表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
種族の輪 《サークル》 ~精霊術師は今日も巻き込まれる~  作者: 蒼田
第九章 心強き婚約者 下 その陰謀に終止符を!
391/442

第三百七十一話 帰国の旅路と犯罪者と気ままな神獣達

「もう帰るのか? 」

「ええ。流石に長く居過(いす)ぎましたので」


 そう言うとカイゼル五世は少し寂しそうな顔をした。


 先日の国選(こくせん)武闘会とそのエキシビションマッチを終えた俺達は翌日朝食をとった後、獣王にそう言った。


 リンのまさかの種族限界突破(ウォール・ブレイク)に驚かされたエキシビションマッチではあったが逆に弱点も見えた。

 ロイ様の時はそのようなことは無かったが活動限界が極端(きょくたん)に短かったのだ。

 そうしたリンの事もあって引き分けということで終わりを告げたのだが、ガラス公爵に聞くところによると最初のやり取りだけでカルボ王国の面子は最低限守られたとの事。

 外交組の仕事も終わったみたいで俺達は帰国することにした。


「何だ。後一年くらい、いやずっとこの国に住んでもいいんだぞ? 」

「えぇ……」

「貴方。それをやらないためにアンデリックちゃんに子獣位(じゅうい)を与えたのでしょう? 外交上の問題に発展させるようなことを言ってどうするのですか」


 移り住めというカイゼル五世にロナ様が嘆息(たんそく)気味に(たしな)めた。

 俺の子獣位(こじゅうい)にそんな理由があったとは。

 何も知らずに受け取ったがやはりというべきか政治的なことが(から)んでいたんだな。


「さて、アンデリックちゃん」

「はい! 」

「リンの支度(したく)金も含めて毎年の年金は獣王国の国営銀行に入りますがお金は計画的に使うのですよ? 」

「イエス! マム! 」

「帰る時は再度連絡を寄越(よこ)すように。それと……」


 呼びかけられた俺は席を立ち後ろで腕を組みながら話を聞く。

 これはお義母様の恐ろしさをこの前知ったからだ。

 先日貴賓(きひん)席で余計なことを(しゃべ)っていたカイゼル五世。

 後にお義父様にアイアンクロ―をかましながら怒っていたのを偶然見かけてしまった。

 それを見て逆らえる人がいるだろうか。いやいない。


 粗方(あらかた)注意事項を聞き終えた俺達は荷物を(まと)め連絡をして過剰な送別を受けながら帰るのであった。


 ★


 時は少し(さかのぼ)り獣王国の王都。

 そこでは()えた(たぬき)獣人達が逃げまとっていた。


「おい。早く馬車へ」

「領地に戻るか? 」

「馬鹿もう封鎖(ふうさ)されているに決まってる! 」

「ならどこに逃げる! 」

「タウロ伯獣位(はくじゅうい)領はどうだ? 」

「わし達の作戦がバレていたのだぞ! 平民に(まぎ)れるべきだ! 」


 馬車があるところまで走りながら彼らは各々案を出す。

 しかし良案(りょうあん)は出てこない。


 なぜこのようなことになったのかというと国選(こくせん)武闘会も終わり会場から王都にある自分の屋敷へ帰ったところ国軍に制圧されていたからだ。


 容疑(ようぎ)はテロ未遂(みすい)

 捕まりそうになった彼らだが(たぬき)獣人が(ゆう)する種族特性で逃げ切りそこから逃げおおせた。

 が――。


「くそっ! なんでこんな「ドン! 」」


 走っているとそこで彼らは全員何かにぶつかり転げた。

 ぶつかった衝撃と転げた痛みと(あせ)りで怒りがこみ上げ、怒鳴る。


「貴様! よくもぶつか……」


 顔をあげた所にいたのは――騎士であった。


 王城地下牢獄(ろうごく)

