第三百八十四話 トレインの町 ダンジョン 四
「こ、これは! 」
冒険者ギルドの受付で俺達は大量の金属プレートと捕まえた迷賊の頭領一人を差し出した。
俺達が入った時は若干騒がしかったギルドの中が今は静まり返っている。
迷賊の男はセレスの静寂と拘束をその身に受けてじたばたするも動けず何を言っているのかわからない状態になっていた。
実の所、動かないように相手を更に拘束する魔法は幾つかあるらしいのだがセレスの場合それを使ったら逆に相手の気力やら魔力を奪い過ぎて死んでしまうかもしれないとのこと。
エリシャの闇属性魔法ならどうだ、と思ったのだがそっちも強すぎるみたいだ。
よって今の状態に落ち着いている。
「迷賊三頭の一人……。ガラ……」
目の前のドワーフ受付嬢が再起動し呟くようにそう言った。
こいつ、ガラっていう名前なんだ。
知らずに変なのを捕まえたみたいだが冒険者達が急に騒がしくなった。
「ガラって……あのガラか!? 」
「流石だ」
「やはり殺気だけじゃなかったんだな」
どんどんと騒がしさが増す中、受付嬢が顔を上げこちらを見る。
「少々こちらでお待ちいただいても? 」
俺達の言葉を待つ前に彼女は半螺旋階段を駆け上がっていった。
それを見送っていると後ろから声が聞こえてくる。
「こいつ大物だったのか? 」
「さて? 睡眠にかからなかっただけなのでそこまでは」
「呆気なかったな」
「迷賊の厄介さはその強さではなく罠や奇襲などを含めたダンジョンへの適応性です。エルベルさんの探知が無ければ少し手こずっていたでしょう」
「つまりオレのおかげだな! 」
後ろを振り向きどやってるエルベルを見る。
他の面々は少し苦笑いだ。
確かにそうなのだが調子に乗られるとめんどくさいので褒めない。
「ギルドマスターがお呼びです」
俺達が話していると二階に上がった受付嬢が俺達の前まで来てそう言った。
★
「今回は助かった。礼を言おう」
「いえ。探索の障害になっただけなのでお気になさらず」
ギルドマスター室に行くとそこには黒いひげのドワーフが一人いた。
お互いに自己紹介したがどうやらこの人がギルドマスターのようだ。
そしてどこか荒っぽい口調で礼を言い俺達をソファーに座らせる。
部屋を見ると他のギルドマスターの部屋とは違い様々な調度品が見える。
単にお金持ち、というわけではなく職人の町ならではなのだろうか?
「最初に聞いておきたいんだが……ガラいげぇの組織員はどうした? 」
「殲滅しました」
それを聞き少し驚いた表情をした。
しかしすぐに顔色を戻す。
そして少し何か考えているようだ。
「どうやって倒したかは……」
「お話するとでも? 」
「……ないな。ならお前さん達に一つ頼み事がある」
顔をあげてギルドマスターがそう言う。
予想は出来るが……。
「他の迷賊三頭を討伐してくれねぇか? 」
やっぱりな。
出来れば断りたいが迷賊達が俺達の邪魔になるのは分かり切っている。
今まで二十三階層から下へ行かないのは迷賊が原因になっているのもあるだろう。
記録は良いとしても希少金属を、いや見たことのない金属を求めるセレスからすれば殲滅対象になるのは確実だろう。だから彼女なら引き受ける、と言いかねない。
しかし今まで放置してきた面倒事を押し付けられるのも気が気でない。
さてどうしたものか。
「それはAランク冒険者パーティー『種族の輪』への指名依頼ということですか? 」
「ああ。そうなる」
「報酬は? 」
「……白金貨一枚だ」
「安い」
セレスがバッサリ切ったぁぁぁ!
普通の冒険者が目にすることがないような金額をバッサリと。
まぁ確かに安いんだが。
「何故だ? 」
「今まで放置されて来た迷賊。それは今まで倒せる冒険者がいなかったからですよね? 」
「……そうだ」
「通常のAランク冒険者パーティーに依頼する金額が大体白金貨一枚。しかしそれはAランクモンスターを討伐する金額です。正直率先して迷賊を討伐するくらいならそこら辺にいるワイバーンを狩った方が得ですわ」
「……白金貨三枚だ」
「たったの? 」
「だぁぁもう! 白金貨三枚に金貨十枚! これ以上は出せねぇ! 」
「引き受けました。依頼書、待ってます」
最後にセレスがそう言い、俺は涙目なギルマスを憐みの目線で見た。
すみません、ギルマス。
しかし足元を見た貴方も大概なので恨まないでくださいね。
受付に降り少し待ち依頼書を受け取った俺達は予定を変更して迷賊狩りを行うことになった。
なお俺達が迷賊狩りをする一定の期間はダンジョンへの侵入を一時的に制限するらしい。
普通の冒険者も巻き込んだら目も当てられないし、当然と言えば当然だ。
翌日セレスが魔導書片手に高らかに一言。
「さぁ。悪党は退治ですわ! 」
セレスがそう意気込み今日も俺達は迷賊を狩る。
★
アンデリック達が迷賊狩りを行っている時スミナはというと――鉄を打っていた。
鉄鉱石は鉄にしつつ前に倒したハイ・トレントを材料にした木炭を放り込み、調節する。
ハイ・トレントの木炭は他の木炭と全く性質が異なる。
木炭として役割を果たすだけでなくそれ鉄剣の魔力伝導率をあげる。
カーン! カーン! カーン!
ひたすら打ち続け――一本の魔剣が出来上がった。
「普通の、魔剣だな」
そう独り言ちつつ脇に置く。
まだだ。まだ足りない。
彼女はまだ先を見据えている。
アンデリック達は恐らく鉄ではなく希少金属を持ってくるだろうとスミナは確信していた。
そこに根拠はない。
しかし何故だか彼女はそう信じている。
「……次だな」
炉から離れて壁際に行く。
そこにある何本もの魔剣の内一つを持って机に向かう。
そして刻印を、始めた。
『今日も頑張るね』
『いつも同じことばかりで退屈じゃない? 』
『そうそう』
『でも! 』
『そうね』
『応援ね! 』
この工房を秘密基地にしていた精霊達がスミナの様子を見て全員が手をあげる。
『フレー! フレー! スミナ! 』
『『『頑張れ、頑張れ、スミナ! フゥ!!! 』』』
精霊とは自然を形成する因子の一つである。
彼女達にその気がなくとも複数いるだけで環境に影響を及ぼすことも。
つまり今スミナが魔剣を作っている時、応援のようなことをしたらどのような影響を及ぼすかわからない。
しかもその場にはあの石もある。
不確定要素が入り混じるこの混沌とした工房で数日に渡りスミナの魔剣生成と刻印そして精霊達の応援は続いた。
迷賊三頭の討伐が完了したアンデリック達が工房に来た時その騒がしさに一喝したようだ。
ここまで如何だったでしょうか?
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