第百十八話 お忍び貴族と遊ぼう! 二
「ふぁぁぁぁ。お店がいっぱいだね!!! 」
「あ、あぁ。だが来たことないのか? 」
「あまり来た事ないね。と、言うよりかはここまで賑わっているのをあまり見ないという感じかな? 」
「そうなのか? 」
露店立ち並ぶ賑やかな商業区の様子にエカが笑顔でテンションを上げた。
声を大にして叫んでいたのだが周りは気にしていない。
いやむしろなれたのだろう。もしかしたら商人達は「またか」と思っているかもしれないな。
しかし澄んだ声もすぐに喧騒に消さりエカが俺の方を向いて疑問に答えた。
いつもの王都を知らないためエカの言葉に俺が食いつき聞いてみる。
「そうだよ。王都、と言っても特産のような物がないからね。各領地の特産が集まる場所って感じかな」
「思ったよりも夢がないな……」
「ははは、仕方ないよ。強いて言うなら衣服が一歩先端を行っているくらいで他は各領地の寄せ集め。この王都の本来の機能は国としての行政だからね」
「やけに詳しいな……」
「ま、王都に住んだことがある人ならだれでも知ってるよ。ね? 」
そう言いエカはケイロンとセレスの方を向いた。
少々顔を強張らせながらも彼女達は「そうですね」「確かにね」と肯定している。
いや、肯定するなよ。
王都の夢が薄まるじゃないか。
「観光やダンジョン攻略ならアース公爵領やウッド公爵領、医療ならドラグ伯爵領とか他の領地の方がってせっかく露店に来たんだ! 行こう! 」
「あ、ああ」
ほらはやく、と手招きされながら俺達はエカについて行った。
★
「これ三本ください! 」
「あいよ、銅貨一枚だ」
「ど、銅貨?! 銅貨もってない……」
「ハハハ、上の貨幣でも構わんよ。おつりを出すからな」
「じゃぁこれで」
串焼きを三本頼んだエカは銅貨を持ってきていなかったようだ。
店主に他でも構わないと言われ腰にある袋の中をゴソゴソし金色に光るお金を出した。
「き、金貨!? 流石に……」
「え? ダメなんですか? 」
「いや、ダメじゃねぇが……」
店主の額から汗が流れている。
どうやら金貨からの引き算が出来ないかおつりがないかのどちらかだろう。
「セレス、ケイロン。今銀貨どのくらい持ってる? 」
俺の意図を察したのだろう。二人が俺の話を聞くと自分の袋を確認した。
因みに俺は百二十枚ほどある。先日露店がどんどん並んでいくのを見て銀行に預けている金貨を二枚ほど引き出し一方を銀貨に換えてもらったのだ。手数料が口座から引かれたけど。
今ある手持ちでエカの両替は可能だ。
だがいざ自分が使う時に銀貨が無かったら困る。よって確認しているのだ。
「僕は五十枚ほどだね」
「ワタクシもそのくらいですね」
「……いざと言う時は両替してくれ」
二人は銀貨をあまり持ち歩いていなかった。
よく考えれば貴族令息や令嬢がお金を自分で持っているのだろうか? 使用人が持っているものではないだろうか。
いやケイロンは家出していたんだったな。なら持っていても不思議ではない。セレスは……恐らく最近狩ったシルバー・ウルフ等の冒険者としての収益だろう。
そう考えると金貨一枚でも持っているエカが異常なのか?
考えていても仕方ない。いざと言う時は両替してもらうか借りてすぐに銀行に行こう。
溜息をつきながら困った顔をする店主と「ダメなの? 」と不思議そうな顔をしているエカに目を向け声をかけた。
「両替、しようか? 」
「いいの? 」
「しないと買えないだろ? 」
「うん。なら頼むよ」
俺が金貨一枚と銀貨百枚を交換しエカが銀貨一枚を取り出しそれを使って串肉を購入した。
店主も銀貨で事足りたのかほっとした顔で串肉と銀貨を交換しおつりを渡して「兄ちゃんありがとよ」と言い次のお客さんに移る。
俺達はそこから少し離れた所で壁に背を預けて一息ついた。
「ん~! 美味しい!!! 」
そう言いながら三本いっぺんに口に頬張っている。
とても美味しそうに食べているな。
と、言うよりもよく三本とも口に入ったな。
流石に縦には入っていないが。
上からどんどんと食べていき、そして全て食べ終わったようだ。
口にソースを残してこちらをみる。
「温かい食べ物ってこんなに美味しんだね」
「そりゃそうだろうよっと」
「なにす……うぐぅ」
俺は小袋に入れてあった安い布を取り出しエカの口元をふいた。
「流石にこのまま往来を行くのはダメだろう」
「むぐぐ……」
「それにこのまま帰ったら抜け出したことが確実にばれるだろ? 」
「……ぷふぁ。確かにそうだね」
エカの口元を拭い終わると後ろからケイロンとセレスの声が聞こえてくる。
「ま、まさか敵がエ、エカだって……」
「アンデリックはそっちもいけるのですか?! 迂闊でした。そちらはカバーしておりませんでした」
「違う! 何勘違いしてるんだ! 」
勘違いも甚だしい。
少し汚れている口元を拭っただけじゃないか。
全く想像力豊かな種族の輪の女性陣だ。いや俺以外女性だったな。
少し呆れながらも俺はその布に手をかざし魔法をかけて元の状態に戻す。
「何したの? 」
「初級魔法の中でも生活魔法と呼ばれる魔法で汚れを落としたんだよ。別に特別なことじゃない」
「へぇ。でもそんなの習ったことないな。どこで習ったの? 」
「村じゃ皆やってたな。いや、俺の村だけか? 他の村でやってるのを見たことがないからな」
そうなんだ、と興味深くこちらにオッドアイを向け覗かせる。
そんなに珍しいものだろうか。
いや貴族家としては珍しいのかもしれないな。
「面白そう。今度皆に教えてあげよう」
「それは良いが、抜け出したことがバレるぞ? 」
「あ、それはいけない」
俺がやったことを教えると言うが抜け出したことをむざむざばらす行為だ。
別に他の人に教えること自体は構わないのだがそれで俺にまで足がつくかもしれない。
二次災害は勘弁である。
「ま、適当な本でも見繕って「本に載ってたんだけど」とか理由を付けて教えればいいんじゃないか? 」
「それはいいね」
「方法は他にもいくらでもあるだろうが……まぁそこらへんはそっちで考えてくれ」
「ありがとう」
そうお礼を言うとより深く建物に背を預け上を向き少し考えているようだ。
そしてこちらを見る。
「アンデリック君は、何も要求しないね? 」
「要求? むしろ何を? 」
「ん~迷惑料とか情報提供料とか? 」
「この程度でそんなものとってたら逆に恐ろしいわ! 」
「そう? 貴族の中にはいっぱいいるよ。だから気を付けてね」
こわっ! 本物の貴族こわっ!
そして警告ありがとうございます!
心の中で感謝しながらも「さ、次行こう! 」と言うエカに急かされ俺達は次の目的地に行くのであった。
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