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種族の輪 《サークル》 ~精霊術師は今日も巻き込まれる~  作者: 蒼田
第三章 バジルの出会いと王都の出会い
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第九十話 王都への準備期間 一 買い物 一

 俺達の王都行きが決まったがすぐに出発ということはなかった。

 二から三日程俺達に準備期間をくれるらしい。

 と、言うことで翌日俺はセレスティナと買い物に出ていた。

 レストさん直々(じきじき)のお願いである。俺に拒否権(きょひけん)はない。

 朝から他のメンバーはどこかに行っているようだったので俺とセレスティナの二人と言うわけだ。


「さて、いる物はっと」

「ケイロンと同行(どうこう)するという形をとるならば服を買いませんと」

「服? 何故(なぜ)

「恐らく貴族用の馬車で行くことになるでしょう。ケイロンの事です。自分だけ馬車に乗って他のメンバーを荷台(にだい)(すわ)らせるようなことはしないと思います。ドラグ家の家人(かじん)がその中にいるかもしれないので一応(いちおう)服を(ととの)えておかないと」

「なるほど……。だがそんなにお金ないぞ? 」

「ワタクシのポケットマネーから出すので大丈夫ですよ」


 商業区を歩きながらいる物を確認するとセレスティナが(あん)を出してくれた。

 服か……。正直服にお金をつぎ込みたくないから買いたくはないのだが、確かに俺は最初の旅服(たぶふく)のような服装(ふくそう)だ。ケイロンの実家(じっか)の人と会うかもしれないのなら確かにこの服装(ふくそう)はまずい。

 セレスティナがお金を出してくれると言うが、正直複雑(ふくざつ)気分(きぶん)だ。


「そう言えば今日は朝のような戦闘服じゃないんだな。セレスティナは」

「ワタクシの事はセレスかティナでいいですよ。長いですし」

「ああ、じゃぁセレスで」

「はい! 」


 ケイロンと呼び方が同じというのも、と思いセレスと呼ぶことにした。

 名前を呼ぶと心地(ここち)いい笑顔(えがお)で返してくれた。

 そんな笑顔(えがお)で返されるとこちらも気分(きぶん)がいい。

 が、名前を呼んだくらいで、と思わくもないがそれは置いておこう。


「実の所ワタクシ町に出る時はいつもこの服装(ふくそう)なのですよ」

「へぇ。赤のミニスカに白シャツと黒い羽織(はおり)か。よく似合(にあ)ってると思うよ」

「ありがとうございます。あ、そろそろ近づいてきましたね」


 俺達が話し合っていると目的の店——服屋に来たのであった。


 ★


 その(ころ)アンデリックとセレスティナを見張(みは)(かげ)がいくつかあった。

 その一つは建物(たてもの)(かげ)から三つほど顔を少しだし二人の行動を監視(かんし)していた。


(まった)くデリクはデレデレしちゃってさ。僕には「服が似合(にあ)ってる」って言ったことないのに」

「二人の(なか)がいいのは良い事じゃないのか? 」

駄乳エルフ(エルベル)……。多分だがそう言うことじゃない」


 三つの(かげ)とはケイロンとエルベルそしてスミナであった。

 真ん中の顔——ケイロンが愚痴(ぐち)り、一番上のエルベルが分からないといい、スミナが状況を(さっ)した。


 この三人はアンデリックとセレスティナが宿を出る前、レストからおつかいを頼まれた。何でもこの町に来るのは(ひさ)しぶりで店の場所が分からないから買ってきてほしい物があると。

