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国境の町 オデルローザ 変革の行方



 俺が拠点を作ってる間、みんなには周りの探索に出てもらった。環境の確認ね。何があるか分からないので、子供達は残して、ミラ、パブロ、ルイの3人で。


 久しぶりに〈櫓〉を作成し、〈双眼鏡〉で周囲を伺ってみたけど、以前と変わりなさそうな感じだった。みんなも喜んで櫓に上がってたから、高い所も大丈夫そうだね。



 住居スペースが完成したら、岩山の上にも見張り台でも作ろうかな。わざわざ外に出なくてもいいようにしよう。より安全で快適に。どうせなら、国境と同じように壁で囲んじゃうか?


 まあ、それも含めて、そう言うのはまた明日以降にしよう。



 3人は、日が落ちる前には戻っきてくれたけど、かなり広い範囲を確認出来たみたいだ。結果は、問題なし。オールグリーンだ。森の中だけに。


 ゴブリンさんの殲滅跡に新たなモンスターズが住み着くでもなく、例の毒キノコが沢山生えてたらしい。今回は探索を優先し、回収はしていないみたいだけど、よくミラが堪えられたと思ったら、まだ前回の分が残ってるらしく、それ程抵抗もされなかったとのこと。でも抵抗はしたんだね。流石のミラクオリティです。


 ま、俺が〈殺菌〉加工しなければ、ただの毒キノコ。自分達が殺られそうになったブツだからね。



『ジャンボシイタケ』。これは、ここのウリになる。一大名物料理として成り立つと思う。門外不出の品だ。死んじゃうからね。危ない危ない。


 だからこその価値もある。ここでしか食べられない食材。みんなよく知ってる毒キノコだけど、秘伝の製法で熟成させる事により、毒素を抜いた至極の一品。一子相伝。『キノコ親権』。


『ジャンボシイタケ』は、匂いでも人を惹きつける。約2名がそのチカラには抵抗できないのは実証済みだ。ミラとジャックね。迷子騒動も、もはや懐かしい。焼いて良し、煮て良し、蒸して良し。干す事によって、【うまみ】成分は飛躍的に増加するからね。それも産業になるはずだ。うんうん。夢は広がるね。


 この拠点のウリ、

『岩山なのに洞窟風呂』『魅惑のジャンボシイタケ』。


 これからつくる予定の、

『快適岩山部屋』。洞窟部屋と代わらないクオリティを実現させる。なんなら窓付きでもいけそうだ。窓は、開け閉めできないはめ込み式だけど。

『岩山展望露天風呂』。文字通り、岩山の天辺(てっぺん)に露天風呂を作る。もちろん男女別々に。

『岩山展望台』。露天風呂が覗けないように、真下が見えないように設計して作成。景色を楽しむだけじゃなくて、周囲の警戒にも役立つからね。展望台だから。まさに一石二鳥ってヤツだ。


 うんうん。アイデアがどんどん出てくるぞ。ありきたりだけど、結構良さそうだ。今まで無かったモノだから、物珍しさもある。【うまみ】革命の始まり始まり~。



 うん。みんなと相談しながら作っていこう。急ぐ必要もないし、今は、レッツ・パーティーだ!



「「「かんぱーい!」」」



「お疲れ様。町での生活も悪くはなかったけど、ちょっと忙しすぎたよね。領主さんとの予定まで、あと3日ほどあるから、それまではこの岩山の開発をやってくね。何か希望とかあったら、気軽に言ってみてね。出来る出来ないはあるけど、俺の開発構想は伝えた通りだから、意見があったら教えて欲しいかな」



「ふむ。おぬしの発想は、面白いからの。どれも楽しめそうなのじゃ。まずは現物を見てみない事には、意見は難しいのじゃ。

『ジャンボシイタケ』は、間違いなく、ここの名物になるのじゃ。この周辺だけでも、まだまだ沢山映えておったからの、わしの食べる分が無くなる事もなさそうなのじゃ。安心して新しい料理を開発するのじゃ。それも楽しみなのじゃ」


 おお。ご機嫌のミラさんですな。大好物とも言っていいジャンボシイタケが沢山見つかったからな。そりゃ、ご機嫌にもなるか。よしよし。味見役にはこれ以上ない人物だ。食べ過ぎには注意だけど。


「はい。毎日お疲れ様です。洞窟風呂も、洞窟部屋も、あんなに落ち着けて、ゆったりした気分になれるとは思いませんでした。洞窟って言うと、暗くて不気味なイメージを持っていましたから。でも、一度味わうと、病みつきになりそうです。あれは良いものです。

 それに、岩山展望台って、あの櫓よりも高いんですよね。すっごく楽しみです。どんな景色が見られるのか、今からワクワクします。

 それから、私は、新しいメニューの開発に頑張りたいと思います。これも花嫁修業の一環ですから。ミラさんがいるから、味見役は任せられますし、じゃんじゃん作っていきます。タビトさんも試食して下さいね。好みの味を覚えないといけませんから」


