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緑色の体はゴブリンさん



  * * *




 ピピピピ、ピピピピ、ピピピピッ!


「……ん、もう朝か」


 あっという間だな。少しは寝られたが、この入り込んでしまう性格はなんとかしないとな。でも無理だよな。


 ゆっくり立ち上がり、体を慣らしていく。


「ん。ふー。あー」

 ストレッチだよ。からのぉ、《洗浄》祭り!×3


「ヤッパこれだねー。スッキリっす!」


 朝1杯の〈水〉と〈洗浄〉は必須だね。確定事項だ。法律で定められてるかもよ?


 さてと、持ち物を回収。石戸も《ロック解除》して回収。重い足取りでLDへ向かう。


 ミラはいないようだ。まだ寝てるかな。初めての土の中じゃあ、時間の感覚(つか)めないからね。仕方ない、朝飯の準備でもしましょうかね。マジックバッグから出すだけだけどさ。


 *


 やはり、ニオイに釣られてやってきたか。この、食いしん坊属性持ちめ。部屋まで起こしに行くのもなんなんで、《送風》で食卓の匂いを部屋に送ってあげた。俺優しくね?


「おはよう、ミラ。よく寝られたか?」


「おはようなのじゃ。わしはグッスリじゃったぞ。土の中がこんなに心地よいとは思わなかったのじゃ。はははは」


「それは良かったよ。この快適さを理解してもらえたようで嬉しいよ」

「おぬしは何をしておったのじゃ? 眠そうな顔をしておるぞ」


「ああ、ちょっと魔法の検証をね、おかげで少し寝不足だ」


「おお、おぬしは凄いのう。これだけの魔法を使えるというのに、まだ検証する必要があるとはのう。ふむ。それがおぬしの強さの秘密という事かの」


 何か言ってるけど、朝飯にしましょうかね。俺も腹減ったし。

 今日は、サンドイッチみたいなごついやつと、リンゴジュース。パンがゴワゴワしてて、噛み応えバツグン。必然的によく噛めるね。量もたっぷりだから、ミラも満足なんじゃないかな。


 でも、俺にはあんまり匂いを感じられないけど、この匂いで起きてきたんだよな? すげーな、ミラ。食いしん坊属性持ちのチカラは伊達じゃないんだな。


「ふむふむ。これもおいしいのじゃ。何から何まで世話になりっぱなしなのじゃ。あ、おかわりはあるのかのう」


 まだ食えるんかい。俺は朝は少しでいいタイプだから、これで十分なんだけど、足らんのか。仕方ない。


「はいよ。も1つどうぞ。飲み物もまだあるから、この際だ遠慮しなくていいからな」


「おお。タビトはホントに優しいのう。ありがたくいただくのじゃ」


 ペロリといきましたね。さらにもう1つ追加して終了。遠慮するなとは言ったが、こりゃあ食費も大変だ。良かった、オイラ少食で。


  * *


 手早く各部屋を回り、忘れ物がないかを一応確認。


「よし。じゃあ、出発しますかね」


 シェルター〈専用石戸〉を《ロック解除》する前に、少しズラして小さめの《落とし穴》《加工》で天井に穴を開ける。下から落とし穴ってどうなのよ、とは思うけど仕方がない。外の様子を安全に確認するためには必要な事なのだよ。あけち君。


 いきなりゴブリンさんとか座ってたらイヤじゃん?


  *


 問題もなさそうなので、〈専用石戸〉を《ロック解除》して回収。外へ出る。


 うーん。朝日が心地良い!


「あー。今日もいい天気だなぁ。朝日がまぶしいねぇ」

 日光って、大事。体内時計をリセットしてくれます。


「よし、ミラ。片しちゃうから、ちょっとこっちに来ててくれ」


「うーん。気持ちがいいのじゃ。開放感なのじゃ。やはり日の光はいいのじゃ。」


 ミラもそうか。土の中に一晩いたわけだからな。初めてなら、なおさら開放感あるよな。うん。俺もだし。こういう感性は同じなんだね。


 安全を確認し、両手を地面につけて《解放》で発動させた魔法を取り除く。自分で作成した物なら、1日2日程度ならなんの抵抗もなく、あーらスッキリ。元通り。どんな原理なんだろね? 便利だからいいんだけど。


 今回は前回の反省を活かして、エフェクトはなしの方向で。せっかく登録したのにね。



「おし、完了。出発の前に森の様子と方向を確認するから、もうちょっと待ってくれな」


「あい、分かったのじゃ。それにしても、もう終わったのか? あれだけの大きさの物をか……。さすがというべきかのう。まあ、よろしく頼むのじゃ」


 さてさて、いつもの《櫓作成》どん!



