7/25-プレゼント
こんにちは、こんばんわ、おはようございます。
皆さんいかがお過ごしでしょう。
僕は元気ではありません。
家につきました。
新しめのアパート、その2階にある1番奥の部屋が僕の家になります。
「ただいま……。」
まぁ誰もいませんが。
えぇ、別に寂しくはないです。大人ですから。
それにご飯の時など、警護の人と一緒にいる時間もありますし。
というわけで、晩ご飯の支度をしていきたいのですが!
なんと現在、やる気が出ません。
「うぁー…アルターテイルほしかったなぁー…。」
そういうことです。
だから今日は手を抜いて、普通にご飯を炊いて、玉子焼きとかウィンナーとかでいいかなぁって思ってます。
ガチャっ!
「んぁ?」
「おかえり、望天。お邪魔します。」
「あぁ拍、ただいまー&いらっしゃい。」
突如現れたのはお隣さんで警護の人です。
名前は篠宮 拍で年は24です。
5年前からお世話になってる人で、護身術やら女性としての過ごし方などを教えてくれた先生です。
高い身長はおそらく175㎝はあるでしょう。
肩にぎりぎり届かないくらいでまとめられた黒髪は艶々で、よく手入れしているのが分かります。
キリッとした切れ目の中で夜空のように黒い瞳は、隠しきれない凛々しさを溢れさせています。
今は可愛らしいゆるっとした私服ですが、お出かけの時は動きやすいタイトな服を着ていて、そっちはそっちでカッコよくて好きです。
まぁ結論美人です。
ちなみに僕より年下です(実年齢は)。
なので呼び捨てにしてます。拍は僕のことを年下扱いするので呼び捨てにされてます。
お互い相手を自分より年下として接してるのが、喧嘩をほとんどしない一因です。
他の要因としては、まず拍がロリコンであること、それから、僕の恋愛対象が未だに女性であること、でしょうか。
まず一つ目の要因、拍がロリコンだということ。
小さくて可愛い女の子が好きな人です。
次に、いまさらですが僕の容姿を説明します。
まず背は低いです。150無いくらいです。
髪は長めで、色は黒です。目はちょっとタレ目気味で瞳は黒っぽい茶色。
護身術やってる関係で身体は引き締まってますが、体型はすとーんと直線的です。下向けば地面見えます。
結論、拍は僕に甘々です。
僕の嫌がることをしようとしませんし、めちゃくちゃ甘やかしてくれます。
2つ目の要因について、僕は普通に女性が好きですし、男と恋愛はできません。なんせ元男ですから。
そして拍は超が付く美人で、僕は女性が好きなので、僕も拍には甘々です。
「望天。」
拍が部屋に入ってきて、僕の座ってるソファに近寄る。
「どした?」
いつもより来るの早いなぁって思いながらぼんやり見つめる。
「アルターテイルの抽選、たしかはずれていたな?」
「うん…。落ちたけど…どうかしたの?」
「いや、これをな、渡そうと思って…。その、今年はまだ誕生日のプレゼントを渡してなかったから。」
そう言って手に持った包装された小さな箱を差し出す拍。
「?…ありがとう。あけていい?」
立ち上がって受け取る。
アルターテイルとの繋がりが見えず、疑問符を頭に浮かべながら聞いたことに、拍が頷くのを確認し包装を開け、中の箱を開け……る…と?
「え?これ、アルターテイル?なんで?」
訳がわからずに視線を向けると、拍はひとつ頷いて、照れたように笑って話し始める。
「抽選で当たったやつなんだが、私はゲームとかしないし、VR機器ももってないから。」
拍はなんでもないように言う。右手を頭の後ろにやって、はにかんでいる。
「いやいやいや、でも、アルターテイルだよ?いらないなら売りに出せば、いまならすごい値段になるんだよ?」
そう、なにも僕にプレゼントすることなんてない。
売れば車を買えるくらいのお金にはなるんだ。
「抽選に落ちた時、望天、凄く落ち込んでたろ?だから私が当たってるのを見たときに、これだ!って思って。」
頭の後ろにやった手を、今度は口元によせ、からからと笑っている。
「そんなくらいで人に渡す!?ダメだよ、拍が当たったんだから、拍がやらなきゃ!」
そうだ、VR機器がないなら買えばいい。今の時代そこまで高いものでもないし。
初めてやるVRゲームがアルターテイルなんて、すごいことだと思う。
「そんなくらいじゃない!」
「!?」
笑うのやめて、真剣な顔をする拍。
ちょっと怒ったような顔。久しぶりに見た。かっこいい。
あぁダメだ、頭が混乱してる。まともに動かない。声も出ない。
「いいか望天、私にとっては、そんなくらいじゃない。お前があそこまで落ち込んでるのを初めて見たんだ。その後の空元気も、見ていて辛かった。」
拍がまっすぐに僕を見る。まだ声は出ない。
お前なんて久しぶりに呼ばれた。ちょっとドキッとした。
「私はお前ののほほんとした笑顔が好きだ。見ていて癒されるし、ほっとする。その笑顔を見るためなら、私は喜んでこれをお前に渡す。」
拍は優しく微笑んでいる。かわいい。
まだ頭は混乱してる。でも、声はもう出せる。
「い…いの?…ほんとに、もらっちゃう…よ?」
掠れてて、震えてて、聞き取りづらい僕の言葉に、拍は答えてくれる。
「あぁ。お前の笑顔を見るためにプレゼントしたんだ。ぜひ受け取ってくれ。」
ずるい。ずるいなぁ。こんなの、断れるはずがない。
「あ…りが…と。拍、ほんとに、ありがとう。」
視界が滲んでる。泣いてるだなって自覚する。
最後に泣いたのいつだっけ?ってなって思い出す。
5年前に泣いたこと。あの時も拍に泣かされた。
僕の方が年上なのに、一方的に泣かされてる、情けないなぁっていまさら思う。
とりあえず、ごまかすために拍に抱きつく。
「私は笑顔を見たいんであって、泣かせたいわけじゃないんだけどなぁ。」
バレてた。ちくせう。
「むり。むりだよ。うれしすぎて笑えない。」
「頼むよ。私のために可愛い笑顔を見せてくれ。」
あーまただ。今日なんか殺し文句多くない?
なに?落としにきてるの?
でも残念、ゲーム一つで落ちるほど僕は安くないぞ!
でも
「……えへっ。ありがと、拍、だいすき。」
まぁ、これくらいはしてあげてもいいかな?
はい。
まだ2話目です。
なんか最終回みたいな雰囲気ですけど。
できれば100話は越えたいと思います。
でもこの密度の話は多分2、3回しか書けない気がする。汗