表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
種族の輪 《サークル》 ~精霊術師は今日も巻き込まれる~  作者: 蒼田
第一章 安全マージンをとる冒険者
40/442

第三十三話 スタート

「……ク」


 ん~、起こさないでくれ。

 今、体がしんどいんだ。


「デ……ク……て」


 もう少し待ってくれてもいいだろ……。

 依頼の後なんだから。

 ん? というか依頼?

 依頼はどうなったんだっけ?


「デリク。 起きてよ、デリク。起きないと本当にいたずらしちゃうぞ……」

「うぁぁぁぁぁ! やめろぉぉぉぉ!!! 」


 俺は不穏(ふおん)な声に起こされ、()び起きた。

 隣には(ぬの)を持ったケイロンが、その向こうにはフェナとガルムさん、フェルーナさんが見える。


 周りを見渡すと俺が泊まっている銀狼の部屋だった。

 どうやらベットで寝ていたらしい。ふかふかの感触(かんしょく)若干(じゃっかん)薄い(ぬの)(かぶ)っている。


「俺は一体……」

「無事だったんだね、デリク!!! 」


 (ぬの)を持った手を大袈裟(おおげさ)に広げ喜んでいるが今の状況を教えてくれ。

 ケイロンのテンションに少し後退(あとずさ)り、顔を強張(こわば)らせる。

 その時肌に着くような(ぬの)感触(かんしょく)が……感触(かんしょく)が?

 違和感(いわかん)を感じ、毛布(もうふ)をめくる。そして自分の体を確認した。

 ……ふぅ。フェナには見せれない状態だぜ。


 全裸だった。

 

 それにしてもこの状態の俺に何をしようとしてたんだ。物凄(ものすご)い気になる。


「ケ、ケイロン……。何をしようとしてたんだ? いたずらって」

「そ、それは……。いいじゃない! 」


 と、顔を(そむ)誤魔化(ごまか)そうとしている。

 すると(おく)から声が聞こえてきた。


「実はな。ケイロンが兄ちゃんの体を……「わわわわわ!!! 」」


 ガルムさんが黒い瞳をこちらに向け愉快(ゆかい)そうに言うとケイロンが止めに入った。

 ケイロンはガルムさんの説明を止めに入ったが、止まらない。


「おいおい、そんなに()ずかしがることないじゃな、ゴフッ!!! 」


 ケイロンが何をしようとしていたのか伝えようとすると、隣にいたフェルーナさんのアッパーが炸裂(さくれつ)した。


主人(しゅじん)がごめんあそばせ。オホホホホ……」


 その言葉と共に気絶したガルムさんはフェルーナさんに引き()られ(とびら)の向こうに行ってしまった。


 バタン!


