7/27-ぐだくだ道中膝栗毛
「……まだ慣れないね。」
朝もそうだったけど、ゲームにログインしたら隣でスーが寝てるっていう状況に戸惑ってしまう。
現在時刻は13時20分ほど、まだ誰もログインしてないみたい。
朝にログアウトした後、メッセージアプリで待ち合わせ時間を13時30分って伝えてあるから、もうしばらくしたら来ると思う。
「それにしても可愛い寝顔。確かスクショのやり方はっと……これか。」
カシャって音が鳴ってスクショが撮れる。
うん、いい画角で撮れた。
……これ、もしかしなくても犯罪では?
幼女の寝顔を盗撮する元男……。
ッスー…………よし、誰にも見せないようにしよ。
大丈夫、誰も存在を知らなければ、存在しないのと同じだよ。
「保存完了っと。……ログインするまでまだ時間あるかな?」
寝てるスーの頭を少し持ち上げて、その下の枕を抜いて代わりのものを入れ、そこに頭を下ろす。
「んっ……前よりちょっと重くなってる?たしか身長とか体格は弄ってないって言ってたよね。」
スーの頭を置いた膝にかかる負担から、スーが成長してることを感じ取れる。
膝枕、リアルでやったのは結構前だけど、その時はもっと軽かったのを覚えてる。
またリアルでやって確かめないとはっきりとは言えないけど、後何年かしたらもう出来なくなりそうだ。
「僕の身体も、成長してくれれば良いんだけどね。」
膝上の頭を撫で撫でしながら呟く。
そうすれば、もっといっぱいしてあげられるのに。
僕の身長と体重は、6年前から変化していない。
何を食べても、何を飲んでも、どれだけ運動しても、僕の身体には何の影響もなかった。
お腹は空くし、喉も乾く、運動すれば疲れも感じる、でも身体に変化はない。
まるで今のまま固定されてるみたいに、変化した後をダウンロードされてないみたいに。
最近じゃ病院に行っても、TSする病気の検査じゃなくて、変化しない身体の調査になってきてる。
進展しない病気の検査より、変化しない、老化しない身体や細胞の研究の方が、やってて意味があるっていう判断だろう。
「…………リラ?」
「さっきぶり、スー。」
なんて考えてたらスーがログインしたようで、スーのぱっちり開いた目が僕の顔を捉えた。
「んんー……膝枕?」
「そうだよ。」
久しぶりとは言え今まで何回もしてきたからか、すぐにどういう状況か理解するスーに、頭を撫でていた手を離して答える。
「…………」グリグリ
「わかったわかった、続けるからグリグリしないで、くすぐったいよ。」
スーが無言で僕の膝に頭を擦り付けるように動く。
これはスーからのもっとしての合図だ。
スー検定一級の僕には簡単な問題だよ。
僕はまたスーの頭に手を置いて、その銀色の髪をさわさわと撫でる。
「んふぅー……」
撫で始めると、スーは目を閉じて満足気に息をもらす。
ここまで気持ちよさそうにしてくれると、もっともっとしてあげたくなる。
「相変わらず仲良しですね。」
「お?桜じゃん、こんにちは。鈴火もね。」
いつログインしたのか、桜がベットから上半身を起こしてこっちを見ていた。
その横で鈴火が身動ぎしたのを見て、鈴火もログインしたことを確認する。
その後それぞれ挨拶して少し時間が経ってから宿を出る。
スーが中々膝から離れようとしなかったり、桜がそれを見て鈴火に膝枕しようとしたりしたけど、恥ずかしがった鈴火が早く行こうと部屋から出たので、事態は収束した。
「今日はまた森に行くんですよね?」
宿から出てすぐ、桜に質問された。
「そうだよ、お金稼がないといけないからね。」
昨日は道具に魔法とお金をいっぱい使ったから、依頼をこなさないとすぐに宿に泊まるだけのお金もなくなる。
「今日狩った分は今日中に解体して売ろうか。鈴火と桜は昨日の分もあるから、まとめてね。」