「……これはまた、とんでもない事を平然としよるのじゃ」

 ミラが櫓を見上げて驚いている。ちっちゃいからね、そりゃ驚くわな。


「この上から見れば、目標になる目印を見つけやすいからね。方向も間違えにくいし、森の様子もある程度は確認できるから便利だぞ。ミラも登ってみるか? 高い所が平気なら、気持ちいいぞ」


「おお、よいのか? それなら、わしも登るのじゃ」


 ハシゴじゃ登りにくいしだろうし、螺旋(らせん)階段を増設しましょうかね。

「じゃあ、楽に登れるように階段も作るから、ちょっと離れててくれよ。……よっと」


 イメージもしっかり出来てるから、簡単にできそうなのに、なんだろ、結構厄介だな。真ん中にドーンと柱建てて、そこを中心に踏み板を出していけばいけると思うんだけど。


 あ、何か凄い時間かかりそうだわ。やめよ。ちょっとずつズラしていって、空間確保してとか、均等にできそうにないな。俺の魔法もまだまだって事だな。よし、こういうのは、今後の課題だな。


 いつも作ってる階段みたいに、普通に櫓の外周を登るような外階段にしよう。うん。そっちのが早そうだ。壁を徐々に長くして立てていく感じだから、簡単だわな。下から伸ばしていくだけだしね。


 今回は大物だけど、外周の面毎に移動して作っていけば問題なさそうだな。初めてやる時は慎重に。そうしよう。誰でも登ってこれちゃうけど、そこは目をつぶって。とっととやってしまいましょうかね。


 ズズズズ…………



 くっそー。今更言うのもなんだけど、地面に手を付けるならやはり、エフェクトが欲しい。俺としたことが、情けない。次から気をつけよう。ミラに一言必要だからな。うん、次回からそうしよう。


「お待たせ、じゃあ行くよ」

 モンスターが現れたら、外階段だけ《解放》してやればいい。ハシゴは残してあるから降りるのは問題ないし。こっちのが登るの楽だから、今度からこうしよう。そうしよう。


  *


「おおー。やっぱりいい眺めだな」


「これはまた、よく見えるのじゃ。ちと怖い気もするがのう」


「慣れれば大丈夫なもんだぞ。ここから見れば、いろいろ確認もできるだろ? 水場とか、道とかもさ。それに目標物さえ決めておけば方向を間違えなくて済むし、ミラにはありがたい物だと思うぞ」


「言われてみれば確かにそうじゃが、こんなものは、簡単には作れんぞ、普通は」


「ミラは土魔法は使えないのか? 使えればすぐにできるようになると思うけど」


「わしは、土魔法は使えん。使えるのは《火》と《風》だけじゃ。攻撃特化じゃしの。土の魔法使いでも、ここまで簡単にはできんはずじゃ。おぬしは規格がおかしいのじゃ」


 おう、そういうもんなのか。俺も規格ってのはよく分かってないしな。うん。また参考になったよ。

「そういうもんなんだな。ありがとうな、教えてくれて。また何か気づいた事があったら教えてくれよな」


 そっか、ミラは攻撃特化の〈火〉と〈風〉を使うのか。基礎生活能力のない方向音痴の脳筋魔法使いなんだな。あ、ちっちゃい入れるの忘れてた。怒らせると燃え上がっちゃう訳ね。〈風〉も使うから、さらに激しく。気をつけよう。うん。



 ぐるっと周りを確認していると、集落らしき建物を発見。よく見ないと分からないくらい森に溶け込んでいるから判断しにくいが、村でもあるのだろうか。

「ミラ、あっちの方に集落っぽいのがあるんだけど、見えるか?」


「ん、あっちか? どれどれ、……ん~、確かに集落みたいじゃのう。柵もないから村ではないのか? ……なんじゃのう。モンスターかのう?」


 えっ、見えるの? 俺には何となくしか分からないよ。凄いのね、魔人さんて。身体能力がちょっとだけ高いとか言ってなかったっけ? ちょっとの基準が分からんわ。


 あれ、…………あれれ~~。できるよね? できると思うよ。

 レンズの原理使えたよね。昨日やったばっかじゃん。俺アホアホ。


 凸レンズも凹レンズもいけたんだから。しかも体に纏わせられるわけだから、……うん。俺自分がよく分からんわ。はよ気付けってか。忍者だーとか忍術だーとかアホな事ばっかやってたからな。深夜のテンションで。人間、「冷静さ」も大事だね。


 目の周辺に纏わせた《水》をレンズにして、《光》でなにかと調整していけばいいわけで……


 双眼鏡は、対物レンズと接眼レンズの組み合わせで見る対象を拡大させる物。一般的には両方とも凸レンズだったか。いや組み合わせた方が簡単だったか? 後で調べよう。

 そうすると、上下逆さまになった像を見ることになるから、間にプリズムを入れて反転させればよくて。さらに、ピントの調整用にもレンズがあって……


 うーん。まあ、ここは難しく考えないで、魔法のレンズで遠くをよく見えるようにお願いねーみたいな……


《光学迷彩》ができたんだから、俺にはできる!


