表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/442

第四十七話 Eランク昇格への道 五 ゴブリン討伐依頼 二

 山の木々からこぼれてくる太陽の光を浴びながら俺達は山道(やまみち)慎重(しんちょう)に進んでいた。

 装備(そうび)はいつも通り、に加えて俺は長剣(ロングソード)だ。


「こっちにもあるよ、足跡(あしあと)


 座った状態から青いブレザーを(ひるが)し、こちらを黒い瞳が(のぞ)く。


「ここら(へん)まで来てるのか。足跡(あしあと)の数も多いし、新しい」


 そう言いながら新しく()み倒されたであろう草を見る。

 多い。村長も言ってたけど十は確定。それ以上いるな。

 (かこ)まれたら大変だな。


(かこ)まれないよう注意しながら行かないとな」

「上位種がいたらどうする」


 少し進み、こちらに意見を求めてくる。

 今日はやけに慎重(しんちょう)だな。いや慎重(しんちょう)なのはいいんだが。


「一体だけなら討伐。一体に加えて他のゴブリンもいたら一時撤退(てったい)と他の冒険者の派遣要請(はけんようせい)、だな」


 俺なりの意見を言い、また少し進む。

 Fランク冒険者としてはセオリー通りの対処法だ。

 上位種がいるだけで全滅の危険性が()ね上がる。

 それに俺達は二人だ。

 上位種がいる中、五体以上のゴブリンに(かこ)まれたら目も当てられない。


「了解っと」

「来たな」


 腰の長剣(ロングソード)を出し、構える。

 ケイロンも細剣(レイピア)を構え迎撃(げいげき)態勢に。

 進んでいる途中(とちゅう)から雰囲気が変わった。


 前から来たのは三体程のゴブリンだ。


「デリク。少し僕にやらせてもらえないかな? 」

「……構わないが、まずそうなら()り込むぞ? 」

「いいよ、それで」


 そう言うとケイロンは魔法を唱え始めた。


付与(エンチャント): 鋭利な風刃(シャープ・エッジ)

移動速度上昇(スピード・アップ)


 途端(とたん)にケイロンの細剣(レイピア)から風が()き起こる。

 緑色に(かがや)く風は一瞬(いっしゅん)収束(しゅうそく)していき、細剣(レイピア)の周りをぐるぐると周る。


「ッシ!!! 」


 細剣(レイピア)を構えたと思ったら、一瞬でゴブリンと距離を詰め首を()ね飛ばす。

 勢いあまってか倒したゴブリンの背後まで行ってしまっているが、そこから体を反転させ背後から一閃(いっせん)

