表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
種族の輪 《サークル》 ~精霊術師は今日も巻き込まれる~  作者: 蒼田
第三章 バジルの出会いと王都の出会い
114/442

第九十七話 エンカウント 三

「『ドルゴ』からの帰りに(へん)な貴族にあったんだ」

「へぇ、それはどんな? 」

「ワタクシも気になりますね」


 『銀狼』の一階で俺とケイロンそしてセレスが机を(かこ)んでいる。

 ケイロンとセレスは一階で他愛(たあい)もない話をしていたようだが俺が帰ってそう言うと食いついて来た。

 お話し好きはどのような種族でも女性の特権(とっけん)らしい。


「いやぁ全員(しの)べていないお(しの)び貴族だったんだが様子が(へん)で」

「どんな様子だったの? 」

「もしかしたら事件でしょうか? 」

「いやなんでも二人の貴族は家出(いえで)した妹に好きな人が出来て(なや)んでるって感じだった。後自称(じしょう)四十代の貴族様も娘に好きな人が出来てどうしようか(なや)んでるって言ってたな」

「あらそれはおもしろ……いえ、非常に興味深い話ですね」

「——」


 頭を上にあげその時を思い出しながらセレスとケイロンに伝えた。

 顔を二人に向けるとセレスは興味を持ったようで興味津々(きょうみしんしん)な顔をして、ケイロンは少し考えるようなそぶりをしている。


(ちな)みに、さ。どんな格好(かっこう)、と言うか風貌(ふうぼう)だった? 」

「まぁ()け込めてないのは置いといて、一人目は町役場の文官さんっぽい感じの細身な顔立(かおだ)ちの良い感じ? で、二人目は逆に武官っぽい……はち切れんばかりの筋肉をもった男の人。で、最後が三十代に見える自称(じしょう)四十代の父で……そう、ケイロンみたいな雰囲気(ふんいき)を持った人だったな」


 ガタン!!!


「ちょっと出てくる!!! 」


 俺が出会った人の特徴を言うと走って宿から出ていってしまった。


「どうしたんだ? 」

「……恐らくアンデリックが出会ったのは――」

訓練(くんれん)するぞ!!! 」


 セレスが何か言おうとしたらガルムさんが訓練(くんれん)号令(ごうれい)を出した。

 彼女の言葉を確認できずまま俺はガルムさんに引き()られて行くのであった。


 ★


「このっ! 」

「まだまだ! 」


 ガルムさんに木剣の連撃を放つ。

 上段から切りかかり次に下段から切ろうとする。

 が、一つも当たらない。


「無抵抗の相手に一撃も当てれねぇのか?! ああ” 」

「言ってくれますね。連撃! 」


 武技を発動し連続切りの速度が更に上がる。

 しかし――


「はっ! 剣筋(けんすじ)単調(たんちょう)だ! おらッ! 」

「ゴフッ!!! 」


 攻撃を見切(みき)られ()りを()らい()き飛ぶ。


 ザザザ……。


 ()れたように着地(ちゃくち)し片手と足で勢いを消しながら剣を(かま)え直す。


「まだだ! 」


 強化された体で高速で近づき()み込んで横薙(よこな)ぎに一閃(いっせん)

 ん? 感覚が……いつもより重い。

 だがガルムさんの木剣に(はば)まれ(とど)かなかった。

 冷や汗を流しながら目を合わせるとニヤリと笑ったきがした。


「いい一撃だ。が、もう一本()らっとけ」


 そして俺はまた()き飛んだ。


「はぁはぁ……。体にかすりもしない」

「はは、そりゃ冒険者歴が違う。そう簡単に当てられちゃ困る」


 こっちは息をするのがやっとなのになんでこの人は息ひとつ切らしてないんだ?

