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リリの大冒険!  作者: 白龍
5/13

村の宿屋にて

村人たちはオニマの呪縛から解放されたらしく、次々に目を覚ました。

ボロボロになった村、オニマに取り憑かれていた事、そして喋って動く人形の二人に驚きつつも皆は安心して良い事をすぐに悟った。

しかし、同時に村を救ってくださった英雄…理子が倒れてしまった事を知り、村人たちはすぐに理子を抱き抱えた。

…と言っても、理子は人形だ。一人の若い男性が両手で理子を抱え、ある場所へ連れていった。





そこは…かつて理子がいた宿屋だった。

リリと妖精も村人たちに宿屋に連れてこられる。


「ここが理子がいた宿屋か…」

理子を心配しつつも、宿屋には花の美しい匂いが溢れ、木製の壁や床は光輝いていた。

多くの村人たちが宿屋に来ていた。人目で良いから生きる人形を見てみたくなったのだ。

リリが廊下を歩くと、村人たちは踏み潰さないように道を開ける。

左右に人々が装飾品のごとく規則正しく並び、自分はその真ん中を歩く…まるでお姫様にでもなったかのようだ。

…その時はじめて、リリは自慢の青いドレスが汚れてる事に気がついた。

リリは村人の一人の青年にある事をねだる。

「ねえ、お風呂入りたい」

青年はえっ、と表情を変える。


青年は顔からして歳は高校生くらいだ。さすがに何年生かは分からない。

回りの人達はその青年に肘を向けてニヤニヤ笑って見せた。

「ヒューヒュー、お風呂に入れて差し上げなよ!」

「な、何を言うんだ!」

青年は怒った顔をしつつも、リリを抱えてどこかへ向かいだした。




「…」

青年は両手の指でリリのドレスを持っていた。

彼の後ろでは、布一枚を結んだだけのタオルを体に巻いたリリが入浴を楽しんでいる。

勿論人間用の風呂に入れればリリは溺れてしまう。

という事で、少し大きめのコップにお湯を入れただけの風呂だ。宿屋の贅沢温泉など必要なかった。

青年は何も言わないのも気まずいのか、自己紹介を始めた。

「…俺、山野長介。君は?」

「私はリリ!ところでどーして目を背けてるの?」

長介は、いくら相手が人形と言えど混浴など行った事のない彼は慣れてなかった。

とりあえず、気まずさを誤魔化す為に何とか話題を探した。

「…オニマを倒すなんて凄いね」

「いや…あれは実質理子が倒したんだ」

笑う理子の前で、自分の手を見る長介は語った。

「俺、小さい頃に母さんを亡くしてんだ。…ある殺人魔にやられて」

長介は辛そうに話す。リリは黙って、笑顔を崩して聞いていた。

「不可能かもしれないのは分かってる。でも、俺はいつかそいつに復讐したいんだ。母さんを殺したあいつに…。…その為に、オニマを倒した村人や、理子みたいに強くなりたいんだ」


長介は辛い過去を持ちながらも、強くなりたいという夢を持っていた。やはり青年だ。

「…そっか」

リリが湯から上がる、小さな音が聞こえてきた。




窓の外を見ればいつの間にか夜になっていた。

星空が綺麗に地上を見つめ、狂っていた村は再び平和が訪れた。

「今夜はここでゆっくりしていってください。美味しいご馳走も用意してますよ!」

リリは大喜び。

妖精とも同行し、ちょっとした旅行気分で向かった食堂には、美味しそうなご飯がズラリと並んでいた。

「こんなに食べらんない!」

「ご安心ください。村の者と会食を楽しんでいただきたいのです。リリ様のお席はこちらです!」

見ると、机の上にちょこんっとオモチャの椅子と人間が食べる半分くらいの量のご飯が。

「やった!!」

リリはご飯に飛び付いた。




妖精は、人形がご飯食べて良いのか…?と突っ込もうとしたが、リリは何の問題もなく食べてるので大丈夫なのだろう。

村人たちと話し、時には笑いあい、両手でご飯粒を持ちながら頬張るリリ。



食べ終わってからも村人たちと楽しい一時を過ごし、妖精は微笑ましく見つめていた。



その後…リリは理子が寝かされてる寝室へと連れてこられた。

押し入れに囲まれた和室だ。村人が眠る布団、そして小さな布団がこれまたちょこんと置かれていた。

そのうち一つに、日本人形が眠っている。理子だ。

「理子!」

「ん…リリ?」

妖精は理子に寄ると、安心した声で言った。

「熱は下がってるみたいね」



理子はあの時、オニマを押し返した際に明らかに力が大幅に上昇していた。

村を守るという心が、彼女を変えたのだろうか…。

「リリ…私に何が起きたのかしら」

聞かれても分からない。

…だが、一つ明らかな事があった。





理子は、この村が大好きなのだという事だ。

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