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種族の輪 《サークル》 ~精霊術師は今日も巻き込まれる~  作者: 蒼田
第九章 心強き婚約者 下 その陰謀に終止符を!
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第三百三十三話 リン vs 金銀夫妻

 バジルの町の東側にある林と対面に広がる草原。

 ここはいつも平和である。

 何故ならば少し行けば行商人や旅人達が気ままに歩き、馬車を走らせ町へ行くからである。しかもこの地は――最近のモンスター暴走スタンピードや魔人襲来を除けば――モンスターによる被害が少なく、出現も少ない。

 精々東側の林が騒がしくなるくらいだ。


 だが、今その平穏は崩れた。

 しかも人為的に。


「ちぃ! 早ぇ! 」

草拘束(グラス・バインド)


 銀狼人(フェンリラー)化したガルムさんが高速で移動しながらリンへ剣を向けるが当たらない。

 超速で移動するリンを捉えるようにフェルーナさんが魔法で拘束を試みるが伸びてくる草を回避しつつ攻勢にでた。


「ラァ! 」


 ゴン!


 リンの拳とガルムさんの剣がぶつかり合う。

 単純なパンチ一撃だが剣を縦にしてそれを受けたガルムさんは少し後退。


「ララララララァ!!! 」

「ぐ……おぉ」

「貴方、下がりなさい。魔硬散弾(バレット)


 連撃と重ねを合わせたリンの猛攻が剣を変形させていく。

 ガルムさんは剣を盾にして持ちこたえ間に銀狼人(フェンリラー)化したフェルーナさんが絶え間なく魔弾を放つ。

 リンはその脅威を肌で感じ取ったのかすぐに距離を取り後退する。


 どうやら攻守交替したようだ。


 ★


「……殿下ってあんなに強かったのか? 」

「モリト。悲しいがこれは現実なようだぜ」

「絶対にCランクじゃないわ」

「……ギルド。ランク詐称問題」


 赤き宝石(ルビア)の面々が口々に呟いていた。

 その気持ちは分からなくもないし、実際問題リンは強い。

 銀狼人(フェンリラー)化した二人相手に互角以上のやり取りをしているのだ。


上限解放オーバー・リミットは本当にあったのですね」

「国の秘儀かなんかだと思ってたんだ、外したか」

「もしかしてAランクに上がる条件って上限解放オーバー・リミットか? 」

「……流石に無い。恐らくそれに準じた力量」


 少し虚ろな目をしてリン達を見る四人。

 やはりあまり上限解放オーバー・リミットを使う人物は少ないようだ。

 俺の周りが異常なだけで。


 ドドドドドドドド!!!


 現実逃避は止めよう。

 赤き宝石(ルビア)からずらして音の方を向く。

 そこには超速で魔弾を放つフェルーナさんとそれをギリギリで回避するリンの姿があった。


「攻めあぐねているね」

「流石に上限解放(オーバー・リミット)状態で放たれる超速の魔弾は早いですね。ワタクシならば避けれる自信がありません。対策は練りますが」

「両者とも中々に速いのぉ」

「前衛と後衛がきちんと役割を果たしているね。最初にあった戸惑いみたいなものもなくなってるし」

「……速度に合わせるよりも、他で代用した方が良いのか? 武器か、武技か」


 俺達はそれぞれ分析し自分達ならどう対応するか考えていた。

 ちらりとこちらをうかがう視線を感じたのでその方向を見ると赤き宝石(ルビア)の人達がこっちを見ていた。


「どうしたんだ? モリト」

「いや……。あれ見て対応できると思っているお前達がスゲーと思っただけだ」


 虚ろな瞳を向けてモリトはそう言った。

 軽く爆音ともとれる打撃音がする方を見るとフェルーナさんが張った強固な物理結界に連打するリンの姿が。

 確かにすごい。

 フェルーナさんの物理結界もそうだがそれを壊さんとばかりの勢いのリンも凄い。

 だが、と思いモリトの方へ向き直し口を開いた。


「対応できなければパーティーがやられるからな」

「そっか。いや、そうだよな」


 と、少し考える素振りを見せるモリト。

 この戦闘を見て何か思うところがあったのだろうか?

