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種族の輪 《サークル》 ~精霊術師は今日も巻き込まれる~  作者: 蒼田
第八章 心強き婚約者 中 ドラグ伯爵領に巣くう闇
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第二百九十九話 さぁ、自白させよう 二

「おやおや、珍しいお客さんだ」

「ゼノス殿。知っているとは思うが」

「分かっているとも、分かっているとも」


 パムの隣には白衣(はくい)のようなものを着た魔族の男性がいた。

 彼の(ひたい)には一つの角があり髪は黒。瞳の色も黒だが……ケイロンとは違いどこか(あや)しげな雰囲気を(まと)っている。


「まずは自己紹介を。私はこの領地で情報官をしている一人でゼノスと(もう)します。一応家名もございますが、名乗るほどの家名でもないのでご容赦(ようしゃ)を」

「ご丁寧(ていねい)ありがとうございます。私はアンデリック・セグ子爵、と(もう)します」


 そう言い出された手を(にぎ)り挨拶をする。

 (あや)しげに見えたのは最初だけで笑う姿にどこか親しみを(おぼ)えた。


「セグ子爵閣下にはお聞きしたいことが山ほどあるのですが時間は有限(ゆうげん)。こちらのパムから用向(ようむき)きは聞いております故さっそく実行していただいても? 」

(わらわ)の出番じゃな」


 そう言いエリシャが少し前にでた。

 するとゼノスが少し体を硬直させる。


「か、かなり高位の魔族の方とお見受けしますが……。あ、貴方が行うので? 」

「うむ」


 左様ですか、と言ったゼノスにはどこか納得したような表情が浮かんだ。


「もしかして魔族って闇属性魔法に適正(てきせい)が高かったりする? 」

「ええ。と言っても魔族でも一部ですが、他の種族よりかは、と言ったところでしょうか」


 なるほどな。

 もしかしたら闇の精霊であるミルがエリシャについているのもそう言ったことが関係しているのかもしれない。

 自前(じまえ)の闇の精霊特化型龍脈(りゅうみゃく)、みたいな感じで。


「では、始めよう」

僭越(せんえつ)ながら私が起こしましょう。起きろ(アウェイクン)

「ぬ。光属性を使えるとは」

「はは。これでも職業(がら)使えないと不自由ですので必死で習得(しゅうとく)しました」


 ゼノスが(とな)えると三人を光り輝く魔法陣が(おお)い、すり抜けた。それと同時にピクリと動き出す。

 苦笑いしているゼノスを見る限り魔族はあまり光属性魔法は得意ではないようだ。

 実際にエリシャが光属性魔法を使っている所を見たことないし、恐らくそうなのだろう。


 少しづつ彼らが動き――痛みに苦しみだした。


「ぐぉぉ! 」

「いてぇぇぇぇぇぇ!!! 」


「あ、痛み止めのような魔法をかけてなかった」

「そのようなもの罪人に必要ありません」

「だが……。この状態で聞けるのか? 」

「大丈夫じゃ。自白(じはく)している間は痛みを忘れて問いに答える」

「なにその恐ろしい魔法」

「恐ろしいとは何じゃ。一時的にでも痛みを忘れるのじゃ。慈愛(じはく)()ちとろ? 」

「じ、自白(じはく)?! 」


 俺達の言葉に一早く反応したのは比較的けがを追っていない彼らの上位者だった。

 俺達の方にキリッと顔を向け、言う。


「どんな拷問(ごうもん)を受けても自白(じはく)なんてしないぞ! 」

「いや、もうすでに「何かしてますよ」と自白(じはく)しているものでは? 」


 俺の鋭い一撃を受けて固まった。

 やってしまった、という顔をしている。


 この場合「あそこにいただけだ」等と、答えるのが正解に近い気がするんだが。

 自白(じはく)をしないと自ら言う時点でやましい事をしていたことを自白(じはく)している。

 最初から(あや)しさ全開だが。


「くっ! ならば一層のこと殺せ! 」

「そんな勿体(もったい)ない事をするはずがないでしょう」

「うむ。その通りじゃ」


 これじゃどっちが犯罪者かわからないが、大事な情報源。

 しかも痛みで悲鳴を上げていない特典付き。

 完全悪役のゼノスとエリシャの瞳がギラリとひかり犯罪人を見つめていた。


 そして……。


「では始めるかの。我が問いに答えよ。開心(オープン・マインド)


