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種族の輪 《サークル》 ~精霊術師は今日も巻き込まれる~  作者: 蒼田
第四章 カルボ王国の激震 上 エレク第一王子誕生祭
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第百二十七話 王都のアクアディア子爵家別荘へようこそ! 一

「なあセレスさんや。なんでこの屋敷(やしき)はこんなに大きいのかな? 」

「あらやだアンデリックさん。それは貴族だからですよ」


「なあセレスさんや。なんでこの屋敷(やしき)はこんなに(きら)びやかなのかな? 」

「あらやだアンデリックさん。それは貴族だからですよ」


「なあセレスさんや。なんでこの屋敷(やしき)からは湯気(ゆげ)が立ち上っているのかな? 」

「あらやだアンデリックさん。それは貴族だからですよ」


「「そんなわけあるかぁぁぁぁぁ!!! 」」


 俺とスミナが盛大(せいだい)()っ込んだ。


「なんでも貴族だからでは()まされないぞ?! 」

「子爵家なんだよな?! なんでドラグ伯爵家よりも上の階層(かいそう)にあってしかも湯気(ゆげ)?! ないだろ……」

「そのようなことはありません。何事(なにごと)にも例外というものはあるので。しかし、そうですね。お答えできる範囲でお話するのであれば湯気(ゆげ)に関しては今屋敷(やしき)の外側に設置した水を温めているからでしょう」