 ここまで実力が離れているのか。

 (へこ)むな……。


「だが最後の一撃はよかった。あれはどうしたんだ? 」

「ありがとうございます。重撃を放ったつもりだったんですがいつもの重撃とは違う感じがして……」

「どんな感じだ? 」

「こう、重い、感じ? ですか? 」

「ああ、そりゃ派生(はせい)したな」

派生(はせい)ですか? 」

「ああ。ま、よくある事だ。恐らく兄ちゃんが使ったのは剛撃(ごうけん)だろう」

剛撃(ごうけん)、ですか……」

文字通(もじどお)りより重い一撃を与えることが出来る」


 そういうと倉庫(そうこ)の方へ行き何か手に持ってこっちにやってきた。

 それを俺の目の前に置き黒い瞳をこちらに向ける。


「次は短剣(ダガー)の練習だ。王都へ行くんだろ? いつも長剣(ロングソード)を持ってるとは(かぎ)らねぇ」


 恐る恐る二本の木製の短剣(ダガー)(ひろ)い上げる。

 いつもの短剣(ダガー)と似たような重さだ。


「さぁ訓練(くんれん)の時間だ」


 その後裏庭(うらにわ)から幾度(いくど)となく悲鳴(ひめい)のような声が聞こえたらしい。


 ★


「父上!!! こんなところで何をしているのですか! 」

「何をしているとは(ひど)い言い(ぐさ)だね、ケイロン」

「そうだぞ。俺達はたまたま()()かっただけだ」

「ええ。決してケイロンが好きな相手がどのような人なのか見極(みきわ)めるためではなく、王子殿下(でんか)誕生(たんじょう)パーティーに行く途中(とちゅう)()()かっただけです」


 ケイロンが別荘(べっそう)へ行くとそこにはメイド達に紅茶を入れてもらい優雅(ゆうが)に口をつける細身の青年が二人と豪快(ごうかい)に飲む筋肉質な男性が一人いた。

 あからさまに(ねら)ったようなタイミングでバジルの町へ来た家族に対して(ひたい)青筋(あおすじ)を浮かべながら怒るケイロン。

 だが当主(とうしゅ)ピーター・ドラグの次の一言でそれもすぐに収まった。


別件(べっけん)になるけれど確認すべき事もあったからね。彼と会ったのはついでさ」

「確認すべき事ですか? 」

「ああ。ケイロンが保護(ほご)した二人に話を少し聞いたんだけど、彼らにスタミナ草をとるように話した者の事だ」

「それがどうしたのですか父上。()()めスラムの誰かでは? 」

「それがどうも違うみたいでね。場所に見合わない姿だったようだ。それに気付いているのかいケイロン? 事件はまだ終わっていない」

「……どういうことですか? 」

「君にしては浅慮(せんりょ)だね、()可愛(かわい)い娘」


 そう言うと一口(ひとくち)紅茶に口をつけ、その白いティーカップをゆっくりと降ろした。

 少し間を置き口を開く。


「僕達がこれを知るきっかけになったのは少年と少女が当時の事を少し話してくれるようになったと別荘(べっそう)のメイドから手紙をもらったことからだ」


 ピーターは(ふところ)にしまっていた一枚の白いく如何(いか)にも高価な横長(よこなが)封筒(ふうとう)を取り出し中身(なかみ)を開ける。

 そして兄達の隣に座るように(うなが)し、それを読ませた。


「その者は黒い外套(がいとう)(つつ)まれて少女の病気——肺魔臓(はいまぞう)炎症による(せき)にスタミナ草が効くと言ったらしい。もちろんこれが効くはずもなく症状は悪化」

「僕の予想通り肺魔臓(はいまぞう)症候群だったのですね」

「そうだよ。でだ。問題になるのはこの者は誰だってことだ」

「何が言いたいのですか? 」

「スタミナ草はどこにでも生え、多くの冒険者が取りに行けばいくらでも手に入る物だ。それに加え市場(いちば)にもいくらでも出回(でまわ)っている一般的な物。だけどその者は少年に取ってきた一部を情報量として渡すように(うなが)している。おかしいとは思わないかい? 」


 ケイロンは(こし)を落ち着かせ話を聞く。

 するとピーター同様おかしなことに気が付いた。


「確かにそうですね。もし咳を抑える薬の情報料として渡すのなら安すぎます」

「それに黒い外套(がいとう)。別に珍しくはないけれどもしかしたら奴らがまた悪さを始めようとしているのかと思ってね」

「奴ら……まさか! 」

「そう。僕達ドラグ伯爵家の宿敵(しゅくてき)——犯罪組織『アウトサイダー』だ」

お読みいただきありがとうございます。

もしお気に召しましたら是非ブックマークへの登録や広告下にある★評価よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新しく始めた異世界転生ものになります!
ハズレ枠の転生貧乏貴族は武姫を継承し最強へ至る
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