第三百三十九話 メンバー選抜 二
王都から戻った俺達は向うと同様に使用人達を集めていた。
「今度獣王国ビストに国賓として行きます」
「「「え……」」」
おおっと、こっちは王都の屋敷とは違って戸惑っている。
フェルーナさんやガルムさんは少し落ち着いているが他の面々は唖然としていた。
少しの間、集まった広間に沈黙が流れ――
「こここ、国賓ってどういうことですかぁ! 」
「何でそんな話に?! 」
「ええええええ」
かなり騒がしくなった。
一部完全に壊れてしまった人もいるようで皆が戻るまで俺達は待った。
閑話休題。
「で、ビストに行くメンバーを決めようと思います」
「え、ビストに行けるのですか! 」
「やっほー! 旅行」
「いや、ちょい待て。全員じゃない」
「「「ええー」」」
ええー、ってこの屋敷の管理もあるんだ。
行けるはずがないじゃないか。
そう思いながらも椅子に座った状態で周りを見渡す。
「ガルムさんとフェルーナさんそしてフェナは決定してるんでよろしくお願いしますね」
「え、聞いてないんだが」
「今言いましたから」
「我々を、ということは何かしら理由があるのですか? 」
軽く睨むようにフェルーナさんが言う。
確かにそうだが睨まないでくれ。
普通に怖い。
「理由はビストが武を重んじる国柄だから。王都側と合わせても恐らく武人としては一番強いのでは? 」
「そんなこと……」
「そう言われたら行くしかねぇな! 」
フェルーナさんが困惑したところにガルムさんが快諾した。
ギロっとフェルーナさんがガルムさんを睨む。
ガルムさん。出発の時までにけがを癒しておいてくださいね。
「で、使用人なんだが」
「はいはい! 私行きたい」
「僭越ながら私がお手伝いを」
「ルナに任せようと思います」
行きたい、という二人を放置し決定を下す。
それを聞くと愕然とし崩れ落ちた。
「な、なんで私達じゃないんですか」
「ビスト、行きたかった」
「いや、この前アクアディアに行ったじゃないか。ルナは留守番だったから彼女を連れて行こうかと」
崩れ落ちた彼女達は涙目でこちらを見た後、恨めしそうな顔をしてルナを見る。
が、それを気にする様子もなくむしろ少しドヤっていた。
仲が……いいんだよな?
「……なぁちょっといいか? 」
ガルムさんが遠慮気味に手を上げてきた。
どうしたんだろうか。
「俺達がいない間この屋敷の護りはどうするんだ? 」
「ああ、それなら……」
説明しようと思ったらコンコンコンと玄関の方からノックの音が。
丁度来たみたいだ。
ルナに声をかけて中に入れるように言い、入ってきてもらう。
「おう、来たぜ」
「今日はご指名ありがとうございます」
「久しぶりだな、坊主。いやアンデリック様」
ルナに誘導され広間に入ってきたのは赤き宝石と守り人、そしてディルバートさんだ。
「ほう。冒険者を雇ったのか」
「確か屋敷の護衛も大丈夫だったと思うので」
「なるほど。そりゃぁいい」
この町の高位冒険者だ。彼らに屋敷を任していたら問題ないだろう。
ディルバートさんは今Cランクに上がっている。その堅実な仕事っぷりが評価されたらしい。
最高B、最低Cの高位冒険者集団。これだけ集めて喧嘩を売りに来る者はいないだろう。
まぁ喧嘩を売りに来ても最悪あの部屋に入るとセレスが用意した凶悪な罠が発動するからどの道大変な目にあうだろうが。
「配置は守り人の皆さんかモリト達に任せていいか? 」
「任せろ」
「大丈夫でございます」
通常は上位ランクの者がやるだろうが屋敷の防衛は集団戦だ。
ならば下位ランクではあるものの集団戦に強い守り人が指示するのもいいだろう。
そこら辺は当事者にまかせるとして。
「屋敷の人員配置も決めておこう」
指揮を執り、それぞれ配置を決めていった。
★
『今度は獣王国? 』
『どんなところかな? 』
『きっと獣人族がいっぱいよ。間違いないわ』
『もふもふ尻尾がいっぱい! 』
『あ、あまり失礼なことはしない方が』
夜。俺の寝室にて。
そこには屋敷にいる精霊達と天馬が集まっていた。
いつもながら透けているその姿は少し気味悪い。
「……連れて行かない、といいたいところだがきっとついて来るんだろうな」
『ふふ、好かれてますね』
「いや、好かれているんじゃなくて単に外に出たいだけじゃ? 」
『果たしてそうでしょうか。好きでもないのならここに居座る理由などないと思うのですが』
そう言われればそうだが、と俺は納得しようとしたダメな子。
ベットの上に大の字で寝て考える。
まぁいなくなったらそれはそれで寂しい気もするがもう少し自重して欲しいところである。
つい先日もエルベルに酷い目に合わされたというのにまた騒ぐ気満々なようだ。
良く言うと切り替えが早い。悪く言うと学習能力がない。
これはまたエルベルに泣かされるだろうな、と思いながらも天井を見る。
『ここ意外の獣人族って何食べてんだろう? 』
『精霊でしょうか? 』
『『『怖っ!!! 』』』
おい天馬、なに恐ろしい事言ってるんだ!