「い、今やっているのか?! 」

「どれだけ金持ちなんだ……。確かに温熱(ヒート)刻印(こくいん)した魔道具なら有り()るが高いぞ、おい」

「ち、(ちな)みにどのくらいになるんだ? スミナ」

「複数箇所(かしょ)から立ち上る湯気(ゆげ)の数や範囲を考えると……白が動く」

「白? 」

「白金貨だ」

「はっ!!! 」


 その値段を聞いて驚き再度屋敷(やしき)の方を見る。

 その様子を見て可笑(おか)しそうに笑い「さぁ行きましょう」と俺達を先導(せんどう)した。


 ★


「「「お帰りなさいませ、お嬢様。いらっしゃいませお客様(がた)」」」

「ただいま、(みな)さん」

「お(ひさ)しぶり~」

「「は、初めまして」」

「おう! 初めまして、だ! 」


 門を(くぐ)屋敷(やしき)の前に行くとメイドや執事を筆頭(ひっとう)とした家臣(かしん)達がそこにいた。

 セレスは帰宅(きたく)挨拶(あいさつ)をし、ケイロンは慣れたように声をかける。

 俺とスミナは緊張しながらも声をかけ、エルベルはいつの()にか眠気を()き飛ばして元気に手を上げ振っていた。


早速(さっそく)で悪いのですが」

「はい。準備は(ととの)っております。(みな)! 」

「「「はい! レストさん!!! 」」」


 ()(さっ)したのかレストさんが前に出てきて号令(ごうれい)をかける。

 そしてメイドと執事が俺達を先導(せんどう)した。


 屋敷(やしき)をぐるりと大回りして裏手(うらて)にある庭のような場所にそれはあった。

 別荘(べっそう)自体がとても広く目的地へ行くのにもかなり疲れた。

 一人でこの屋敷(やしき)に入ったら迷う自信がある。

 ともあれ湯気(ゆげ)の発生源に辿(たど)り着いた俺達。


「これが風呂か。初めて見るな」

「俺も初めてだ。水に()かるなんて川で水浴(みずあ)びするくらいだったからな」

「ホホホ、ならば少し最初は気を付けないといけませんぞ。熱く感じ体が吃驚(びっくり)するかもしれません」

「そうですか。(ちな)みにレストさんはいつもお風呂に? 」

「いつもではないですね。仕事(がら)身だしなみに気を付けてはいるのですが何分(なにぶん)忙しい身で」

「……お(さっ)しします」

「あら、ワタクシの事ですか? 」


 後ろからセレスの声が聞こえ体を少しビクッとさせる。

 俺とレストさんは恐る恐る後ろを見ると笑っていない目でこちらを見るセレスがいた。

 俺達の様子を見て少し(あき)れ顔をしながらも彼女は口を開き指示を出す。


「レスト、そちらは任せました。ワタクシ達はこちらになりますので」


 そう言い(いく)つか仕切(しき)りで分けられたお風呂を指さした。

 その方向を女性陣が向くとスミナが少し困惑(こんわく)した様子でセレスに聞く。


「い、一緒に入るんじゃないのか? 」

「男女別々になります」

「なんて豪華(ごうか)な……」


 川での水浴(みずあ)びもそうだが男女混合が普通である。

 別々と言う概念(がいねん)がスミナにもなかったのだろう。そのお金の使い方に彼女は後退(あとずさ)った。

 分かる。分かるぞ、その気持ち。

 だが助かると言えば助かる。これだけの美女(ぞろ)いだ。性格は置いておいて一緒に入ると色々と問題が出てくる。


「さ、行きましょう」


 そう言いセレスはメイド達を先頭(せんという)種族の輪(サークル)の女性陣を俺とは違う風呂へと誘導(ゆうどう)した。


「我々も行きましょうぞ」


 レストさんの一言により彼女達を見送っていた目を戻し俺もまた初お風呂を体験しに行くのであった。


 ★


 カルボ王国王城の一角(いっかく)

 そこにはこの国の国王と王妃(おうひ)そして今回の主役(しゅやく)である王子がいた。

 だが様子がおかしい。

 まずは服装だ。ほとんどが寝間着に取ってつけたような格好(かっこう)で集まっている。

 そして表情がどこか緊張しており切羽詰(せっぱつ)まっていることが分かる。


 ドンドンドン!


 入室の許可を求めるノックがする。

 それに(おう)じると一人の騎士が(とびら)を音もなく開けた。


夜分(やぶん)遅くに申し訳ありません! 」

「構わぬ。で、報告は? 」

「ありがたき(しあわ)せ! 現在王都騎士団より各貴族子息子女の救出したとの報告がなされました! 」


 それを聞き全員の表情が喜びに()ちた。

 そして最も年老いた人族が一番聞きたかったことを聞く。


「で、姫は……確認されたか? 」

「報告にはカルボ王国と獣王国ビストの貴族子息子女とだけされております」

「わからぬ、か」

「直接確認した方がよろしいのでは? 」


 年若い青年の言葉を受け「ふむ」とだけ(つぶや)き、ゆっくりと瞳を閉じ、考え、開ける。

 そして騎士に瞳を向け(たず)ねた。


「まずは報告書を」

承知(しょうち)いたしました! 」


 騎士は返事をして(とびら)を閉め、カシャン、カシャンと音を立てながら持ち場に戻り仕事に向かった。


「父上、(いささ)慎重(しんちょう)になり()ぎではないでしょうか? 」

「現状我が国の貴族が関与している可能性を考えると慎重(しんちょう)になり()ぎな(ほう)が良い」

「それにエレク。今年は貴方の誕生祭(たんじょうさい)。これに(じょう)じて問題を起こそうと画策(かくさく)している者が数多くいるのは最初からわかっているでしょう? 」

「分かってはおりますが……」

「だが、わからぬでもない。早く見つかり未然(みぜん)に防げたは良いものの一歩間違えればビストと戦争だった」

「後処理は如何(いかが)いたしますか? 」

「報告書待ちだな」


 そう言い軽く溜息(ためいき)をつく国王。

 余程(よほど)心労(しんろう)()えないのだろう。顔も老けて見える。

 だがここで()()らなければ戦争突入(とつにゅう)だ。それだけは避けなければならない。


 もし報告書内にビストの姫がいなければ国軍総出(そうで)で探さなければならないほどの事態になる。


 カルボ王国は決して強国ではない。隣国と友好関係を(むす)び、軍事的に経済的に連携(れんけい)が取れていることも存続(そんぞく)が出来ている要因(よういん)の一つだ。

 そのせいか他の人族が運営する国よりも様々な種族が行きかう国となり『多種族共生国家』として地位を盤石(ばんしゃく)なものとしている。

 もし友好関係が崩れれば……。


「一番怪しいのは……いつもの『奴』か」

「ええ。軍事機密(きみつ)()れているのを確認しました」

「だが決定打にかける。まるで蜥蜴(とかげ)尻尾切(しっぽき)りだ。今回の一件で『奴』を叩ければいいのだが……」

「知らぬ(ぞん)ぜぬをするでしょう」


 溜息(ためいき)をつき(けわ)しい顔をしながら進む王族の会議ロイヤル・ミーティング

 彼らの密談(みつだん)如何(いか)にしてこの場を(しの)ぐことに重点が置かれていたが王都騎士団が更に問題を起こしていることを彼らはまだ知らない。


 国王がキレるまであと……。

お読みいただきありがとうございます。

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新しく始めた異世界転生ものになります!
ハズレ枠の転生貧乏貴族は武姫を継承し最強へ至る
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