第三百四話 種族の輪 《サークル》への依頼 一 合体技
「……二人は大丈夫だろうか? 」
「父上と兄上? 」
広間に置かれた豪華なソファーに座り俺は頷き、ケイロンが苦笑いする。
「多分大丈夫だよ。母上に折檻されるのはいつものことだから」
「それは、大丈夫なのか? 」
「程度によるけど……」
前のソファーに座るケイロンはふと少し考える素振りをし、何かに気が付いたかのようにこちらを向いた。
「そう言えば食事に出てこないレベルは今までなかったかも」
大事じゃないか!
全然大丈夫じゃない。
と、言うかケイロン。
俺にそんなことをしないよな? な。
「確かに身内になるとはいえ他家の食事に当主が現れないとなると問題ですね」
「俺は気にしないがな」
「アンデリックは、呼ぶときに気にしてくださいね」
「もちろん」
呼ぶことなんて殆どないと思うけどな。
と、思いながらケイロンの隣を見て、その更に向こう側を見る。
「あれは……。何やってんだ? 」
ん? と二人が振り返りそれを見ると少し彼女達が固まった。
「……スミナ。あれはエルベルとエリシャの最近の流行なのか? 」
「わ、わかんねぇ。だが今日突然「「降りてきたぁぁぁ!!! 」」と言いながらああやってんだ。一体何が何やら」
「まほー! 」
「レイ、そうだな魔法だな。ちょっと特殊な魔法だな。だけどレイは真似しないようにね」
「うん! 」
「普通に考えると非効率な気もするのですが……。いえ、出力を二つに分け同調することが出来れば融合魔法が可能になるのでしょうか??? 」
「二人が使っているのは精霊魔法だからな。分からない」
俺達の目の前で行われているのはエルベルとエリシャがお互いに弓と手を向け精霊魔法を放っている光景だった。
「うぉぉぉぉ!! 圧縮、圧縮!!! 」
「ぬぉぉぉぉ!! 融合!!! 」
二人が揃って精霊魔法を部屋の中で使っているせいかそこから爆風が起こり始めた。
爆風の中すかさずセレスが対魔法結界を展開。
触媒なしに、凄いな……、って感心している場合じゃない!
これ、まずいんじゃないか?
「アンデリック。あれは精霊魔法です。正直、対魔法結界で防ぎきれるか分かりません。精霊魔法で結界を! 」
『なら僕に任せて! ケイロン! 』
「ヒカル?! 」
セレスが助けを求めるとケイロンの中から声がする。
目を向けると案の定『光の精霊』ことヒカルがそこから出てきた。
どこか前見た時よりも成長している気がするが……。まぁいいか。
でもどうするつもりだ?
『ケイロン。集中して。巡らせて。思い浮かべて。全てを弾く結界を』
「す、全てを弾く結界?! 」
『そんなに驚くようなものじゃなくてもいいよ。思い浮かぶ中で一番硬そうなものとか強そうなものとか』
「強そうなもの」
『そうそう。で、それをあの――渦巻いている所を中心に丸い壁を作るようにイメージして』
「丸い壁」
『そうそう。あとキラキラしてたらいいかな』
いや、最後のは単なるヒカルの趣味じゃないか?
そう思っていると二人を中心に光の壁が出来上がった。
「出来た! 」
『やるじゃん』
「流石ケイロンだな」
「流石ですね」
「えへへ……」
『あ、ちょっと集中切らさないで! 解除されちゃう! 』
それを聞き「あわわ」と両手を前にして慌てながら光の精霊魔法を維持した。
と、同時に異変が起こる。
「「うぉぉぉぉ!!! 漆黒の超重力風魔球」」
二人を中心に巻き起こる爆風は結界に阻まれ彼女達以外に影響を及ぼさないまま、一か所に集中し始めた。
どんどんとエリシャが放つ闇の精霊魔法をエルベルの風の精霊魔法が圧縮融合し、その大きさを縮めていく。
更に更にと小さくなると一つの小さな粒のようになった。
そして――
ドゴン!!!
と、いう音を立てて爆散した。
パリン!
と、セレスが張った対魔法結界が壊れ黒い爆風が光り輝く壁に衝突する。
衝突したところが更に渦巻き、それが中心となって風を起こす。
爆風とその異常な威力と効果の精霊魔法を見て唖然としながら目を元凶の元へやると、エルベルとエリシャが横たわっていた。
「………………なんだこりゃ」
まだ新たに出現した風が治まらない中、目を回す二人を見下ろした。
★
完全に爆風が治まった後、ゆっくりとケイロンが光の結界を解く。
しかしまだ安全ではないかもしれない。
あれだけの威力だ。何か余波があるかもだ。
「大丈夫かな」
「つついてみるしかないだろ」
「あれだけの威力を直で受けたのです。無事な方がおかしいでしょう」
「「はっ!!! 」」
「「「え??? 」」」
俺達がそう言っているとエルベルとエリシャは起き上がった。
「あれを受けて無事なのか?! 」
「ふぅ、危なかったのじゃ」
「同胞よ。助かった」
「なんのこれしき」
「一体……。何をしたんだ? 」
「影で妾とエルベルを包み衝撃から身を護ったのじゃ。少しタイミングを間違えてちょっと衝撃をうけたがの」
カカ、と笑う少女に顔を見ながらジト目で見つめる俺達。
「どうだ、すごか……ひぃ! 」
「さ、最高の威力じゃったろ?! 怒ることもあるまい」
そうですね。
ここが他家の屋敷の中じゃなかったら「また何かしてる」くらいで終わったかもね。
でもね、でもね。
今回はそうはいかないんだよ。
「エリシャ、エルベル。この惨状、どうするつもりだ? 」
「「……」」
俺が言うと顔をそむける二人。
「これは……。買い替えだね」
「咄嗟にケイロンが光の壁を作ったのが幸いしました。なかったらこの部屋ごと吹き飛んでましたね」
「どれだけ人に迷惑をかければ気が済むんだ、このクソエルフ! 」
「流石にこれは擁護できませんね」
「絨毯は……。まさかこれ全部か? 」
「一部だけ修繕ではダメでしょうね」
俺達が次々に破損個所を見てまわる。
今回はケイロンのファインプレーで何とかなったがこれを毎回やるのなら、他の貴族家に行く時は考えないといけないな。
あ、壺も。
青い顔の二人を見つつも、直さないといけない場所や買い換えないといけない場所を確認していく中、扉からノックの音がした。
「失礼します。ジュリア様がお呼びです」
ジュリア様が? 扉の向こう側からそう聞こえるも「音が聞こえてしまったのか」と内心冷や汗がドバドバ出て気が気でない。
しかし返事をしないといけないので行くことを伝え、扉を開けてもらう。
「では。ごあ、ん……ない」
扉から覗くその顔が現実を拒絶しようとしているように感じた。
うん。気持ちは、分かる。
誠に申し訳ありませんでした!!!
ここまで如何だったでしょうか?
面白かった、続きが気になるなど少しでも思って頂けたら、是非ブックマークへの登録や広告下にある★評価をぽちっとよろしくお願いします。




