7/26-準備も無しに森に入るな、死ぬぞ?
ちょっと余裕ないので前書き、後書き省略します。
明日は17時に間に合うといいなぁ。
森の中に、叫び声がこだまする。
「くぅッ!リラ!そっちに1匹抜けたぞ!」
鈴火が、両手で持った刀を左上から右下に振り、袈裟斬りの一閃でフォレストウルフを両断しながら叫ぶ。
「ああもう何なんですかこの数は!」
器用にも木の幹を蹴って変則的な動きをするフォレストウルフを、桜は一瞥もせずに切り捨てる。
「魔法陣起動、『風刃』!もうやだおうちかえりたい……。」
「もう少しで街道だからっ!そこまで頑張ろ?」
僕は、鈴火と桜を抜けてきたフォレストウルフを適当に盾で殴って追い返し続ける。
スーは僕が対応できない個体を魔法で牽制してるけど、もう精神的にも魔力的にもやばそう。
そうなのです。
森に入った僕たちは今、休む間もなく、無限湧きしてるのかと思いたくなるような数のフォレストウルフと戦い続けています。
スーが精神的に疲労してるのは、フォレストウルフが何故か執拗にスーを狙ってくるから。
狙いが分かってるから対処もしやすいけど、狙われてるスーの精神が20分くらいで限界を迎えた。
なので少し前に森を突っ切って街に帰るルートを変更して、今は近くの街道の方に向かってる最中。
街道でなら対処も簡単だし、どこからくるか見えるから心に余裕もできる。
ただ、敵の数が多すぎてなかなか思うように進めないんだよね。
鈴火と桜がスーを中心に円を描くように回りながら敵をばんばん斬ってくれていたから、街道まであと少しという所までは来れた。
でもその代償に2人に相応の体力を消費させてしまった。
「2人とも!こっち来て!」
流石にそろそろまずいかと思って、2人を呼び戻す。
「こいつら、はぁ……、相当街道に、はぁー……、行かせたくないようだな。」
「ふぅー……、私たちを街道に出すことが、こいつらにとっての敗北なんでしょうね。」
まだふらついたり切っ先がぶれたりはしてないけど、息が上がってしまっている。
仕方ない、不確実な手はあまり使いたくないけど、このままだと確実に死ぬことはハッキリしてる。
なら、なるべく生き残る可能性の高い道を選ぼう。
「魔法陣起動、『継続治癒』。」
発動準備だけして置いていた治癒魔法を2つ起動させ、鈴火と桜の傷を少しづつ治させる。
2人ともギリギリで攻撃を避けようとするから、かすり傷が結構多い。
「ありがとう。」「助かります。」
僕とスーの近くまで来た2人は、治癒の礼を言いながら敵を斬り続ける。
「そのままでいいからちょっと聞いてて。」
2人に聞こえるように少し声を張って作戦を伝える。
「鈴火はスーを背負って街道に走って。桜は鈴火の前を走って敵の掃除をお願い。」
「ああ、分かった。後ろは任せた。
「それが良さそうですね。」
鈴火と桜にはそれだけで伝わったようだ。
「…みーちゃんは?」
不安気に聞いてくるスーに、説明するべきか少し悩む。
でも下手に嘘をつくと後が怖いので、ここはちゃんと伝えておこう。
「僕は鈴火の後ろ、殿ってやつだよ。その方が効率的だからね、盾持ってるし。」
盾を持ってる現状、僕は速く走れない。
でも盾を持たなきゃこの数相手だとすぐ死ぬ。
なら一番後ろで囮やってる方が全員の生存率は上がる。
「そんなっ!それなら、わたしが!」
「いや妹分を囮にとか出来ないから、良心的に。スーは鈴火の上で魔法を使って援護をしてて。」
スーの訴えを却下して、スーにも指示を出す。
スーは優しいから、森への突入を1人反対した僕を囮に、賛成した自分が1番安全な場所に配置されることに罪悪感を感じてるんだろう。
「しィッ!ふぅ……スー、行くぞ。」
