表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
種族の輪 《サークル》 ~精霊術師は今日も巻き込まれる~  作者: 蒼田
第九章 心強き婚約者 下 その陰謀に終止符を!
388/442

第三百六十八話 国選武闘会の裏で 三

「予定の時間だ。皆、良いか? 」

「「「ハッ!!! 」」」


 獣王国ビスト王都のとある場所。

 周りに人がいない中、都民が来ているような服を着た集団が、腰に剣を(たずさ)えて集まっていた。

 都民が剣を(たずさ)えること自体が不自然なのだが彼らに()かりはない。

 無論隠蔽(いんぺい)系統の魔法はかけてありそこには何もないように映っている。


 彼らは獣王国国王直属(ちょくぞく)隠密襲撃部隊『オウガ』。

 国王が保有(ほゆう)する最大戦力であり『個』として一騎当千(いっきとうせん)の者達が集まる集団である。

 隠密、とあるが『フクロウ』『モグラ』とは(こと)なり力に重点(じゅうてん)が置かれた部隊で一人一人が国軍各総司令官の副官程の力を持つ。


 そのような彼らが忠誠(ちゅうせい)(ちか)っているのはただ一人。

 獣王『リチャード・カイゼル』のみであった。


 『フクロウ』、『モグラ』含めて彼らの出生(しゅっせい)高貴(こうき)から離れたものである。

 中には元犯罪者のようなものもいる。

 リチャードが幼少の頃から外に出ては王城を困らせていたころ(くすぶ)っている彼らを見つけ、叩きのめし、時には一から育て上げ『最強の部隊』にし立て上げた。

 リチャード自身はそんな気はなかったのだろうが、結果として彼は永劫(えいごう)忠誠(ちゅうせい)(ちか)う程に(あつ)忠義(ちゅうぎ)(ささ)げる最強の部隊を手に入れた。


 そもそも『モグラ』はともかくとして『フクロウ』や『オウガ』はリチャードが一から作り上げた組織だ。

 リチャードが王となった時彼らに貴族位を与えようとしたが拒否され、モグラを参考にして作り(なか)ば無理やりに組み込んだ。


 信じるものがただ一つである部隊は強い。

 その(はしら)が倒れない限り精神が崩れないからだ。


「分かっているとは思うが姿形(すがたかたち)(まど)わされるな。女子供であろうと油断(ゆだん)するな。躊躇(ちゅうちょ)するな。相手は陛下にとって害悪(がいあく)


 リーダーと(おぼ)しき獅子獣人が全員に確認する。

 それぞれに強い意志を確認しながら言葉を(つむ)ぐ。


「相手は国内最大級の犯罪組織の集まり。決して気を抜かず一人残らず殲滅(せんめつ)せよ! 」

「「「ハッ!!! 」」」


 そして腕を上にあげ――


「「「上限解放(オーバー・リミット)!!! 」」」


 上限四段階目に突入した王の剣が犯罪組織に(きば)をむく。


 ★

 

「そっちはどうだ? 」

「完了だ」

「仕込みは完璧だ」

「しかし思わねぇだろな。こんな作戦」


 国内でも一、二を争う犯罪組織の組織員が町人の服を着て王都を歩きながら話していた。

 彼らの(ふところ)にはカルボ王国から流れてきた超短な魔杖(まじょう)

