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種族の輪 《サークル》 ~精霊術師は今日も巻き込まれる~  作者: 蒼田
第三章 バジルの出会いと王都の出会い
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第八十五話 セレスティナ・ドラゴニル・アクアディアという女性

 ()しくもケイロンの知り合いと宿で出会ってしまった俺。

 貴族の子女(しじょ)ということもあってかなりビビっていたが、「そう言えばケイロンも貴族の子女(しじょ)だったな」と思い出し「今更(いまさら)か」と感じた。


 セレスティナと呼ばれた女性がケイロンに出てくるよう(うなが)していたので受付台から(あきら)めたかのようにケイロンが出て挨拶(あいさつ)してるとガルムさんが一言。


「出来れば部屋でやってくれねぇか」

「俺じゃなくて本人に言ってください」


 小声(こごえ)でやり取りをした(のち)、俺はケイロンと青い麗人(れいじん)に声をかけ、ケイロンの部屋へ行くことにしたのであった。


 ★


「さて僕の仲間達を紹介するよ。こっちがアンデリックことデリクでこっちがドワーフ族のスミナ。そして……こっちがエルフ族のエルベル」

「「「よ、よろしくお願いします」」」


 ケイロンの紹介で俺達が挨拶(あいさつ)し頭を下げた。


 水龍人のメイドが紅茶(こうちゃ)を入れ『銀狼』に設備(せつび)された机に置く。セレスティナとケイロン、そして俺達の前だ。

 (せき)は本当は一つしかなかったがそれぞれの部屋から一個ずつ持ってきた。流石(さすが)に後ろに(ひか)える執事さんやメイドさん、そして騎士の(かた)用の椅子が無かったので彼らは(すわ)れていない。

もっとも俺達もセレスティナに(すわ)るように言われなかったら(すわ)らなかったが。


 なんで俺達も(すわ)ってんだよ……。


 (いわ)く、ケイロンの友人を立ったままにさせるわけにはいかないとか。


「こちらこそよろしくお願いします。私は龍人族のセレスティナ。アクアディア子爵家の長女でセレスティナ・ドラゴニル・アクアディアという者でございます。ケイロンのお友達との事。私の事は気軽(きがる)に『セレスティナ』とお呼びください。以後(いご)よろしくお願いします」

「「「よろしくお願いします!!! 」」」


 主人の娘なのだろうセレスティナがペコリと小さく頭を下げながら挨拶(あいさつ)すると他の家臣団(かしんだん)挨拶(あいさつ)した。

 野太(のぶと)い声と()(とお)った声のハーモニーだ。

 何だろ。この場違(ばちが)(かん)。絶対これ俺がいるべき空間じゃないよね?!


「ティナはどうしてここに? 正直言ってここが宿だとわかるのに苦労(くろう)したと思うんだけど」

「ええ、確かに苦労(くろう)しました。そこにいる大食漢(だいしょくかん)のルゥが「お嬢様! ここからいい匂いがします! 食べに行きましょうよ!!! 」と言わなければこちらの方向に来ませんでしたし看板(かんばん)の絵を見ないと宿と気付かなかったです」

「お嬢様。それは秘密のお約束では......」

 

 ルゥと呼ばれた獣人メイドが声を上げ否定すると周りの雰囲気(ふんいき)が少し(やわ)らぎ笑う人も出てきた。

 思ったよりも話しやすそうな人だ。

 いやむしろダメだ。ここで気を(ゆる)めたらエルベルが暴走(ぼうそう)してしまうかもしれない! 何としてもこれだけは()けなければ!


「ルータリアさんも相変(あいか)わらずだね」

「ケ、ケイロンお嬢様! 何てことを言うんですか! 普通ですよ普通」

「普通の人は一般獣人の十倍の食事はとりません。むしろなんであれだけ食べてその|体型なのですか。(うらや)ましいです」


 精一杯(せいいっぱい)ルータリアさんが否定(ひてい)するも()れ出る情報から(さっ)するに言い逃れは出来ない。

 確実に大食漢(だいしょくかん)だ。

 俺が緊張(きんちょう)で少し震えながらケイロンの方をちらっと見ると黒い瞳をセレスティナに向けていた。


「宿を探してたの? 」

「ええ色々と回ったのですがどこも一杯(いっぱい)で」

別荘(べっそう)は? 」

「この町にはないのです」


 ふーん、と(うなず)き考え込むケイロン。

 何を考えているケイロン。厄介事(やっかいごと)か? 変なこと考えてないよな?!