 フェナはその様子に顔を青くし、震えている。

 不憫(ふびん)な……。

 しかし……何をしようとしてたんだ? 本当に。


「なあ、フェナ。何をしようとしたたんだ? 」

「そ、それは……」


 何か言おうとすると、(とびら)の向こうから物凄(ものすご)い威圧感が(ただよ)ってくる。

 それを感じたのか銀色の尻尾(しっぽ)を丸め耳をきゅっ! と閉じてしまった。

 ……そ、そんなにヤバい事なのか。


「ま、まぁいいか。実際されなかったんだし」

「そ、そうよ! あまり深く詮索(せんさく)しないのが、い、いいわよ」


 フェナが震えながらも、言う。

 彼女は彼女で下に置いてあった木の(おけ)の水を換えるためか(おけ)をもって部屋を出てしまった。

 俺とケイロンが残されてしまったわけだが……。

 まずは状況を確認しないと。


「な、なぁケイロン。あの後どうなったんだ? 」

「デリクがデビルグリズリーを討伐し依頼は無事終了だよ」


 そう()げると、真ん中にある椅子の方に行き、座った。


 ケイロンが腰を()けギィっと音をさせるが、俺は少し安堵(あんど)した。

 倒せていたのか。

 勝利を確信(かくしん)した後くらいから記憶がないから気になっていた。

 しかしながらケイロンの顔色は(すぐ)れない。どこか不安げな顔だ。


「デリク、体は大丈夫? 」

「ん? 大丈夫……のようだな」


 体をくまなく動かし見て確認する。

 腕よし、足よし……


「きぃぃぃやぁぁぁぁ」

「うわっ! ちょっ!!! 」


 ベットの隣方向から本飛んできた。

 ケイロンが飛ばしたもののようだ。

 それをキャッチしケイロンの方を向き抗議(こうぎ)する。


「な、何をしている、ケイロン! 怪我が無くても怪我をしてしまうじゃないか! 」

「か、か、か! いや、せめて服を着てからにしてよ!!! 」

「別にいいじゃないか! と、言うよりも服を着たら足の状態が分からないだろうが! 」


 だけど、だけど、とか言いながら顔を赤くしぼそぼそと言う。

 いや、別にいいじゃないか。男同士なんだし。

 

「も、もう! 僕は外に出て待ってるからその(あいだ)に確認しておいてよね!!! 」


 そう言いサクサクと(とびら)の向こう側へ行ってしまった。

 その様子を見ながらも、足や他の部位を調べようとすると一冊の本が俺の布団(ふとん)に。


「今さっきの本か。こんな本、持ってたか? え~っと、何々(なになに)? 題名(だいめい)は……」


 【増補版!!! 冴えない男の起こし方アウェイクン・ラブストーリー: 病人編】


「……」


 無言(むごん)でそれをめくる。


 パラ……。


「ロッチ、ぼ、僕は……」


 パタン。


無駄(むだ)絵心(えごころ)がいい!!! 」


 虚無(きょむ)である。

 何も、何も見ていない。


 体をくまなく……くまなく確認した後、ケイロンを呼んだ。

 本を机の上において。


 ★


 俺は本の事には()れず、椅子に座っているケイロンの方を向き何が起こったのか聞いていた。


「まぁ何というか……今は混乱状態だね」

「依頼は達成したのにか? 」

「うん。まぁ依頼もそうだけど……他の事もあって……」


 物凄い言いにくいようだ。

 微妙(びみょう)な顔をして作り笑いをしていた。

 確かにただのゴブリン討伐のはずがデビルグリズリーが出てくるんだ。(さわ)ぎにならない方がおかしい。


「デビルグリズリー、だもんな」

「それに加えあのゴブリンの数。異常だよ」

「今はどうなっているんだ? 」

「商業ギルドと冒険者ギルド、そして行政で話し合っている所らしいよ」

「なんか小難(こむずか)しい話になったな」

「まぁ今回はモンスターだけの話じゃないから、ね」


 そう言いながらケイロンは(まど)の方を見た。それにつられ俺も(まど)の方を向き、外を(なが)める。

 あれからどのくらい()ったのだろうか。今は昼頃というくらいは分かるんだが。


「なぁ、(ちな)みに……俺何日寝てた? 」

「三日だよ、三日。 もう起きないかと思ったよ……」

「そ、そんなに寝てたんだ。そりゃ悪かった」

「あの後運ぶのも大変だったんだから……」


 なんとも申し訳ない。

 二人で話しているとコンコンコンとノックの音がした。


「お兄さん達! お昼ご飯ができたわよ! さぁ食べなさい! ゲフッ!!! 」


 ……(まな)ぼうぜ、フェナよ。


 お昼という言葉に反応してか「ぐぅ~」という音がお腹からした。


「ハハハ、三日も寝てたらそうなるよね」

「腹減った……食べに、行くか!!! 」


 服を着た状態で立ち上がり、昼食を取りに一階へ行った。

 笑いながらも俺達はこの奇妙(きみょう)(えん)(つな)がれたまま、過ごすのであった。


 ★


「何で……何でこうなったのよ……なんで……」

お読みいただきありがとうございます。

もしお気に召しましたらブックマークへの登録や下段にある★評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新しく始めた異世界転生ものになります!
ハズレ枠の転生貧乏貴族は武姫を継承し最強へ至る
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