  *


 あ、コツが分かってきた。よく見えますね。

 はい登録します。《双眼鏡》でいきます。俺専用。


「おー。確かに村ではないな。……人は、…………いなさそうだな。代わりに緑の人がウヨウヨいるみたいだわ」

 やれやれ。()りにも選って、オイラの進行方向ではあーりませんか。


「……そう言われてみれば、緑の物体が動いておるような気もするが、おぬし見えるのか?」


「ん? ああ、クッキリとまではいかないが、それっぽい感じ? は見えるかな」


「おお、おぬしは身体能力も高いのじゃな。全く何から何まで……」


 まあ、魔法使ってますからね。出来立てほやほや。温かいうちに召し上がれってね。


「うーん。俺が進みたい方向なんだよなぁ。ミラ、多分ゴブリンの群れがいる。巣っていうのか? 結構な数がいそうだけど、戦えるか? 共存共栄できるような知能があれば別だけど、ただのモンスターなら殲滅(せんめつ)させる。どうだ?」


「ほう、ゴブリンの巣があるじゃと? 数にもよるが、恐らく大丈夫じゃろう。ただし、上位種がいた場合には注意が必要じゃのう。モノによっては魔法も使うし、装備持ちも数がいれば厄介なのじゃ」


 へー。やっぱりいるんだ上位種が。そいつは楽しみだな。どんな魔法使うのかな? 痛いのヤだけど、興味はあるな。


「詳しいんだな、ミラは。ちなみに、その上位種とは話が通じたりするのか?」


「何をバカな事を言うておる。モンスターと話が通じる訳がなかろうに。知能のあるドラゴンならいざ知らず。赤目のモンスターなぞ、会敵即殲滅(かいてきそくせんめつ)が基本じゃわい」


 やっぱそうなのね。モンスターとの共存共栄は難しいと。しかも「ドラゴン」もいるのね。いるんだね。声の人が言ってた『めちゃくちゃ強いモンスター』ってドラゴンのことか。いやー。参ったね。名前だけで負けた気がする。会いたくないわ。肉はおいしいとかのフラグがあってもイヤだね。俺は逃げたい。


「そっか、そういうもんなんだな。また教えてくれて、ありがとうな。じゃあ、安らかな世間の平和のためにも、やっちゃいますかね。いいか? ミラ?」


「勿論じゃ。おぬしの戦いも気になるしの。ワシも参戦するのじゃ。ワシの強さを見せてやるのじゃ。ははははは」


 おう。やる気満々ですね。さすが脳筋ちみっ子魔法使い。いや、基礎生活能力のない方向音痴の脳筋ちみっババ魔法使いだ。

「おしっ。じゃあ、いっちょやりますか!」



 作戦会議はすぐに終わった。


【各自ガンガン頑張れ!】って事になった。連携なんて簡単にはできないしね。聞けば、ババなのに、格闘の方もそれなりにこなすらしく、遠近両用の脳筋ということが判明した。


 俺は俺で気にせず好きに動いていいみたい。そりゃあ楽でいい。試したいのがいろいろありますからね。天気も良いし、快晴です。ふふふ、ふふふ。




【追加登録された魔法】


★《双眼鏡》目の周辺に纏った〈水〉によるレンズ、〈光〉の調整により遠くの物を拡大して見る事ができる


◇◇◇◇◇


~~レンズ~~ 


 実際に、多くの光学機器では、凹凸レンズを何枚も組み合わせて利用している。

 凸レンズと凹レンズを組み合わせるだけでも遠くの物体を見ることができる(オペラグラス等)。凸レンズで集められた光が、凹レンズを通って平行光線となって出てくるという原理(ガリレオ式望遠鏡)。

 凸凹の組み合わせに1枚の凸レンズを加えると、簡単な望遠レンズができる。前の凸凹レンズで倍率を上げて、後の凸レンズで像を結ぶ。さらに、凹凸レンズを加えて凸レンズと凹レンズの間隔を動かすようにすると、倍率を任意に変化させることができる。その後に結像のための凸レンズを加えると、自由に倍率を変えられる望遠レンズのできあがり。これがズームレンズの原理。


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