表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/30

7/27-森へ至る街道にて



「やっぱり森の中に入らなきゃいまいちだね。」


「あまり森から出てこない上に、出てきても多くて5匹程度だからな。」



僕たちが今居るのはリーコス森林地帯、外から続く直線の街道。

 出てくる敵の数が少なく、頻度も多くないから街道としては役目を果たしてるとも言える。

 ただし討伐を目当てに来る人にとって効率的とは言えない。

 かと言って迂闊に森に入ると餌一直線だから、不用意に森には侵入できない。

 それが例え浅層の森だとしても。



リーコス森林地帯は基本的に四つの層からなり、外側から順に浅層、中層、深層、禁域となる。

 禁域は侵入禁止エリアで、入るのは何年かに一度、最高位の傭兵が依頼で禁域表層の調査をする時だけ。



また街道にもいくつか種類がある。

 まず森林地帯の外とつながる直線の街道。

 これは東西南北にそれぞれあり、その四つとも禁域の手前で行き止まりになる。


 次に森の中心を避ける円形の街道。

 これは三つあり、直線の街道から横に枝分かれする様に伸び、東西南北の街道に繋がっている。

 名前特に決められてないんですが、分かりやすく解説すると、浅層と中層の間にある外円街道、中層と深層の間にある間円街道、深層と禁域の間にある内円街道の三つとなります。


 浅層、中層、深層、禁域を区切っているのはこの三つの円形の街道だ。



「外円街道まで行ったら、また森に入るよ。」


「……森に入って大丈夫なんですか?」



後ろにいる桜が少し不安げに問いかけてくる。

 前回あっけなく敗走したから仕方ないけどね。

 ちなみに僕たちの並びは前から順に鈴火、僕、スー、桜だよ。



「前回と違って敵の数は把握してるし、スーの新魔法もあるから問題ないよ。」



前回は敵の少ない街道から森に入って、その数のギャップに戸惑ったり、慌てたりしたからあんなことになった。



でも、今はもう知ってる。

 敵の多さも、優先順位も、森での戦い方も……全部知ってる。



「今日は、負けない。」



後ろから声が聞こえた。

 緊張しているのか、少し声が震えてるように聞こえる。



「そんなに硬くならなくて大丈夫だって。鈴火も、桜も、スーも、みんな死なないよ。」



全員守るし、誰も死なせない、そのための盾だから。

 昨日は守り切ったんだし、今日も同じようにできる。



「……ならリラは?リラも死なない?」



服の後ろをつままれる。

 スーと僕の足が止まって、桜も止まる。

 前を歩く鈴火も足音が聞こえなくなって気づいたみたいで、振り返って僕の近くまで来る。



「死なないよ。死んだら守れないでしょ?」



死ぬ気で守りはするけど、守るために死ぬつもりはない。

 昨日みたいな、死ぬことが確定してる状況なら話は別だけどね。



「でも、昨日は……」


「昨日は死んだよ?でもね、今日は死なない。」



もう昨日みたいな状況は作らない。

 そもそも盾を投げてなければ昨日だって一緒に生きて帰れたと思うし。



「なんで……?」


「だって今日は、僕が死にそうなったらスーが助けてくれるんでしょ?」



死なないとか言っておいてちょっと情けないかもだけど、あの状態の森を生き残るのは僕の技量じゃ難しい。



だから助けてもらう。

 技術がないなら、技術以外で勝負すれば良い。



「わたしが……助ける……」


「前はダメだった、でも今は違うでしょ?」



森の中でも使いやすい魔法を三つも創った。

 どれも傑作と言えるものばかりで、スーなら全部上手く扱えるだろう。



「でも、わたし一人じゃ……」


「一人じゃないよ?鈴火も桜も、僕のことも、もちろんスーのことも守ってくれるから。」



一人で守る必要はない。

 僕も、スーも、鈴火と桜も、全員が全員を守れば良い。



「ええ、私も鈴火とスーのことを守りますよ。」


「……僕は?」


「…………うふふ♪」



おい今いい話してたとこだぞ空気読めつるぺたァ!

 そっちがその気ならこっちにも手があるんだぞ!



「……仕方ない、じゃあ鈴火は僕を守るってことで。」


「え?」


「そうなるか。わかった、任せろ。お前が危なくなったら私が守る。」


「は?」



後ろから聞こえる困惑した声が心地いい!

 これまでの経験上、桜に最も効果的にダメージを与える方法は確立されている。

 それは鈴火を僕の味方にすること!

 これをされたら桜はもう何も言えなくなる。

 勝てば良かろうなのだぁ!

 ただし稀にヤンデレが発動するので注意が必要です。



「いきなり何言ってるんですか?鈴火は私を守るんですよ?だって私が鈴火を守るんですから当たり前ですよね。それがどうして鈴火がリラさんを守ることになるんですか変じゃないですか変だとと思いませんか変ですよね。鈴火もなんで頷いてるんですか?私はこんなに鈴火のことを思ってるのに鈴火はそうじゃないんですか?いえ鈴火も私のこと好きですよね?好きに決まって……」


「はーいストップストップ、スーが怯えちゃってるでしょやめなさい。」


「…………桜、こわい……」



今日はヤンデレの日だったか。

 僕の服の背中側を掴んでるスーの腕が震え始めたから途中で中断させる。

 リアルと区別するために僕とスーのこと呼び捨てにしてたのに、僕にさん付けするって相当だね。

 鈴火も肩がびくってなってたし。



「……リラが悪いんですよ」


「そうだね、ごめん。鈴火に守られる役は桜に譲るよ。」



こういう時は早めに謝るに限る。

 経験上、曖昧なままで流すとあとあと酷いことになるのは分かるからね。



「分かればいいんです、分かれば……私も、怒ってすみませんでした。」



桜も根はいい子だから、自分に非があるならちゃんと謝れる。

 ただヤンデレな上にツンデレも入ってるハイブリッドな子だから、自分からは謝るのがちょっと恥ずかしいっぽい。



「って訳で、鈴火は桜を守るようにね。」


「よろしくお願いしますね、鈴火。」


「私に任せろ」



二人で鈴火にお願いすると、鈴火は振り返っていつもの凛とした表情で返事する。

 いやさっきまで桜にびびってたでしょ、とか思ってちょっと呆れてしまう。



「それはそれとして、リラにお前は私が守るって言ったことについては、あとでしっかりお話しましょうね。」


「……は、はい。」



前を向いてしょんぼりしたように肩を落とす鈴火。

 もうちょっとカッコいい状態を維持できないかなぁ?





微妙に締まらない雰囲気のまま、僕たちはついに外円街道の前まで到着した。





投稿が遅れた事実なんてなかった、いいですか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