 少し不思議に思いながらもメンバーの方へ顔を向けた。


「流石にあの一撃は重そうですわ」

「セレスから見てもそう見えるのか? 」

「ええ。リンさんの才能もあるのでしょうが、流石は獅子獣人と言ったところです。一撃の破壊力が他の獣人族とは桁違い。アンデリック、もうそろそろ結界が壊れますわよ」


 セレスがそう言うと同時にパリン! という音を立てて結界が壊れた。

 ……。あれ対物理結界だよな?

 対物理結界って壊れるものなのか?


 そう思いながらもいい笑顔を浮かべるリンが見えた。

 戦いを心底楽しんでいるようで。


「速さは、ガルムさんには届かないようだね」

「十分に速いがな」


 ケイロンの言葉が聞こえる中リンとガルムさんが血を蹴り陥没させながら移動する。

 草原はめくりあげられてもはや面影がない。

 土が巻き上がったせいで俺はあまり分からないがケイロンやセレス達はどうにかして感知しているようだ。

 セレスの方を見ると手に魔導書が、ケイロンの方を見ると手に魔剣が握られている。


「砂とか土で視えないが……。二人共どうやって見てるんだ? 」

「ワタクシは透視(クリアボランス)と言う魔法を」

「僕もだよ」


 何その夢のような魔法!

 ちょっと後で教えて。


「言っておきますが、教えませんからね? 」

「ハハハ。ナニモイッテナイジャナイカ」

「考えてることが顔の出てるよ。全くこれだから男の人は」


 くそっ! 顔に出てたか!

 後で国の図書館にでも行こう。


「……終わったようですね」

「どっちが勝った? 」

「リンさんの様です」

「と、言うか相打ちな感じ? 」

「相打ち? 」

「これ以上は危ないとフェルーナさんが止めたようで」

「そこまで白熱していたのか?! 」

「そりゃぁもう、嬉々として拳を振るってたからね」

「ガルムさんも途中から遠慮えんりょが無くなったのかボコボコの大剣で殴るように戦っていました」


 それ見たかったぁぁぁ!

 何で俺には透視(クリアボランス)が使えないんだよ!

 

 心の中で血の涙を出しながらも砂塵さじんがどんどんと晴れていく。

 そこにはやり切ったのか満面の笑みを浮かべながらこちらに向かってくるリンと疲労困憊のガルムさんとフェルーナさんが見えてきた。


「……大丈夫ですか? 」

「?! そこは婚約者であるリンを、いえ私を心配するところでは?! 」

「どう見ても加害者と被害者だろ、これ」


 こちらまで駆け寄り抗議するリン。

 見上げてくるそれは可愛らしいのだが彼女の後ろからのそのそとやって来る二人が台無しにしている。


 確かにリンの言う通り彼女に声をかけるべき場面であっただろう。

 他の婚約者から厳しい目線が刺さっていることから間違いない。

 だが上限解放(オーバー・リミット)が切れた影響に加えて体中傷だらけで歩いて来る二人を見ると、どうしてかリンではなく奥の金銀夫妻に声をかけてしまうのは仕方ないだろう。


「久しぶりに全力を出して勝てない相手と戦ったぜ」

「本当にお強い」

「まだまだ強い方はいらっしゃいますよ? 」


 振り返り無慈悲な言葉を告げるリン。

 どっと疲れた顔でそのまま座り込み仲良く二人で背中合わせになったガルムさんとフェルーナさん。

 そのままこちらにまたもや振り笑顔を向けた。


「ではエリシャさん。戦い(やり)ましょう」

「うむ。妾の勇姿、しかと見るがいい!!! 」


 バサッと大きく羽根を広げて真祖の吸血鬼は獅子獣人の姫に立ちはだかった。

ここまで如何だったでしょうか?


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新しく始めた異世界転生ものになります!
ハズレ枠の転生貧乏貴族は武姫を継承し最強へ至る
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