 十人の(たぬき)獣人がそこに(つな)がれていた。


 両手には金属製の(くさり)が付けられ持ち上げられており、足には鉄の重石(おもし)がはめられている。

 この部屋自体、中で魔法が使えないように妨害系の刻印(こくいん)がされておりもしここから逃げれたとしても様々な罠を潜り抜けないと脱出が出来ない。

 よってここへ来て帰れる者は看守(かんしゅ)先導(せんどう)で来た者か相当(そうとう)な実力者か、の二択である。

 セレスが作った罠とどちらが巧妙(こうみょう)かと言われれば無論軍配(ぐんぱい)はこの王城のものになるのだが、殺傷能力で言えばセレスの罠に軍配(ぐんぱい)が上がる。


「おい。生きてるか? 」

「死ねないのがこれほどに苦しいとは」

「こうなるのなら先んじて脱出用の依頼も出しておくべきだったか」

「それは無理というもの」


 (ひど)い顔をした(たぬき)獣人達はその言葉に驚き顔をあげる。

 そこにいたのは一人の男獅子獣人。

 服装は騎士のようだが、普通の騎士ではないの確かだ。

 何せ看守(かんしゅ)先導(せんどう)もなしにここまで一人で来ているのだから。


「お前達が雇っていた犯罪組織、それに組織の本拠地(ほんきょち)に各支部は俺達が潰した」

「な!!! 」


 ありえない、(たぬき)獣人達はそう思った。

 小さな組織なら可能ならば相手は国内最大級の犯罪組織の集合体。

 それを潰すとなると一世代以上はかかるのは必然(ひつぜん)


 しかし逆に納得がいった。

 自分達がこうして捕まっているのはあの組織達が全滅したからだ、と。


「さて、聞きたいことは山ほどある」

「ちょ、ちょっとまて! 何だその手に持っている短剣は! 」

「聞くだけならいらないだろ! 」

「話す! 話すからやめてくれ !」

「お前達がドワーフ族にしたことも知っている。精々()びながら地獄へ行きな」


 (たぬき)達の悲鳴が(とどろ)く中、情報収集は実行された。


 ★


 夜の王城。

 カイゼル五世とガラス公爵は会談(かいだん)をしていた。

 議題は『リン王女誘拐(ゆうかい)事件』。

 そうはあるもののガラス公爵側としては『武器情報流出問題に関して』も情報が欲しいところではある。


「やはり繋がっていましたか。こちらの貴族については? 」

「それらしき人物は口にしていたようだ。だが、尻尾(しっぽ)の一人だろう。だが面白い事を聞けた」

「面白い事? 」

「貴族は分からなかったがこっちの組織と繋がっていたのは『アウトサイダー』という組織らしい」


 それを聞き目を見開くと同時に頭を痛める。


 犯罪組織『アウトサイダー』。

 この組織の名前は業界のみならず国内の貴族の中でも有名で厄介(やっかい)この上ないからだ。

 だが同時にガラス公爵は「アウトサイダーならば」ブラッフィ伯獣位(はくじゅうい)の依頼を受けても納得がいった。

 差し()めとらえた貴族で人体実験でもやろうと考えていたのだろう、と。


 はぁと溜息(ためいき)をつきながら二人は肩を落とした。


「ま、国選(こくせん)武闘会を利用して国内最大の犯罪組織集団は潰せた。これは僥倖(ぎょうこう)だ」

「それは何よりで。後はこちらをどうにかすれば」

「そう言うことだな。流石にそちらの組織を潰すのにこっちの戦力は割けれん。内政干渉(ないせいかんしょう)が過ぎるからな。本来なら新人教育も()ねて送ってやりたいところではあるが」

「お気持ちだけでも結構ですよ。ありがとうございます」


 二人の会談はまだまだ進んだ。

 ガラス公爵はカイゼル伯獣位(じゅうい)家の親族であり次期国王との顔合わせも済ませて自室へと戻った。


 ★


 別所。

 ここは王都にあるイナリ伯獣位(じゅうい)家の屋敷。

 狐獣人であるイナリ伯獣位(じゅうい)家なのだが今彼らは全員が一人の女性に平伏(へいふく)していた。

 

