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種族の輪 《サークル》 ~精霊術師は今日も巻き込まれる~  作者: 蒼田
第四章 カルボ王国の激震 上 エレク第一王子誕生祭
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第百五十四話 新たな日常、新たな関係

 拝啓(はいけい)、お父様、お母様。


 いかがお()ごしでしょうか。病気になっていないでしょうか、食事をきちんととっているでしょうか。何が起こるかわからない昨今、私アンデリックは心配です。

 何が起こるかわからないと言えば最近私は非常に迷惑光栄なことに子爵(こしゃく)位を拝命(はいめい)しました。それに加え隣国の王女様を(めと)る運びになりましたとても充実(じゅうじつ)した毎日を送っております。いつかは帰らないといけないとは考えたおりましたが思っていたよりも早く帰りそうでございます。

 わた……


「なぁそろそろ現実逃避(げんじつとうひ)は止めねぇか? 」

「何を言っているのかい、スミナ君。そのようなこと身に(おぼ)えないな」

「王女様を(ひざ)にのせて頭を()でながら遠い目をして親に近況を報告しても何も変わらねぇぞ? 」


 はぁ、と溜息(ためいき)をつきながら俺に告げ彼女は「部屋を見に行く」と言い()ってしまった。


 リンが俺と婚約状態であることをあどけない顔で()げた。

 ショックを受けた俺は(くず)れ落ちたのだが、彼女が仔猫(こねこ)のように俺の(ひざ)に乗っかった。

 (もと)より俺の妹のように小さく軽い体、そしてしなやかな体躯(たいく)(あい)まって丸くなるとすっぽりと胡坐(あぐら)の上に収まってしまう。

 何が起こっているのか分からず放心状態だったがいつの()にか俺の手は彼女の頭を()でて金色の髪をさすっていたようだ。

 これが妹補正(ほせい)というものか?!

 そしてリンもリンで温かく気持ちがいいのかウトウトしながら(まぶた)で青い瞳を閉じかけている。


「……デリク。犯罪」

「流石にそれは擁護(ようご)できませんわ」

「何が犯罪なんだ? 」

「子供相手に欲情(よくじょう)するところだよ、エルベル」

欲情(よくじょう)してない! 」

「リンは十二の大人ですよ。大丈夫です。ふぁぁ……」

「ちょ、余計(よけい)なことを」

「「さいてー」」


 ケイロンとセレスから今までにないほどの冷たい目線を()びてしまった。

 俺は被害者だ。

 何か(さっ)した様子で屋敷(やしき)の外に出ようとするな、エルベル!

