第三百四十話 領地経営初心者王子様の苦労
「一応領内の一掃は出来たが」
「恐らくこれでも一部、でしょうね」
「……弁明の余地もございません」
ここは元ブルード伯爵家の屋敷の一室。
荒れたブルード伯の屋敷を改築しエレク王子用に改造したのだがそこには重苦しい雰囲気が漂っていた。
頭を抱えるエレク王子を筆頭に毅然としながらもどこか疲れた雰囲気を出す副官の一人ベレス・ドーマ、そしてこの地を治めていた領主の息子でありもう一人の副官でもあるドドリ・ブルードは申し訳なさそうにしていた。
「一体どれだけの犯罪組織がここにいるんだ? 」
「……この地に住んでおりましたが正直ここまでとは」
「それだけ必要とする者がいた、ということでしょう」
そう言いつつ彼らは思い返した。
そもそも彼らは領主代行としてこの地へ来たのだが、一方でこの地に住まう犯罪組織の一掃も目標とし気付かれぬように徐々に、そして大量に騎士のような人員を北の地へ送り込み組織の拠点を潰していった。
順調に潰していったのだが終わりが見えない。
拠点を潰し、組織も潰し、組織員を捕縛した。
それこそ数え切れないほどに。
だが終わりが見えない。この領地だけでもすでに数十は軽く超えている。
「しかもなんだこれは」
「違う領地に本拠地があることを仄めかしていますね」
「さてこれが本当なのやら、偽情報なのやら」
そう思いつつ全員何枚にも重なった書類の束を見た。
そこにかかれているのは拠点情報。
一見するとすべてがバラバラなのだが良く読み取り、解析すると違う場所を、少なくとも二つ示している。
一つは北の地のどこか。
もう一つは南東の方角のどこか。
「フェイク情報も考えつつも貴族達との繋がりだね」
「すでに決定している者も多数存在します。更に出ることが予想されるでしょう」
頭から手を離し副官達の方を見てそう言った。
今回の一件、というよりも貴族による貴族の暗殺失敗により繋がりを持つ者が大量捕縛された。
領地持ちの貴族もいれば王都で働く者まで多種多様。
しかし一貫して言えることは北の地で働いたことのある者ということだ。
これには王子も参った。
何せ予想をはるかに超える量の貴族が検挙されたのだ。
これからの領地運営に支障をきたしかねない。
そう判断したエレクはすぐに国に人員補給を要請。それに応じた国が各領地へ領主代行を送り領地を仮運営した。
結果として王城の人では少なくなりアンデリック達に回す人員が少なくなったのだがこれは彼らはあずかり知らない所。
「後は関税と食料か」
「食料に関してはどうにも」
「……長年の懸念材料ですので」
そう言いつつも腕を組み考える。
北の地の食料事情は他領と比べて厳しい。
これにはあまり農作物が育ちにくい土地柄であることに起因している。
精霊が少ないというわけではない。
ここにもきちんと精霊がいるがその種類が異なるだけで。
何はともあれここに住む者には死活問題である。
これを発端として『北方軍閥』として固まっているのだが、その場所が犯罪組織の根城だらけとなっていては元も子もない。
「何もないわけではないのですが」
「貴族達はそれを食料として見ていないだけ、か」
「面目ない」
「現実として領民はそれを食べているようで」
「ならば食べれないことは無いね」
「しかし彼らの口には合わないのでしょう」
はぁと溜息をつくエレクとベレスに肩身を狭くするドドリ。
「ならばそれを食べれるように技術指導員を呼ぶ、か」
「呼ぶのならばドラグ伯爵領からでしょうか? 」
「研究職としてはありだけど……。貴族に合わせるなら王城か」
「国は流石にこれ以上人員は出せないと思いますが。目下北の地の犯罪組織を摘発中です。これ以上の派遣要請は無理かと」
「ならば中立派閥から呼ぶか」
そう考えつつも資料を手に取る。
そこにかかれているのは派遣してもらった人員の数とかかった費用。
莫大である。
しかし国としても放っておけない事案でもあった。
なので今回は出してもらえた。
これ以上派遣要請するのも酷というものであろう。
少しそれを眺めながらふと思いつく。
「ならば直接シリル公爵の所へ行こうか」
「「え?!!! 」」
突然の言葉に驚く二人。
突如として異なる派閥、しかもその派閥長の所へ行こうというのだから無理もない。
「流石に公爵だ。無策なはずはない」
「いえ、しかし……」
「ちょっと様子見しにいくだけだから大丈夫、大丈夫」
大丈夫じゃないとおもうのですが、と言いかけ口を閉じた。
もう言っても無駄なことを知っているからである。
彼らは身支度をして、シリル公爵の所へ向かうのであった。
★
「……人の地を踏み荒らしおって! 」
「全くですな。礼儀というものを知らない」
「王子といえどこのような蛮行許されるはずがない」
とある屋敷の一室。
そこには北方貴族数名と明らかに貴族でない人物が机を囲っていた。
この貴族達は裏社会と繋がっている者達でとりわけその貢献度が高い。
もう一人は裏社会、とりわけ闇ギルドと呼ばれる犯罪組織集団の一組織長だ。
彼らがこうして集まっているのは他でもない。
最近多くの騎士達を従え強硬手段で犯罪組織を潰しまわっているエレク王子の件で話し合うためだ。
犯罪組織側もこれを快く思っていない。
商売敵とはいえかなりの数がやられた。次は自分達かもしれないのだ。
そんな時につてのある貴族から依頼をしたいと話が舞い込んだ。
ことの重大性から組織長が来ているわけなのだが、来てみれば王子への愚痴ばかり。
正直呆れてものが言えない。
早くここから脱出したい彼は王子に対する不敬ともとれる罵詈雑言飛び交う中、口を開いた。
「件の件はなかったこと、ということでよろしいのか? 」
怒気を込め強めに言ったためか罵詈雑言の嵐は止んだ。
逆に彼を引き留めようとそれぞれが口にする。
「ならいい。早く話を進めてくれ。ここにいるだけでも私はリスクを背負っているんだ」
「す、すまなかったね」
「そうだ。王子暗殺の件受けてくれるかね? 」
「……引き受けよう」
「はい。聞いちゃいました」
突然の声に全員が驚く。
貴族達は突然のことで固まったままだが犯罪組織側は戦闘準備をする。
しかし同時に分からない。
声はするものの誰もいない。気配もない。魔力感知にも引っ掛からない。
それゆえ困惑していた。
「じゃぁ皆さん後はよろしく」
と、言う声と同時に複数の騎士達がなだれ込むように入ってきた。
何が起こっているのかわからないまま彼らは裁判にかけられることとなった。
ここまで如何だったでしょうか?
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