 その女性——ツキヨは戦闘の時と変わらず(すず)し気。

 違う点と言えば長い髪を後ろで()って仮面を取っている所であろうか。


 このイナリ伯獣位(じゅうい)当主(とうしゅ)含め全員が平伏(へいふく)するという異常状態を()にも返さずツキヨは(りん)とした声を発する。


「面白いもの、(なつ)かしいものを見ることが出来ました。今回は無理を言ったようで申し訳ないですね」

「テン……ツキヨ様。そのようなことはありませぬ」

「王を、決める闘いだったのでしょう? 」

「元より我々が闘いリン殿下にかなうとはつゆとも思っておりませぬ。むしろその剣舞(けんぶ)を見せていただけただけでも見に(あま)光栄(こうえい)でございますゆえ……」


 当主が非常に恐縮しながらそう言った。

 それを聞きつつもツキヨは上を見上げる。

 何かを見つけたようだ。


「……急に押しかけ、また急で申し訳ないのですが私はそろそろ行かなくてはならないようですね」

「ははぁ!!! 」


 では、という言葉と共に彼女は蒼い光の球となって屋敷をすり抜けた。


 一匹の白く神聖さを(かも)し出す一尾(いちび)の狐が天を駆けている。

 下から見ればさぞ神々(こうごう)しく見えるのだろうが残念ながらその狐——天狐(テンコ)を視れる者はいない。

 ただ一人、いや一体を除いて。


『お久しぶりですね』

『急に思念伝達を行わないでください。こちらにも事情があるのです。貴方はいつも突然なのですから』


 一匹の天狐(テンコ)に話掛けるのは一匹の天馬(ペガサス)であった。

 ここは王城の屋根の上。

 こっちにこい、と天馬(ペガサス)が呼び()せたのだ。


『何で貴方は貴賓(きひん)席にいたのですか? 』

『面白い人を見つけたので』

『……嘘を言わないでください。まぁ面白そうなのは認めますが』

『一緒に来ますか? 』

『止めておきます。貴方について行っていい思い出がないので。それに今住んでいる所は非常に心地(ここち)いいので』

『あの、貴族の所ですか? 』

『いいえ。海が近くにある大和皇国という所です』

『今度遊びに行っても? 』

『絶対に来ないでください』


 昔馴染(むかしなじ)み、つまり第一世代神獣である天馬(ペガサス)天狐(テンコ)他愛(たあい)もない事を話し近況報告をしていると天馬(ペガサス)が急に(たず)ねた。


『大和皇国にいるのなら何故この国にいたのですか? 』

『なにやら不穏(ふおん)な雰囲気を感じたので、皇国に影響がないか調べに来たのです』

『なるほど。それで九尾の狐獣人の姿を取り、偽名(ぎめい)まで使って遊んでいたと』

『あ、遊びではありません。調査です! 』

『はいはい。で、結果は? 』

不穏(ふおん)さはもっと違う所の様ですね。この国ではないようです』


『しかし……貴方がいるということはあの、獅子獣人の女の子に種族限界突破(ウォール・ブレイク)を教えたのは貴方ですか? 』

『いいえ。違います』

『なら誰が』

『大体想像がつきますが、まぁいいでしょう。私はこれから少し遊びに行ってくるとい崇高(すうこう)使命(すうこう)があるので今日はこの辺で』

『強制的に呼び()せて、勝手気ままに立ち去る。あの少年の苦労が目に見えるようです』


 そう言いながらも二体は別れた。

 天狐(テンコ)——ツキヨはその足で大和皇国へ向かう。

 なお途中彼女が通った魔境(まきょう)は消滅したらしい。

ここまで如何だったでしょうか?


面白かった、続きが気になるなど少しでも思って頂けたら、是非ブックマークへの登録や広告下にある★評価をぽちっとよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新しく始めた異世界転生ものになります!
ハズレ枠の転生貧乏貴族は武姫を継承し最強へ至る
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