還を使って戻したけれどBランクだからね。どうなったかわからない」
「帰還は得意じゃない」
「相棒は力仕事の方が強いからね」
「ルータ、酷い。まるで、私が筋肉質みたい」
「おやおや、ごめんね。そんなつもりはなかったんだよ、可愛らしい相棒」
「ルータ」
この帽子と魔女のやり取りにいつも疲弊する。
まるでカップルのようなやり取りだ。
正直イラつくし他でやってくれとも思う。
が、それは言えない。圧倒的強者の前ではエカテーは無力なのだ。
「ま、再召喚されて暴れあの女を苦しめるのならそれもいいわね」
そう言いながら目の前にある村に向かった。
そしてその日村がまた一つ地図から消えたのであった。
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