インベントリの中のものは、一応一週間は腐らないようになってるけど、置いておいても許容量を圧迫するだけだから、早めに処分するに限る。
「どうしてまた森で狼退治を?他のやりやすい奴でも良かっただろうに。」
「今フォレストウルフとかの狼討伐依頼の報酬が値上がりしてんの。」
多分大氾濫の可能性があるから、なるべく多くの人に、なるべく多く森にいる狼を狩って欲しいんだろうね。
「ちなみにどれくらい上がってるんですか?昨日へフォレスウルフ1匹で大銅貨1枚でしたよね。」
「今回はフォレストウルフ1匹につき大銅貨1枚と銅貨2枚だよ。」
「まあ値上がりと言ってもその程度か……。」
増えたのが銅貨2枚と聞いてちょっとがっかりしたように言う鈴火。
「……銅貨2枚でも、十分すごい。」
「そうだね、フォレスウルフに関しては元の報酬が高いから、銅貨2枚でも増えるだけすごいことだよ。」
他の首都周辺の討伐依頼は1匹あたり銅貨4〜6枚位なのに比べれば、元の大銅貨1枚でも十分に破格だった。
それを吊り上げたってことは、組合としても政府としても大氾濫の予兆を重く見てるってことだ。
「そ、そうなのか?」
「そうなの。……なんで戦闘中と普段とでここまで違うかな。」
戦う時とかはすごく頭の回転とか早いのに、どうしてこう普通の時はちょっと頭弱くなるのかな。
お陰でテスト前とかはみんなで鈴火に勉強を教える勉強会を開くのが常だ。
肝なのは鈴火1人に教える勉強会ってことと、そこまでやって平均点ギリギリってこと。
「そもそもが他の討伐依頼より2倍近い報酬なんだよ。それを2割も増やすんだから、十分すごいことなの。」
ここまで説明すれば大丈夫なはず。
「……なるほど、2割増って聞くとすごく感じるな。」
…………大丈夫、かなぁ?
「ほんとに理解してる?勉強会する?」
「え、いや勉強会はしなくていいだろ!?大丈夫だ、理解はしてる!……多分」
「おい」
今小声で多分って言ったな?
桜に目を向けると、桜はこくんと一つ頷いた。
「そ、そうだ!リラたちは夏休みの課題どこまでやったんだ?」
次いで鈴火を見ると、何かを察したのか焦ったように話題を変えてくる。
「僕はまだほとんど手つけてないよ。」
「そうかそうか、実は私も難しい所があってあまり進めて無いんだ。」
なら丁度いいね。
自分から飛び込んで来てくれるなら捕獲が楽でいい。
変わったようで変わってない話題に笑いそうになる。
「そっか。じゃあまたリアルで集まって勉強会しようか、課題の消化も兼ねて。」
「そうだな、それがいい…………え?勉強会?」
惚けた顔をする鈴火に、口がにやけそうになるのを抑えて、にっこりと笑顔を浮かべる。
勉強会からは、逃げられない!
「このまま放ったらかしにしてたら終わらないからね。それなら何処かのタイミングでちゃっちゃと終わらせよう。」
「それは良いですね。その方が鈴火もちゃんとするでしょうし。」
「お、おい、桜?」
「私が聞いた時は順調だって言ってましたよね?」
桜がちょっと暗い笑みを浮かべながら鈴火に詰め寄る。
焦って自分から地雷を踏み抜くなんて、鈴火、可哀想な子。
「スーもそれで良い?」
「うん。……リアルでも会いたいから、賛成。」
かわいいことを言ってくれるスーの頭をよしよしすると、スーはくすぐったそうに身を捩る。
さて、スーからも賛成を貰ったし、桜もやる気みたいだから決定だね。
話を振ってきたのは鈴火だからね、仕方ないね。
「と、言うわけで鈴火、今度勉強会するよ!」
「覚悟してくださいね?」
「どうしてこうなったんだ……。」
自業自得なんだよなぁ……。
前書き後書きに書くことがなくなってきた今日この頃。
これから前書きにも後書きにも何も書かないことが増えそうです。




