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種族の輪 《サークル》 ~精霊術師は今日も巻き込まれる~  作者: 蒼田
第三章 バジルの出会いと王都の出会い
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第八十七話 暴走令嬢

「と、いうわけでセレスティナさんです! (みんな)仲良くするようにね! 」

「いやいやいや、(わけ)が分からん」


 翌朝俺とケイロン、スミナとエルベルそして昨日やってきたセレスティナが『銀狼』の庭に集まっていた。

 それぞれ食事が終わった後、(きゅう)にケイロンから集合(しゅうごう)の声がかかり、ガルムさんに裏庭(うらにわ)()りてそこへ移動した。


 裏庭(うらにわ)へ行くとそこには昨日とは違う格好(かっこう)のセレスティナが待ち受けていた。

 今日は青いフリル付きのミニスカに胸元(むなもと)が見える白い半袖(はんそで)シャツ。そして青いローブに黒のニートハイソックス、手には一冊(いっさつ)の魔導書を持っていた。

 昨日格好(かっこう)とはずいぶんと(さま)()わりしてかなりラフである。


「ケイロン。(くわ)しく、わかりやすく説明してくれ」

「それはワタクシの方から」


 一歩前に出てシャッキっとした顔で俺をじーっと見つめる。

 何故(なぜ)俺を見る?!

 あの獲物(えもの)を逃さんとする視線(しせん)。こわっ!


「先日ケイロンからアンデリックには『大精霊の加護』が与えられていると聞きました」


 すぐさま首をケイロンの方を見ると「ごめんね」と両手を合わせて舌を出し少し(もう)(わけ)なさそうな表情をし首をちょこんと横に(かたむ)けショートポニテを()らした。

 あら可愛(かわい)い! じゃない!!! 何重要なこと話してくれてんの!

 話したところで何も起こらないと(たか)をくくってた俺も俺だけど。


「そこで! 色々(いろいろ)とお聞きしたいのです! 」

「あ~聞かれても多分答えられないと思いますよ? 」

「ワタクシとはケイロンと話すような口調(くちょう)で話しても(かま)いません。それで答えられないとはどういうことでしょう」


 目をギランギランに(かがや)かせながらこっちを見て、聞いてくる。

 何故(なぜ)に答えられないといって目を(かがや)かせるんだ?!

 普通(あきら)めるか、失望(しつぼう)するだろう。むしろしてくれ!