 絶対憲兵団の詰め所に行こうとしているだろ。


「本当にどうするのですか? 」

「どうするの? 知りたいなぁ、僕は」


 カルボ王国に来てからの疲れが出たのか、本当にそのまま寝てしまったリンを三階の彼女の部屋 (予定)に連れて行きベットに寝かせた。

 (さいわ)いこの屋敷(やしき)には最低限の家具(かぐ)が置いてあるようだ。

 他にもクローゼットや机も見られる。

 もしかしたらリンが来ることが決定した段階で王国側が用意したのかもしれない。


 そのような中、俺の前で異常なまでの威圧を放つケイロンとセレスが。

 今回は完全にとばっちりだがどうも俺の答えを聞くまでは正座状態から解放さしてくれないようだ。

 素直に答えよう。


(めと)ります! 」

「デリクはいいの? それで」

「流されたような感じになってますが」


 (もと)より拒否権がない婚約だ。

 ドラゴニカ王国とは(こと)なり(ちょく)で外交問題に発展(はってん)しそうだ。

 外交問題にならなくても獣王国で爵位を与える用意をしているとの事だらか獣王国としてビスト内で処理されるかもしれない。


「政治的な話は置いておいて、何かこう……放っておけない感じが」

「「……犯罪」」

「違う! どちらかと言うと、妹のような感じかな。実家に妹がいたからな」


 必死に弁明(べんめい)した。

 そうでなければ犯罪者一直線(いっちょくせん)だ。

 ま、妹のような感じがするのは本当だ。

 保護欲を()られるというのだろうか。


「……デリクがそういうなら反対しないよ」

「ワタクシ達も頑張(がんば)らないと……ですね」

「うん。そうだね」

「何が? 」

「「何でもない」」


 それだけ言うとケイロンとセレスは三階の自室を確保(かくほ)しに行った。


「さて、俺も確認を」


 そう独り()広間(ひろま)から出る。


 この屋敷(やしき)は三階まであるようだ。

 一階は応接室や広間(ひろま)台所(だいどころ)に食堂が二つ等々食事をとったり人を(まね)き入れたりする部屋となっている。

 二階は部屋がいっぱいだ。主に寝室。一つ一つの部屋はそこまで大きくない代わりに数が多い。恐らくお客さんを(まね)き入れる為の部屋のようだ。部屋によっては軽食を取るための部屋もあるようで。ここは使用人達の部屋にしよう。

 三階は二階よりも少しランクの高い部屋となっていた。この階層の部屋だけ調度品(ちょうどひん)(あらかじ)め置いてあり「ここに住んでね」と自己主張していた。恐らく前もって準備されたのだろう。この階層はギルドホームのような感じにしようか。それがいい。


 三階の廊下(ろうか)を行く。

 ある所には絵画(かいが)(かざ)られ、ある所には光球(ライト)刻印(こくいん)されたマジックアイテムがあった。

 執務室、書斎(しょさい)、自分の部屋にメンバーの部屋。


 俺の部屋と指定された (半ば強制)部屋に立ち止まり、ノブを回して中に入ると――


『おっそーい』

『遅いから来ちゃった。テヘ』

『ダメだよつっちー。それだと私達が悪者になっちゃう』

真面目(まじめ)だね、みーちゃん。このくらいで怒らないわよ』


 そこには元素四精霊がいた。


「……エルベルを呼んでやろうか。この不法侵入者」

『『『やめて!!! 』』』


 いつの()にか俺の部屋に上がり込んでいた精霊達にジト目を送りながら、死刑宣告ともとれることを言ってみた。

 全員が声を(かさ)ねるが、不法侵入者に慈悲(じひ)はない。

 最初の一発目が重要なのだ。

 ガツンと言ってやらないと。


「あのな。なんでここにいる? 」

『気配を辿(たど)ったら思ったよりも近くにいたからさ』

『それできちゃったということさ、ベイベー』

『悪いのは私達じゃない。近くに屋敷(やしき)を持った君、さ』

『私は止めました』

『『『裏切り者! 』』』


 はぁと溜息(ためいき)をつきながらも(とびら)を閉め中に入る。

 (れい)()れず家具が(そろ)っている。

 何故か巨大なベットが置かれておりその隣には机が。

 少し大きめの(まど)とクローゼットに姿見(すがたみ)までも(そろ)っていた。


『いいところに住むんだね』

『この金持ちめ! 』


 ひ、否定できねぇ。

 言われるとイラっと来るが、本当の事なので何も言えない。

 ふわふわとあちこち飛び回る彼女達を見ながら仕返しとばかりに聞いてやる。


「エルベルもこの屋敷(やしき)にいる訳だが、大丈夫なのか? 気配とか」

『わ、私達はエリートだから大丈夫! 』

『そう。年の(こう)とかじゃないからね! 』

『あの後気配を消す練習をひたすらしたのよ』

『私達にしては、頑張った。おかげで他の精霊からも感知(かんち)できなくなった』

『『『これが精霊の全力全開! ミスディレクションよ! 』』』

「精霊様の気配げばふっ! 」

『『『ひいっ!!! 』』』


 彼女達がドヤ顔していたらエルベルの声が聞こえドン! と(とびら)衝突(しょうとつ)する音が聞こえた。

 気配、消せてねぇじゃねぇか!

 何がミスディレクションだ。


 あ~、と(ひたい)に手をやり上を向く。

 先が思いやられる中、俺達の新しい日常(にちじょう)が始まった。

お読みいただきありがとうございます。

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新しく始めた異世界転生ものになります!
ハズレ枠の転生貧乏貴族は武姫を継承し最強へ至る
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