 これのおかげで彼らは今回の作戦を比較的簡単に実行に移せる。


「ありきたりと言えばありきたりだが、やる奴なんてそれこそ戦争でもおきねぇとやらねぇよ」

「雇い主様は戦争をお望みで? 」

「さぁな。だが関係ねぇ。むしろ戦争ならば俺達は動きやすいってもんだ」

「確かに」


 今までのわだかまりがないかのように二人は話す。

 組織的ライバルであった彼らだが、逆に言うとそれほど相手のことを知り()くしている。

 お互いに今日とするならばこれ以上ない程に心強いものはないと、感じていた。

 歩きながら軽く闘技場の方を向く。


「あっちはどうなってるだろうな? 」

「さぁ。失敗してもこっちが成功すればいい」

「まさか二面(にめん)同時に殺戮(さつりく)が起きるなんて思わねぇだろな」


 はは、と軽く笑い前に進む。


「よしそろそろ……え? 」


 作戦実行を伝えようと隣を見るとそこには先ほどまでいた相方(あいかた)がいない。

 混乱し、訳も分からず彼は気を失った。


 一方国選(こくせん)武闘会会場付近。


「あいつらは行ったな」

「最低でもどれかが成功、最高は全て成功がいいんだが」

「流石にそれは無理があるだろ。戦力も()()いている」

「確かにその者が言うのには一理(いちり)ある。(くさ)っても相手はビストの正規(せいき)軍。やり合うだけばからしい」

「なに。最悪騒ぎだけ起こして逃げればいい。最低限の依頼達成にはなる」

「金にはならんがな」


 会場付近には物騒なことを口走る獣人族達が丸い闘技場を見上げてそう言っていた。

 彼らも犯罪組織の一員で闘技場を襲う(かか)りの一部だ。

 熱狂的な声が外に()れだす闘技場を見上げる彼らは歓声(かんせい)を聞きつつニヒルに笑う。


「この歓声(かんせい)が絶望の声に変わるとなると、ぞくぞくするね」

「……趣味(しゅみ)悪」

趣味(しゅみ)は人それぞれ。嗜好(しこう)に口を出すのは無粋(ぶすい)というものぞ? 」

「分かってるよ。拷問狂」


 嫌そうに(くちびる)をへの字にしつつ一人の獣人は会場を見て気合いを入れ直す。

 が……。


「え」


 気付いた時には空を飛んでいた。

 もちろん仲間はいない。


「ど……」


 どういうことだ? と言い終える前に眠りについた。


 同時刻その上空で一瞬だけ空を()う多くの有翼獣人が確認されたという。

 しかし都民達は「国選(こくせん)武闘会に駆り出されている有翼獣人だろう」と思い気にも()めなかったらしい。


 ★


 王都入り口付近にある宿にて。

 ここには各組織のリーダー達が顔を合わせて焦っていた。


「くそっ! 失敗だ! 」

「どういうことだ、いつ襲ってきた?! 」

「監視役によるといきなり姿を消したとの事」

「その監視を行っていた監視も消えたがな」


 激高(げきこう)する二人に冷静に分析する二人。

 冷静に分析しているものの彼ら二人の心中(しんちゅう)(おだ)やかではない。


「すぐにここから脱出するぞ! 」


 その一言で彼らは数十の部下を連れて王都を脱出した。


 王都から牛獣人の領地に向かう道へ(つな)がる街道。

 そこへ足を踏み入れ、今から撤退(てったい)しようかと思っていると後ろから悲鳴と血飛沫(ちしぶき)が飛んできた。


「クソ! もう追手(おって)か! 」

「剣を構えろ、冷静に対処しろ! 正規(せいき)軍とは言え所詮(しょせん)は少数! こちらに()がある! 」


 そう指揮(しき)しながら剣を王都の方へと向ける。

 自身も連れてきた魔法使いに強化を行ってもらい身体能力の底上げを行った。

 しかし飛んでくる血飛沫(ちしぶき)や悲鳴は、増していく。

 そして残り四人となった時、一人の獅子(しし)が見えた。


「……獣王の手のものか! 」


 そう言うも何も答えない。

 彼は単に犯罪者を見つめるのみ。

 見つめられた犯罪組織の者達に底知れぬ恐怖が襲う。


 彼らは犯罪者である。

 これまでに幾度(いくど)となく危険な依頼を受け死の瀬戸際(せとぎわ)ギリギリを生きてきた。

 しかしここまで一方的にやられた経験はなかった。

 人員が不足しているわけではない。

 むしろ失敗を予測したうえで手元に人材を残して脱出を試みた。


 国選(こくせん)武闘会会場と王都全域同時多発的な殺戮(さつりく)の発生というぶっ飛んだ依頼を受けながらも彼らは慎重(しんちょう)に計画を()った。

 依頼主からは「可能ならば貴賓(きひん)の誰かを」「ダメならば混乱だけでも」と言われているため混乱さえ起きればよかった。


 しかし現状、混乱は起きずに撤退(てったい)余儀(よぎ)なくされた。

 屈辱(くつじょく)()れながらの撤退(てったい)に追ってきたのはたった一人である。

 この異常な状況に怒りを(おぼ)えながらもどうすれば撤退(てったい)できるか考える。


「仕方ない! 最後の手段」


 そう言い小袋(アイテムバック)から一つの魔石を取り出して地面に叩きつけようとするが――灼熱(しゃくねつ)のような熱さを背に感じた。


「……来るのが遅かったじゃないか」

「こっちは向うを潰した後にこっちに来たんだ。このくらいは誤差(ごさ)だ」

「遅れて失敗すれば陛下に顔向けが出来んだろ……」

「間に合ったじゃないか。ならよしとしてくれ」


 その者は血を吐き膝をつく。

 誰が、と思い最後の力を振り(しぼ)り後ろを周りを見た。

 そこには今まで誰もいた気配がなかった場所には数十の(あら)ぶる馬と騎士達が組織長達の退路(たいろ)()っている。


「な……んだ、と……」


 今、勝敗(しょうはい)は決した。

ここまで如何だったでしょうか?


面白かった、続きが気になるなど少しでも思って頂けたら、是非ブックマークへの登録や広告下にある★評価をぽちっとよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新しく始めた異世界転生ものになります!
ハズレ枠の転生貧乏貴族は武姫を継承し最強へ至る
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