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リリの大冒険!  作者: 白龍
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オニマとの戦い

ここが私の住む村よ」

理子の案内でついた村は、森の目立たない場所にひっそりと存在していた。

木製の家に昔ながらの水車…いかにも日本風、そして「村」という言葉が似合う場所だ。

村人たちは家に籠ってるのか、誰一人として歩いてる者はいない。まるで無人のようだ。

ふと見ると、村の中心に何かが刺さってるのを発見した。

土の地面に刺さってるそれは、石碑だ。

「あんな物、私が村を出た時にはなかったわ…」

リリと理子は跳ねるように石碑に近づき、見上げる。


そこには古ぼけた字で、文章が綴られていた。

「オニマを崇めよ…ってひたすら書いてあるわ」

普通の文字ではない。

リリと理子には読めない文字だが妖精は易々と解読した。


「オニマって聞いた事あるわ」


この村にはかつてオニマという巨鬼(きょき)がいた。

オニマは毎日村の酒を盗んだり時には村の家を破壊したりと暴虐の限りを尽くしていた。

だが、そこへ村の戦士たちが現れた。

戦士たちの強さは圧倒的。それもそのはず。

彼らの正体は、必死に修行の末、怒りのままオニマへの反逆の意を示した村人たちだったのだから。オニマは刃の前にたちまち倒されてしまった。

そしてオニマの魂はこの村の奥深くに封印されたという。


「そのオニマを崇めるという石碑がたってるって事は…オニマが復活したって事?」

リリの目を見て深く頷く理子。何でかは分からないが、それくらいしか思い浮かばなかった。

「オニマね…私達妖精の間でも知られてる有名な鬼よ。確かやつは塩が苦手だと聞いた事があるわ」

妖精はオニマの情報をよく知っているようだった。

もし村人たちが凶暴化したのとオニマが関係あるのなら、村人に塩をかければどうか…?



二人は村人に気づかれないように家へ入った。

家の中は質素で、戦時中の家のようだが平穏な時間が流れてるように見えた。

「村人よ」

理子が呟いた先には、斧をまな板に叩きつけて笑う村人が立っていた。

恐ろしさにリリは凍りつく。理子は慎重に、周囲を見渡した。


上の方を見渡すとそこには壺が何個かたててあった。

そのうち一つに、「塩」と書かれてある。

「棚に塩が入ってる…」

小さな二人は、家の中で山登りならぬ棚登りを強要される事となる。



「はあはあ…」

最初に息をあげたのはリリ。

長らく店で棒立ち生活を送っていた彼女にこの高さはキツいのだ。

木製の棚の細い側面をよじ登り、ゆっくりと壺へ向かっていく。

「リリ頑張って。あと少しよ!」

妖精は手がないので塩を押し倒せないのだ。必死に登る二人を応援するしかなかった。



ようやくついた二人は、高い棚の上から村人を見下ろす。

店に飾られていた時代を思い出すリリは、何だか頭が痒くなる。

「さあ、見つかる前に早く塩をかけるわよ…」

理子とリリは二人で塩の壺を押す。

「せーの…!」

思った以上の重さだ。

リリは人形なのに顔を真っ赤にして歯を食い縛る。

理子も全力を込めて壺を押していく。妖精は、それをただ見てる事しかできなかった。

「二人とも、何もできなくてごめんなさい…。あっ!」

妖精はまずい事に気づく。


「誰だそこにいるのは…」

村人が気づいてしまったのだ。

斧を片手にこちらを睨む姿は、まさに獲物を見つけた狼…!

「きゃー!!」

しかし、不幸中の幸いとはこの事。丁度二人の前の壺が落っこちたのだ。

更にこちらを見上げていた事もあり、村人の顔面に見事直撃!

開いた蓋からは白い塩が霧のように飛び出し、村人は手で塩をあおぐ。

そのうち村人は目を見開いて苦しみだした。

「うぐぉ…」

激しく息を吐き、喉を抑える。



塩が晴れたまさにその瞬間だ。

村人の口から、赤い何かが飛び出してきたのだ!

その時、声をあげたのは妖精だった。

「あれは…!嫌な予感がする!」


その赤い物は、光を放っていた。しかし妖精の物とは違う、禍々しい光だ!

光は家の窓をかち割り、凄い勢いで外へ飛び出した。




三人が外へ出ると、そこには無人だったはずの村に無数の村人達が走り回っているという、大きく変貌した村が広がっていた。

例の光は村の上空で神々しくも禍々しく光り、村人たちに何かの波動を放ってるようだった。

すると村人たちの口から同じような赤い光が飛び出してくる!

