表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
441/442

第四百二十一話 いなくなったアンデリック

「見えなくなったね」

「そうですね」


 ケイロンとセレスが背中を合わせて座っている。

 しかし他の面々は迫りくるスライム達を討伐していた。

 中にはデザイアの雛形(ひながた)ともいえるスライム――『シュゴス』もいるのだがこちらは精神攻撃をしてこない。

 よって援護(えんご)なしにリンやスミナを筆頭(ひっとう)とした種族の輪(サークル)が、休憩(きゅうけい)組を護る形で対処(たいしょ)している。


「おい、何かこいつら動きが(にぶ)っているぞ? 」

「うむ。さっきよりかなり弱いのぉ」


 それを聞きケイロンとセレスは思い当たる。


「デリクがやったのかな? 」

「モンスターの弱体化を考えるのならば魔王が弱っているのか、やったのか、のどちらかでしょう」

「いつも僕達を置いて行くんだから」

「これは帰ってきたら説教が必要ですね」


 ふふ、と二人とも笑い殲滅(せんめつ)せんとばかりに立ち上がる。


「さぁ皆さん! あとひと踏ん張りの様です! 行きましょう! 」


 残党狩(ざんとうが)りが始まった。


 しかしアンデリックは帰ってこなかった。


 ★


 モンスターの活性化が急激に治まった。

 この事実が各国を走る。

 首脳(しゅのう)達——特にカルボ王国は喜び叫びそして神託(しんたく)による魔王消失(しょうしつ)宣言がなされた。


 王都セグ()()(てい)

 浮かない顔をする女性陣がいた。


「くそっ! あの野郎!!! 」


 スミナが机を拳で叩きつけ怒りを(あらわ)にする。

 顔は赤く、目も()れている。


「……援護(えんご)する前にいっちゃった」

「そんなの分かってらぁ!!! 」


 ケイロンの言葉に怒鳴り()らすスミナ。

 スミナらしくもない激情(げきじょう)にかられた言動(げんどう)だ。

 しかしスミナが苛立(いらだ)つのも無理はない。

 何せアンデリックが突然消失したのだから。


 分裂(ぶんれつ)体を掃討(そうとう)し終えた頃、美しき死神ビューティフル・リッパーが合流した。

 二つのチームも(そろ)ったということで周辺を探すもアンデリックがいない。魔王『デザイア・ベルゼビュート』もいない。

 おかしいと感じたセレスがエルベルと共に広範囲に一人と一体を探知するも発見できなかった。


 脳裏(のうり)に浮かんだのは相打(あいう)ち。


 しかしその体さえない。

 体が無くなるほどに消滅(しょうめつ)した可能性があった。


 そこで意外な可能性がエリシャから放たれた。


 昇神(しょうしん)


 エリシャの父達『七英雄』が魔王討伐時に通った道のようだ。

 可能性としてエリシャは言ったがそれをセレスが()に受けた。

 理由は日々薄くなっていたアンデリックの気配である。

 何か特異(とくい)なことが起こっているのがわかったが確認するすべがなかった。

 しかし今回の現象と魔王の消滅(しょうめつ)を考えると辻褄(つじつま)が合う。

 納得してしまったがために絶望した。


 もう会えないのかと。


 悲壮(ひそう)にくれる中、扉からノックの音が。

 誰も出る気がせず無言となり沈黙が流れる。

 しかし扉の向こうから怒鳴り声のようなものが彼女達に聞こえてきた。


「……なんでしょう? 」

「どうせまたくだらないお見合いとかじゃない? 」

「今度は家ごと永久凍土(えいきゅうとうど)(おり)にしてやりましょうか」


 バン!!!