精霊を食らう存在なんていてたまるか!
神獣の言葉ということもあって恐怖する精霊達とそれを見て満悦な表情を浮かべる天馬。
恐ろしい馬や、本当に恐ろしい馬や。
『まぁそれは冗談として、恐らく精霊術師はいるでしょうね』
『やっぱりいるのかぁ』
『ええ。といっても基本的に加護というのは精霊が気まぐれにするもの。なのでどの種族にも同じくらいの頻度で加護持ちは現れるとは思うのですが……』
「その土地にいる精霊の数の問題か」
それに軽く頷く白馬。
その土地にいる精霊がすくなければそれに応じて加護を与える精霊が少ないことになる。
そして総じてそう言う場所はモンスターの出現が多いようだ。
逆にモンスターが多いからといって精霊の数が少ないとは限らない。
聞くところによると、精霊の数が少ないとそこには魔境のようなスポットができやすい事が原因なようだ。
逆の場合は単なる自然の摂理。モンスターを倒さず放置しておくと居心地が悪くなった精霊達は徐々に数を減らしていくだろうがすぐにではないみたいで。
こればっかりは専門家に聞かないとわからないが、この前セレスと天馬が話しているのを総括するとこんな感じだろう。
『なにはともあれ食べられないようにしないといけませんね』
『ね、ねぇ。どんなモンスターか……。教えて』
『確か精霊喰らい、と当時の者は呼んでいましたね』
『『『ひぇぇぇぇぇ』』』
おい、それらしい嘘を教えるのは止めろ。
そう思いつつも俺は瞳を閉じるのであった。
★
「皆さん。これからよろしくお願いします」
「「「よろしくお願いします!!! 」」」
あれから王都へ移動し王城前。
俺達はそれぞれ準備を終え移動していた。
馬車等はどうやら向こうが用意してくれるらしくここへ俺達を運んだ馬車はもうすでに帰っている。
が、俺はもうこの時点で帰りたくなっていた。
「なんだ、これ」
「馬車ですね」
「いやセレス。馬車なのはわかるが」
「なにせ国賓だからね。それ相応の馬車で行かないと向こうにも失礼だよ」
セレスとケイロンが言う中、我が屋敷の武人達は顔を少し青くしていた。
「ごごご、ご主人様。これを引かなければならないのですか」
「……みたいだな」
「みたいだな、じゃありませんよぉ! こんな立派な馬車。無理ですよぉ! 」
ユピがしがみついて泣いて無理という。
気持ちはわからんでもない。同じ状況なら俺もそう思うだろう。
なぜこのようなことになっているのか。
そう。人員不足を理由に馬車の箱と馬は用意されたもののそれを操るのはこちらの武人でということだった。
我が屋敷の武官は名家の武官を引っ張ってきた者が殆どだ。
だがその武官ですら顔を青くするほどの馬車。
これ道中何かあって傷でもつけたら、と思うと俺も気が気でない。
「……ユピ。この世は非情だ。これも経験と思って……諦めてくれ」
「そんなぁ~」
「では、参りましょう」
ガラス公爵の一言で俺達は我に帰りそれぞれ位置につく。
そして獣王国ビストへの旅路が始まった。
ここまで如何だったでしょうか?
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