 それ自体(じたい)は何でもなかったのだが、買い物が始まった(ころ)ケイロンの脳裏(のうり)に何か(はし)るものがあった。

 身体強化も使い高速で移動し買い物を()ませアンデリック達を探したが、(あん)(じょう)いない。

 レストに()いただすと買い物に行ったとの事。


「まさか僕達が買いに行った方向とは反対方向に買い物に行ってるとはね」

「別にいいんじゃないか? 」

意図的(いとてき)……だよね」

「まぁ結果だけを見るとな」

「お、服屋に入っていくぞ? 」

「あそこはこの前エルベルの服を買いに行ったとこだね」

「……」


 二人が今のエルベルの服を見て、アンデリック達の方を見た。


「まさかティナにいかがわしい服を?! 」

「いやぁそれはないだろ」

「じゃぁ率先(そっせん)してエルベルのような服を?! 」

「これは駄乳エルフだからこうなったじゃなかったけ? 」

「……そうだった」

「オ、オレの服がいかがわしいとは何だ! いかがわしいとは! 」


 まだまだ彼女達の尾行(びこう)は続く。


 ★


「こちらの服もいいですね」

「あのー」

「あらこちらも。店主さんは中々(なかなか)腕前(うでまえ)のようで」

「ほ、()めていただきありがとうございます!!! 」


 セレスが色々と俺の服を見繕(みつころ)い俺に着せる。

 最初はわくわくもあったのだが、途中(とちゅう)からとてもしんどくなった。

 次から次へと店主のエルフが服を持ってきてはセレスが俺に着せるという循環(じゅんかん)が出来てしまい、今や()()人形(にんぎょう)状態だ。

 財布(さいふ)(にぎ)られている為口を出すことは出来ないが、もう少し自重(じちょう)して欲しい。

 店主も店主で初めてか(ひさ)しぶりの貴族の(きゃく)なのだろう。緊張(きんちょう)しながらも商品を並べていき売ろうとしていた。


「もうそろそろいいか? 」

「え? まだこんなにあるのに? 」

「いや、十分だろ。と言うか全部買う気か? 」

「全部とは言わずとも十着ほどは」

「着ないから! そんなに着ないから! 」

「貴族のパーティーなどこのくらい普通ですよ」

「俺は平民だぁ! それに置く場所がない!!! 」

「確かに……。場所は盲点(もうてん)でした。つい楽しくなって」


 貴族ならばこの数は普通なのだろう。場所も服を運ぶ用の馬車を出せばいい。

 パーティーの前の他家(たけ)への挨拶(あいさつ)ごとに違う服を着るのかもしれない。

 だが俺は(たん)なる友人(わく)同行者(どうこうしゃ)だ。しかも普通ならいるはずもない平民の。

 買ってもらっても置く場所がない。

 だから店主さん。そんな悲しそうな目でこちらを見ないでください。


「仕方ありません。オーソドックスなこちらの二着とこちらの一着をお願いします」

「かしこまりました」

「……本当にいいのか、買ってもらって。正直罪悪感しかないのだが」

(かま)いません。(もと)辿(たど)ればワタクシのワガママが原因です。このくらい未知(みち)の前には()ほどもありません」

「そ、そうですか……」


 貴族と一緒にいても違和感のないような——白いシャツと黒の上下のスーツを二着と少し派手(はで)めな服を一着。

 正直()()に困るのだが……後で考えよう。

 少なくとも王都へ出発(しゅっぱつ)するまではレストさんにでも保管(ほかん)してもらおう。

 持つのも怖いし、着るのも怖い。これ(やぶ)けたら直すのどのくらいかかるんだ?

 少し冷や汗を流しながらも服を旅人の服に戻し、そーっと(たた)んだ。


「では金額がこちらになります」

「はい。ではこれでお願いします」

「かしこまりました」


 (たた)み終わりセレスの声がする方を見るとお金を(はら)っている所だった。

 受け取る店主の体が若干(じゃっかん)(ふる)えているのが分かる。


 手元(てもと)を見ると……その大量の金貨は何ですか! 生きる世界が違う……。

 そうひしひしと感じながら俺達は服屋を出たのであった。

 (なお)、店主のエルフはホクホク顔だった。


 ★


 店の(まど)からその様子を(のぞ)(かげ)があった。

 勿論あの三人である。


「なんだ。デリクの買い物か」

「執事みたいな服だな」

「ま、貴族の(あいだ)では貴族子息(しそく)が着るような一般的な物だね。多分この町に何軒(なんけん)か貴族家の別荘(べっそう)があるから彼ら用に作ってたんだとおもうよ」

「へぇ。でもこう見ると見違えるな。服装(ふくそう)だけでこうも変わるとは」

「本人は気付いてないけど()が良いからね。それなりの物を着せればああなるよ」

「お、出てくるぞ。隠れろ! 」


 アンデリック達が出てくるのを察知(さっち)した三人は他の建物(たてもの)(かく)尾行(びこう)を続けた。

お読みいただきありがとうございます。

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新しく始めた異世界転生ものになります!
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