それらは全て引き合うように近づき、融合しあい…一つの巨大な光となる。

光は徐々に何かの形へ変わっていき…。




赤い鬼の姿となった。

リリたちの前に現れたその赤鬼は、3メートルほどもある。

リリたちから見ればまさしく大巨人。見上げていると首が痛くなってくる。

まさしく妖精の知る鬼、オニマだ。

オニマは豪腕を振り下ろす。

大地全てが揺れ動くかのような衝撃が走り、リリたちは空中に投げ出されてしまう。

オニマは恐ろしい声で怒鳴りつけた。

「この俺に塩をかけるとは…覚悟はできてるな!?」

オニマは怒り狂い、両腕を振り回し出した!

腕に直撃した家々がオモチャのように砕かれていく。

理子は刀を取りだし、オニマの足を切りつける!

小さな痛みが、ツンっとオニマを刺激した。

オニマは小さな人形相手でも容赦なしに拳を振り下ろす。

土砂のなか、理子の目の前に石ころが飛んできた。

「理子!」

理子は石ころを両手で受け止める。

そしてオニマの顔目掛けて投げ飛ばした!

自分と同じくらいの石を易々と投げ飛ばしたのだ。

石が顔面に直撃したオニマは顔を抑えて苦しみ、大口を開けて威嚇するような咆哮をあげた。

「おのれー!!」

オニマは村人たちを踏み潰そうと足をあげる。

村人たちは昏睡状態に陥り、地に伏していた。このままでは危ない!


理子は迷わずオニマの足に刀を突き刺し、両手に全力をこめる。

巨大なオニマの足は抑えてる理子を今にも踏み潰さんばかりの勢いだ。

足に痛みが走り、一瞬動きを止めるオニマだが、日本人形に鬼が負ける訳がないとニヤリと嘲笑った。

少しは遊んでやろうとわざと力加減をし始める。

それでも理子はやはり今にも踏み潰されんばかりに腕が震え上がる。

リリも理子に加勢し、二人でオニマの足を押さえ付けようとするがそれでも力が足りない。

このままでは二人の腕の骨組みがバキバキに折れてしまう。

妖精はせめてオニマの前でウロウロしてみせるがオニマは気にもとめない。


理子の頭に、村人たちの笑顔が、日々が流れ行く。

(させない…!そんな事、させない…!)

人工の黒髪が、フワリと揺れ始めた。

理子の心に屈する心や不安な心は一切なかった。ただただ村人たちを自分の暮らした村を助ける事だけを考えて…。

その時、理子は体が温かくなってきたのを感じた。


「おおおおお!!!!」

理子の刀が黄色く輝き、一気に腕を伸ばす!

「何だ!?」

何と、オニマの足は理子の勢いに負けて押し返される!

そのまま仰向けに倒れ、その衝撃でリリの体が飛び上がるが、理子はドッシリと構えて一歩も動かない。

「私の村は、指一本触れさせない!おりゃあああ!」

理子は決意を固め、天高く飛び上がるとオニマの醜悪な顔目掛けて刀を振り下ろす!

刀はオニマの額に刺さった!

オニマは息を大きく吐き、静かに痛みに悶えた。


「おのれ…許さんぞ…!」

苦し紛れにオニマは倒れたまま理子を掴み、力を入れる。

理子は激痛に目をつぶり、叫ぶ。

このまま道連れにされてしまうのか…!!



「ぎゃあああああ!!!」

唐突に叫び声をあげるオニマは理子を離す。

その時、理子はオニマの手に何か紫色のラインが通過し、彼の手を切りつけたのを見た。


オニマは手を抑えてもがき苦しみ、同時に全身が赤く光り、徐々に体が小さくなっていく…。

光の眩しさに、理子たちは顔を覆った。



「…?」


直後、目を開くとそこには赤い光の玉が浮いていた。

玉はリリたちの前で上下に浮き沈みすると、凄い勢いで空へと飛んでいった…。




「…ばんざーーい!!」

リリと妖精はお互い向き合い、十人もの人が叫ぶような大声で大歓声をあげた。





「…守った。村を…守ったのね…!」

理子は疲れきった関節を曲げ、地面に膝をついた。

そして、目を細めるとその場に倒れてしまう。

「理子!」

リリが理子を抱き起こすと、理子は凄い熱を放っていた。

妖精は焦った口調で言った。

「大変だわ…!凄い熱!」





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