 頼むから無事(ぶじ)にこのお茶会を終わらしてくれ。


「ならさ、僕の家の別荘(べっそう)を使ったら? 僕の方から伝えておくから」

「いい(あん)です。お嬢様。早速(さっそく)お言葉に甘えましょう! 」

「何を言っているのですかルゥ。しかしそうはいきませんぞ、ケイロン嬢」


 ケイロンの言葉に反応したのは水龍人の執事だった。

 立派(りっぱ)な水色の角に白髪と筋肉質な体の男性が金色の瞳を向ける。


「恐らくケイロン嬢のことですから自分はこの宿に泊まってセレスティナお嬢を別荘(べっそう)に泊めるつもりでしょう」

「ま、まぁ……」

「そのようなことをしたと旦那様(だんなさま)(がた)にバレれば我々の首が飛びかねません。是非(ぜひ)我々を守ると思ってここに泊まらせてください! 」

「わ、わかったよ。だから落ち着いいてくださいレストさん」

「分かっていただけたようで何よりです」


 そう言い下げた頭を上げた。

 何というか……濃ゆいな~。

 貴族ってこんな感じなのか? もっと硬く怖いイメージだったんだが。


「どのくらい泊まる予定? 」

「一応一泊はとっているはずなのですが」


 セレスティナがちらっとレストさんへ瞳を向けると(うなず)いた。


「ケイロンはどうするつもりで? 」

「うぐっ! それは……」

「まさか、流石にエレク王子殿下(でんか)誕生(たんじょう)パーティーに出席(しゅっせき)しないことなんてないですよね」

「……急病(きゅうびょう)で休んじゃダメかな? 」

「何を言ってるんですか。ダメに決まってるでしょう。それにドラグ伯もお見えになる事でしょうしどの道逃げ場はないと思いますが」


 王子殿下(でんか)誕生(たんじょう)パーティーだったのか。

 それで最近貴族の家紋(かもん)()られた馬車を多く見たんだな。

 だがケイロン。それは流石に抜け出したらいけないでしょう。

 と、いうかもしかしてセレスティナが現れなかったら『急病(きゅうびょう)』を使う予定だったのか?!


『なんか(ひさ)しぶりな気配(けはい)……が、す……る』

「大好きだぁぁぁぁぁぁぁぁ! ぬぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! 」

「「「うおっ!!! 」」」


 トッキーの声が聞こえたと思うとエルベルが奇声(きせい)を上げながら壁に激突(げきとつ)した。


『……お邪魔(じゃま)しました~』

「後で説教(せっきょう)だ!!! 」


 トッキーは少し()れたのかエルベルに注意を(はら)わず俺達に――俺以外には聞こえないが――謝罪(しゃざい)してすきぬけるように出ていった。

 最近エルベルのトッキーに対するアプローチ手段(しゅだん)が増えた気がする。

 エルベルも興奮(こうふん)が収まらないのか「バン! 」と(とびら)を開けトッキーが向かった先に「うひょひょひょひょ」と言いながら出ていく。


 ドン引きだ……。

 なまじ美人が(ゆえ)にドン引きだ。


 唖然(あぜん)としながらも一旦(いったん)アクアディア家の面々(めんめん)の方を振り向き態勢(たいせい)(ととの)える。

 普通なら無礼(ぶれい)むち打ちだが……。どうしよう、と頭を(なや)ませる。

 頭を手で(かか)えながら考えているとケイロンがセレスティナの方へ向いた。


「……彼女は『タウの森』の『エルフ』だ」

「なるほど、そう言うことですか」


 ケイロンがエルベルの出身地(しゅっしんち)を伝えるとすぐに他全員が「あー」と言って納得(なっとく)した。

 それで(つう)じるんかい!!!

 頭を(なや)ませてた俺は何なんだ!


()()めそこに精霊がいたのでしょう。それで興奮(こうふん)(きわ)まったと」

「そんなところだよ。いつもの事だから僕達は()れたけど初めての人は吃驚(びっくり)するよね。それに彼女は『精霊の加護』を持ってるから余計(よけい)にね」

「てか、今さっきので(つう)じるのか。すげーな。やつら」

「ええ。(わり)と有名な家なので。良い意味でも悪い意味でも」


 不意(ふい)にタメ()で話したスミナが「やばっ! 」っという表情をしたがそれを気にすることもなく会話を続ける。彼女からすれば本当に友達感覚(かんかく)なのだろう。


 最初にあった冷たい雰囲気(ふんいき)はもうなく、どこか(ふところ)(ひろ)い貴族なんだと思いながらこのお茶会もどきは終わるのであった。

お読みいただきありがとうございます。

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新しく始めた異世界転生ものになります!
ハズレ枠の転生貧乏貴族は武姫を継承し最強へ至る
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