 黒い魔法陣が奴を(おお)うとゼノスやパムの言葉に答えていった。


 ★


「あー胸糞(むなくそ)悪い」

「あれは看過(かんか)できませんね」

「やった(わらわ)もそうじゃが……。予想以上の答えが出てしまったの」


 俺達は地下の上の休憩室のようなところまで上がり、休んでいた。


 俺達とゼノスやパムがいる中、語られた言葉は途轍(とてつ)もない事だった。

 まず何でも屋(ルール・ブレイカー)という組織に(ぞく)していること。

 次に訓練と(しょう)して広大な伯爵家の目が届かない村でヌビル達を送り込み襲ったこと。

 そしてある組織の指示により俺達の馬車を襲うように指示された事が明らかになった。


「よく、抑えたな」

「……うん」


 震えるケイロンの手に軽く手を添える。

 少しは治まったようだ。

 責任感の強いケイロンのことだ。きっと不甲斐(ふがい)なさを感じているに違いない。


「私共はすぐさま伯爵閣下に連絡をいたしますのでこれにて」


 そう言いパムは出て行った。

 残された俺達だがどこかやるせない気持ちでいっぱいだった。

 では防げたのか、と言われれば防げなかっただろう。


「気に()む必要はない、といってもきっとお気になさるのでしょうね。なのでせめてゆっくりと休憩をとっていただければ」


 そう言い軽く会釈(えしゃく)をしてゼノスは罪人達が残る元いた場所へ戻っていった。


 少々やるせなさを感じながら俺は体の中の空気を入れ替えるために外に出た。

 まだあまり時間は立っておらず昼過ぎのようだ。

 日は高い。


 小屋(こや)を出るとそこは思った以上に広い砂の道が伸びている。


「パパ? 」

「お、レイもいたのか」

「うん」

「悪いけど(さや)でゆっくりしていてくれるかい? 」

「うん」


 ニカっと笑い上を向くレイを持ち上げ剣に戻す。

 ここはドラグ伯爵領。


 少し窮屈(きゅうくつ)かもしれないが(さや)で大人しくしてもらおう。

 人型を取れる剣なんて知られたらそれこそ大騒ぎになる。

 レイを狙う者も出てくるかもしれない。気を付けなければ。


「おい。あそこにいるのはさっき入ってたケイロン様の御付(おつ)きじゃねぇか? 」

「はは。ケイロン様も物好きだ」


 前を向くとそこには騎士風の兵士が数名いた。

 ああ、ここに入る時にいたガラの悪そうな奴らか。


「あん? なんだ、てめぇ。その顔は」

陰気(いんき)くせぇ。おめぇなんかより俺達の方がケイロン様の隣に相応(ふさわ)しい」


 ゲハハハハ、と不快(ふかい)な笑い声が聞こえる。

 が、あのエカテーほどではないな。

 不快(ふかい)さのレベルが足りない。


「……。急に人を馬鹿にしたような顔をしやがって」

「やっちまうか? 」

「だがそれはまずくねぇか? 」

「大丈夫だって。訓練って言ってりゃ」


 彼らにはどうも俺は貴族家当主には見えないらしい。

 いや俺が俺を見ても多分見えないだろうが。


「おい。こっち来いよ。しごいてやる」

「え……。俺そっちの気はないのですが」


「バッ! 馬鹿!!! ちげぇ! 」

「ぶっ殺してやる」

「はは、お前馬鹿にされてやんの」

「こいつやっぱり()める」

「俺も少しイラついていたので……。(さいわ)いです」


 俺は彼らについて行き訓練場へ向かった。

ここまで如何だったでしょうか?


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