 最後にもう一体の首を()ね、一体目の首が上から落ちた。

 一瞬にして三体。ゴブリン達は持っている棍棒(こんぼう)を持ち上げることなく絶命した。


「ふぅ、できた」

「……すげぇな」

「デリクがいなくちゃこうもいかなかったと思うけど」

「俺は何もしてないんだが」


 フフと笑いながら、細剣(レイピア)を一度振り、(さや)にしまう。


「じゃ、悪いんだけど」

「分かってるって、後は任せろ。その代わり周りを警戒していてくれ」

「了解」


 ゴブリン討伐証明となる耳の部分を解体用ナイフで切り取り魔石がないか確認し発火(ファイアー)で燃やすのであった。


 ★


 ふぅ、大丈夫だった。


 アンデリックが一人黙々(もくもく)とゴブリンの処理をしている間ケイロンは安堵(あんど)していた。


 デリクがデビルグリズリーと戦った時に感じたけど、震えなくなってる。

 これで僕も戦える。


 前と同じように、いやそれ以上に動けることを喜び、(にぎ)りこぶしを作る。

 もう、目の前でデリクが倒れるのは嫌なんだ。


 そう思いアンデリックを見る。

 僕達はパーティーだ。出来るだけ彼の力にならなくちゃね。


 意気込(いきご)みはいいがその積極的な行動により家人(かじん)が騒いでいるのを彼女は知らない。


「よし、終わったぞ」

「うん、行こう! 」


 彼女は気分を新たに前に進む。


 ★


 俺達は山を前進していた。

 時々小型動物の死骸(しがい)が見当たる。

 ゴブリン達が食べた後だろう。


「中々に(ひど)いね」

「人じゃない分マシだな」


 死骸(しがい)白骨(はっこつ)化しており、時間が()っていることが分かる。

 一旦(いったん)は止まり観察(かんさつ)したが、情報となるようなものは出てこなかった。


「大型の動物がやられていないってことはそこまで大きな集団じゃないってことか? 」

「分からない。だから油断(ゆだん)禁物(きんもつ)だよ」

「確かに」


 さっきは前からゴブリンが来たのでその方向を進んでいる。

 骨を見つけては移動方向を話し合っているが中々(なかなか)出くわさない。

 三体で全部ということは無いだろう。

 少なくとも十はいるんだから。


中々(なかなか)に出くわさないね」

「っと思えばなんか開けてるぞ」

「この場所(おぼ)えある? 」

「いや、無いな。というよりもあまりこの山には入ってなかったから」

「そっか。なら仕方ないね。気を付けながら進もう」


 この村に来たことがあるから山にも入ったことがあると思い聞いてきたのだろう。しかし、流石に山には入らなかった。精々(せいぜい)山の手前(てまえ)までだ。


 二人、出来るだけ足音を消し前に進む。

 そーっと、そーっと進む。

 開けた場所の手前まで来ると、木の(かげ)(かく)れながらゆっくりと前を見た。


 隙間(すきま)から目に映ったのはゴブリンの()れだった。

 しかし多くない。

 十二、三ほどだ。

 ウサギだろうか、食事に夢中(むちゅう)でこちらの気配に気づいた雰囲気はない。


「どうする、倒す? 引く? 」

「……上位種もいなさそうだし……倒すか」

「了解」


 気配を消しながらも小声で会話をする。

 倒す方向に話が決まると準備を。

 そう言えば付与魔法を使ってたな。

 魔力残量はどうだろうか?

 

「魔力は大丈夫か? 」

「今回は魔法は使わない」

「え? 」

「さっきのは安全策をとっただけ。もしかしたら帰りに他のゴブリンがいるかもしれないからその時ように取っておく」

「……わかった。だが危なくなりそうだったら躊躇(ちゅうちょ)なく使えよ? 」

「勿論」

「じゃぁ合図(あいず)を。三、二、一……行くぞ」


 そっと合図(あいず)をし、ゴブリン達に奇襲(きしゅう)をかけた。


 ★


 結果は勝利だ。


 驚くほど簡単に勝てた。

 と、言うよりもケイロンが魔法を使わなくてもあれだけの機動力を出せたのが吃驚(びっくり)だ。

 前の三体の時が安全策と言っていたのも(うなず)ける。かなり戦闘慣れしているように見えたのはきっと気のせいじゃないだろう。

 

 問題は……俺だよな。


「う~ん。どうしたものか」

「デリク、どうしたの? 」


 ケイロンが周りの警戒をしながら聞いてくる。


「いや、戦闘中にデビルグリズリーの時みたいな……なんていうか相手の行動がブレて見えるような感覚に襲われてな」

「あれってそうだったの」

「なんだ、ケイロンの目にもおかしく映ったのか? 」

「おかしくというか、未来が視えているような感じ? かな」


 未来。

 なるほど。確かにあの時は未来だった気がする。

 ブレて見えるというよりかは行動の先読みをしているような感じだ。

 それだけなら問題ないんだが……


「っと、発火(ファイアー)


 証明部位と魔石をとり、燃やす。

 異臭(いしゅう)(ただよ)う中、くらっとした。


「デリク大丈夫?! 」

「あ、あぁ……大丈夫だ」

「今ふらついてたけど」

「何か、あれが視えたら魔力をごっそり持ってかれるみたいだ。多分デビルグリズリーの時の魔力欠乏ってこれが原因じゃないか」

「そっか。なら今日は一旦(いったん)切り上げよう」


 ゴブリン達が燃え()きた後、俺達は下山(げざん)した。

 特にモンスターに出くわすこともなく村へと戻る。

 今日のゴブリン討伐が終わったことを村長に伝え、俺達は休むのであった。

お読みいただきありがとうございます。

もしお気に召しましたらブックマークへの登録や下段にある★評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新しく始めた異世界転生ものになります!
ハズレ枠の転生貧乏貴族は武姫を継承し最強へ至る
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