 物騒(ぶっそう)な話をしていると、いきなり扉が開き赤い神官服を着た男がやってきた。


「おう、しんきくせぇ雰囲気かましてるな! 英雄の(つま)達! 」

「お客様! (たと)え聖光騎士団長である貴方でもこの狼藉(ろうぜき)は許されません! 」

「おっかねぇ事言うなよ……。俺は良い話を持ってきてやったのによ」


 そう言うレガリアに無言でセレスが魔導書を構える。


「ちょ、ちょい、マジで洒落(しゃれ)にならねぇ! 本当にいい話だって! 国の許可も得てる! 」


 (にら)みつけながら(わず)かに本を下げるセレス。


「くだらない話だと容赦(ようしゃ)しませんわよ? 」

「……お前達のリーダー。アンデリック・セグの事を知りたくないか? 」


 火の聖光騎士団団長レドリア・ガエンに引き連れられて彼女達は聖国へ渡った。


 ★


「お待ちしておりました。私聖国教皇『オラクル二十七世』と(もう)します」


 聖国にある大聖堂から(つな)がる会議室。

 火の聖光騎士団団長レドリア・ガエンに連れられて種族の輪(サークル)の面々はここへ来た。


 途中、レドリアは殺気というには生ぬるすぎる威圧を受け、冷や汗を流しながらやっとの思いで辿(たど)り着く。


「一先ずおかけになってください。ここは非公式の場。外交的儀礼(ぎれい)不要(ふよう)ですので」


 純白(じゅんぱく)法衣(ほうい)(まと)ったエルフの女神官こと『教皇』オラクル二十七世はそう言う。

 言われるがままに彼女達は座り、レドリアが扉の傍に立った。


「……本日お(まね)きしたのはアンデリック・セグ伯爵の事です」

「何か知っているのでしょうか? 」


 オラクルの言葉にリンが聞く。

 そこ中には少し熱気が(ねっき)っており若干期待が入っていた。


「ある程度は。神々から魔王消失の神託(しんたく)の後貴方達に伝えるよう言伝(ことづて)(あず)かっているので」


 言伝(ことづて)、と単語に少々不安げな顔をし軽く全員が顔を合わせる。

 しかし聞くべきと思い全員が(うなず)きつつオラクルを直視した。


「まずセグ伯爵は生きております」

「「「!!! 」」」

「しかしこの世界ではありません」


 どういうこと? とケイロンが聞く。


「まず神々が魔王ごとセグ伯爵を違う世界に飛ばしました」

「「「はぁ?! 」」」

「まさに神業(かみわざ)と言ったところなのですが、伯爵はそこで魔王と激戦を()り広げたようで。(せま)い世界の様ですが半分以上が焦土(しょうど)()したようです」


 絶句(ぜっく)である。

 世界の半分が焦土(しょうど)()すほどの戦闘。

 軽く身震いする。


「皆さんが考えている通りだと思います。この作戦は伯爵も了承(りょうしょう)済みだったようでこの大陸に被害が出ないようにするためだったとのこと。結果として伯爵が勝ったのですが問題は帰還(きかん)方法」

「神様達が戻してくれるんじゃないのか?! 」

「責任もって帰せやゴラァ! 」

「……無茶を言ってはいけません。新世界の創造に世界間移動。この世界への影響を少なく働いたためかなり神々も消耗(しょうもう)しているようで。正直私もこれほどまでにノイズのかかった神託(しんたく)は聞いたことがありません」


 そう言われ、前のめりになっていたエルベルとスミナは歯軋(はぎし)りをしながら引き下がる。

 神々とて全力を()くした。

 そう言われると責めるに責めれない。


「しかし帰還(きかん)方法が無いわけではありません」

「……嘘じゃないよね? 」

「教皇オラクル二十七世の名において嘘は告げないと宣言しましょう。新たな神の誕生。そして帰還(きかん)。これほどまでに喜ばしいものはありません。しかし帰還(きかん)方法は単純で、難しい」

「どういうことでしょうか? 」

「方法はセグ卿が神通力を用いて独力(どくりょく)で帰る方法」

「……初代様が使っていたあれですね」

「初代様、というのがどなたかは分かりませんが神通力です。しかしこれを使うにもこちら側の場所を特定できないといけないようで。出来れば、彼と(えん)の深い物があればいいのですが」


 そう言われ顔を合わせる。


「何かあったかな? 」

「……」

「ぬいぐるみ」

「むむむ……」

「リンも思いつきません」


 メンバーが口々に意見をいう中スミナが一人考え込んでいた。

 そして見上げる。


「なぁこの腕輪はどうだ? 」

「「「それだ (ですわ)!!! 」」」

「ありましたか? 」

「ええ」

「ならばこれから交神(こうしん)し準備をします。貴方達もよろしいでしょうか? 」

「「「はい!!! 」」」


 再び彼女達は元気を取り戻す。

 愛する人を取り戻すために。

ここまで如何だったでしょうか?


面白かった、続きが気になるなど少しでも思って頂けたら、是非ブックマークへの登録や広告下にある★評価をぽちっとよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新しく始めた異世界転生ものになります!
ハズレ枠の転生貧乏貴族は武姫を継承し最強へ至る
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