「トッキー……。昨日そこのエルベルが()いかけていたトッキーという『時の精霊』(いわ)くまずどの系統(けいとう)かわからないらしい」

「ほう。そのようなことが」

「はい。で、実際何か出来るわけでもなくただ時の精霊に触れたり声が聞こえたり小精霊が視えたりするくらいで特別何かあるということは……」

「マーベラス!!! 」

「「「うぉ!!! 」」」

「ケイロンが言った通り、触れるのですね」

「え、ええ。逆に向こうも俺に触れるらしいですが」

「パーフェクト!!! 」

「「「ひぃ!!! 」」」

「通常触れない存在から触れてくるとは……まさにここに未知(みち)がっ!!! 」


 彼女の問いに答えたつもりなんだが……どういうことだ。

 セレスティナが(えつ)(ひた)った顔でこちらを見ている。昨日の冷たい面影(おおかげ)などどこにもない。

 最初に精霊がいると伝えた時のエルベルを思い出し、再度彼女を見て見る。

 ……。うん、同類(どうるい)だ。

 方向性は違うけど多分同類(どうるい)だ。(かか)わってはいけない人種(じんしゅ)だ。二重(にじゅう)の意味で。


「ケイロン。彼女をどうにかできないか? 」

「あの状態に入ったら無理だよ」

「やってみないとわからないだろ? 」

「無理だよ。何せ彼女は僕の幼馴染(おさななじみ)の一人なんだ。だからよく知ってる。未知(みち)や興味が()いたことに一途(いちず)なんだ。彼女は」

「龍人族は全員こんな感じなのか? 」

「いや、全然(ぜんぜん)。僕が知っている(かぎ)りだと、彼女だけだよ」


 俺はケイロンに近寄(ちかよ)小声(こごえ)でどうにかならないか聞くがどうにもならないとの事。

 スミナとエルベルの方を見るとあちらも彼女の行動にドン引きしながら(めずら)しく小声(こごえ)仲良(なかよ)く話していた。


「なぁあのお貴族様、セレスティナはおめぇに()てねぇか? 」

「ど、どこがだ! 」

「いや……もう全部だ」

「あそこまで(ひど)くない! 」


 スミナから(めずら)しくエルベルに声をかけ、同意(どうい)を求めた。

 が、もちろんそれをエルベルが認めるはずもなく両手を振りながら違うと主張(しゅちょう)する。

 それも(むな)しくどうやらエルベルとセレスティナは同一視(どういつし)されるようになったようだ。

 セレスティナからすればエルベルと同一視(どういつし)されることの方が屈辱(くつじょく)だと思うが、今の状態を見たら誰も何も言えないだろう。


「エルベル。お前を外から見るとあれ以上だからな」

「な! オレはあんなことになってるのか?! 」

「ああ。だから自重(じちょう)してくれ」

「断る! 精霊様に関しては俺の辞書(じしょ)自重(じちょう)の二文字はない!!! 」


 小声(こごえ)でエルベルに自重(じちょう)(うなが)す。

 反面教師(はんめんきょうし)にして欲しかったのだが、無理だったようだ。


 さて、このまま放っておくわけにもいけないし「どうしたものか」と彼女の方を再度見た。

 羽織(はお)っていたローブから腕を出し両腕を太陽にかざし何やら出会いに感謝し始めた。

 ん? なんだ。腕が青白く光って……。


「あ……。ティナ、戻っておいで! 龍鱗(りゅうりん)が浮き始めてる! 」

「……あぁこの! この必然(ひつぜん)なる偶然(ぐうぜん)に感謝を……え? 龍鱗(りゅうりん)? 」


 ケイロンの『龍鱗(りゅうりん)』という言葉に反応して彼女の(いの)りは止まり、腕を見た。

 少し目を(つむ)り集中すると綺麗(きれい)な青い(かがや)きが(おさ)まり普通の(はだ)に戻る。


綺麗(きれい)な青だったのに……」

「え??? 」


 おっといけない。つい本音(ほんね)が。


 少し(ほう)けたセレスティナとは別にケイロンからジト目が飛んできた。

 ……何かやらかしたか? こう、種族的に言ったらまずい事だったとか。

 スミナからは何か意味深(いみしん)な目をしてこちらを見ていた。

 え、何。分かってないのって俺だけ?

 ちらっとエルベルを見た。いつも通りのエルベルだった。俺だけじゃないようだ。少し安心したがそれでも冷や汗を流しながら今の状況を変えるために口を開く。


「あ~さっきは系統(けいとう)が分からないって言ったんだが予想(よそう)は出来てるんだ」

「……え。あぁ。どのような予想(よそう)かお聞きしても? 」

「多分『時』の系統(とき)かなと。一先(ひとま)ずの元素精霊は違うようなんだ。後残るのは光と闇そして時だ」

「誰に加護をもらったかわからないのですか? 」

(まった)くだ。()(おぼ)えがない。だからこうして予想(よそう)してるんだが……能力的に『時』かなと」

「どういった能力なのですか!!! 」


 グイっとこっちに体を近づけ聞いてくる。

 何だこの甘い匂いは! ケイロンとはまた別の花の匂いだ……じゃなくてっ!


「落ち着いて、落ち着いて。どうどうどう……」

「ワタクシは馬ではございませんよ? 」

「悪かったって。で、今わかってるのは『先読み』だけだ。だから戦闘中じゃないと発動しないし、日常じゃわからない。そもそも今の今まで加護を受けたことに気付けなかったのはこの辺りにあるんじゃないか? 」


 ()かす彼女を落ち着かせ距離(きょり)をとる。

 そして能力と今までわからなかった原因を言い、納得(なっとく)させようとした。

 が、その口から予期(よき)せぬ言葉が出てきた。


成程(なるほど)一理(いちり)ありますね。ならばやりましょう! 」

「ふぇ? 」

「戦闘あるのみです! これより研究——観測(かんそく)を開始します!!! 」


 そう言いセレスティナは本を俺に向けてきた。

 これはめんどくさい流れになってきたな。

お読みいただきありがとうございます。

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新しく始めた異世界転生ものになります!
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