フォレストウルフの頭を木の幹と柄頭で挟み粉砕した後、鈴火はスーの前に来て背中を向けてしゃがむ。
「うぅ……でも、みーちゃん……。」
「ほら、早く鈴火に掴まりなよ、間に合わなくなっちゃうでしょ?」
まだ迷ってるスーの背中を押して鈴火の背中に押しつける。
「みーちゃん…ごめんね、わたしがわがまま言っちゃったせいで……。」
「いや、別にそこまで気にしなくて良いよ?」
スーが鈴火の背を掴みながら、涙声で謝ってくる。
いや、どうせ死んでも街で生き返るわけだし、そこまでシリアスにされると反応に困るんだけどなぁ。
「桜!こっちは準備完了だよ!もう敵はおいて街道に向かって!」
「わかりました!また後で会いましょう!」
桜は右足で地面を蹴り左足の踵を軸に素早く回転し、左から迫っていた魔物を横薙ぎで斬り裂き、街道の方に身体が向くとそのまま駆け出す。
「鈴火!桜に遅れないようにね!」
「了解!……すまないな。」
鈴火がスーを背負って立ち上がり桜の後を追う。
通り過ぎる時に敵を斬りつけることも忘れない。
スーがいるからか首ではなく足を斬っているけど。
僕も鈴火の後を盾を構えて追う。
「今度ジュース奢りで。」
「10本くらいでいいか?」
「そんなに飲めるか!」
最終的に賛成したとはいえ、最初に言い出すしたのは鈴火だ。
ジュースくらいは許されるでしょ。
「っと、らぁ!」
横から飛び込んでくるフォレストウルフを盾を薙いで弾き飛ばす。
走ってしばらくすると流石に鈴火と距離が空いてきた。
そもそも地力が違うし、僕は鈴火みたいに走りながら綺麗に攻撃はできないから仕方ない。
「みーちゃん!魔法陣起動!『風刃』!」
「ありがと!」
盾を薙いだ方と逆側から迫っていたフォレストウルフが、スーの魔法で切り飛ばされる。
助かった、噛みつかれてたら詰むところだった。
スーが後ろを、僕を気にしていたからやられずに済んだ。
だけど……
「スー!後ろは気にしなくていいから!桜の援護をお願い!」
「なんで!さっちゃんならまだ大丈夫でしょ!」
「いや、そうでもなさそうだぞ。少しづつ残ってる敵が多くなってるし、桜の動きも悪くなってきた。」
そう、鈴火の言う通り前方、桜が殺し損ねたフォレストウルフの数が増えてきてる。
僕から桜は見えないけど、数か疲労かあるいは両方の理由で段々手が回らなくなってきてるのは事実だろう。
「前が詰めば全員詰む!だから桜の援護を!」
「……うん、わかった。魔法陣起動、『風刃』。」
スーも桜の状況と僕たちの現状を頭では分かってるから、渋々ではあるけどちゃんと前を見て魔法を打ち始める。
「っ!鈴火ぁ!」
ガンッ!
「ギャウン!!」
鈴火の斜め後ろから襲いかかるフォレストウルフが見えた瞬間、盾をぶん投げてた。
あー、やっちゃったよ。この後どーしよ……。
盾がないと攻撃を凌ぎながら走れない、でも盾を拾ってると鈴火との距離がさらに開く。
「リラ!」「みーちゃん!」
「問題ないよ!止まらないで!」
敵に盾が当たった音と、敵の呻き声、それらの音の近さから鈴火は僕が何をしたか理解したらしい。
スーは音に驚いて振り返り、僕の手に盾がないことに気付いて何があったか理解したようだ。
「また後でね!」
もう仕方ないから、盾まで駆け寄って拾い上げ、完全に足を止めて攻撃に備えると、すぐに囲まれた。
ぱっと見ただけでも15は居ると思う。
まあ最終的に死んでも街でリスポンすれば会えるから嘘はついてないし問題ない、と思いたい。
「魔法陣起動、『継続治癒』。……さあ来い犬っころ、簡単には死んであげないよ?」
この数相手に、何分持つかな?
スーたちが逃げる時間くらいは稼ぎたいけどね……。