 うん。やっぱり洞窟施設は、一度使うとその良さが分かるよね。癒やしの施設も作成が可能なら、洞窟レジャーランドにしていこうかな。うん。それもアリかもな。


 花嫁修業の一環ですか。そうですね。家族にも色んな形があるからね。アリーは、そっちにチカラを注ぐ訳ですね。あはは。積極的でよろしいのではないでしょうか。うん。もう受け入れていこう。その笑顔はプライスレスだ。


 ミラの笑顔は、沢山食べられる事への期待の笑顔だな。当面の食材はジャンボシイタケだし。まあいいか。みんなが笑顔でいられる場所。うん。間違ってないぞ。間違ってはないのだ。



「そうですね。既に、私達が快適に暮らせる環境には十分だと思いますが、いろんなアイデアがあるようなので、それはそれで見てみたいですね。

 それから、周囲の安全確保も大切ですから、もう少し探索範囲を広げておきます。特に、ゴブリンの巣があった場所は要警戒で、また何かしらのモンスターズが住み着いてもおかしくない環境だと思いますからね。

 それで、手が空きましたら、各所に『櫓』を作っていただくことは出来ますか? 探索の効率が飛躍的に上がりますし、知能の低いモンスターでは、梯子は上がれないと思いますから、利用される事もないと思います」


「そうだね。今思い付いてるアイデアで作れそうなのはチャレンジしてみようとは思うけど、急いで作る必要もないからね。まずは、周囲の安全確保の方が優先かな。

 分かったよ。櫓の作成と、何なら『お堀』とか『城壁』とか作っちゃおうか。危険そうな場所があるのなら、先に対策しておいたほうがいいと思うからね。簡単な地図を作って、計画を建てていこうか。探索もあるから大変だと思うけど、よろしく頼むね。パブロ」


「はい。お任せ下さい。今のところ、ここでは探索くらいしかお役に立てそうもありませんから。では、要所をチェックしながら環境作りをやっていきましょう」


「私からは、住環境は既に一級品だと思います。新しいアイデアというのも見てみたいですが、まずは、どこまでを『拠点』とし、どこまでを『町』として考えるのか。その線引きをして、それに合わせた環境作りを行っていくべきかと思います。3日もあれば周辺の探索は、ほぼ出来ると思いますので、またその後で話し合いたいと思います」


「うん。そうだよね。計画立ててからやらないと、効率も悪いし、使いにくい町になっちゃうからね。俺達が使う分の住環境はこれくらいでいいとして、先の事も考えないといけないよね。ありがとうルイ。俺達しかいないから急ぐ必要はないけど、これからどうなるか分からないからね。町作りは、安全第一でやっていこうか。よろしくね」


「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。安全があってこその住環境ですから。可能なら、本当に『城壁』作ってしまいますか? そうすれば、人も集まりやすいでしょうし、食料も自分達で生産できるようになります。私は、家庭菜園のレベルでしか経験はありませんが、城壁があれば農家も安心てしょうし、家畜も飼えるようになります。人さえ集まれば、本当にすぐに『町』になってしまいますよ」


「ははは。そんな簡単にはいかないと思うけど、オデルローザの国境の壁くらいなら問題ないからね。範囲を決めて作っちゃおうか。あっても困るモンじゃないし。よし。じゃあ、その方向で考えて探索をお願いするね」


「はい。お任せ下さい。本当の意味で、安心して暮らせる『町』を求めている人なんて、いくらでもいます。私達がそうでしたから。そういう場所があると知りさえすれば、多くの人達が押し寄せると思います。覚悟しておいて下さい。町を作るという事は、そういう人達の受け皿になるという事です。勿論私達もお手伝いしますから、ご安心下さい」


 お、おう。何か話しが大きくなってないか? 確かに、パブロ達もそういう場所を求めて逃げて来たんだよな。でも、そんなに沢山いるのかな? 今まで行った町では、そんな感じはしなかったけどな。うーん。どうでしょう? 長嶋さん? 久しぶり。



 町を作る以上は、そういう覚悟も必要か。確かに軽く考えてたな。自分達だけでも安心して暮らしていって、そこに人が少しでも集まってきたらいいなぁくらい? まあ、そうなったとしても、まだまだ先の話だ。多分? 今は、出来る事をやっていくだけだしな。



 うん。こういう酒もうまいな。


 みんな、ありがとう。



  * * *



 あれから2日、櫓からの探索と、地形の確認、食料の確認と確保、あ、毒キノコもね。時々獣には出くわしたが、モンスターは出て来なかった。ゴブリンさんも、しばらくは見ていない。パブロ達から言わせれば、集団になると、やはり臭う。出来れば出て来ないで欲しいそうだ。まあ、俺もだけどね。敢えて戦いたいとも思わない。戦闘狂じゃないし、約1名を除いては……



「肉なのじゃー!」ドゴッ!

 こんな感じで張り切って狩りをしていたね。役割分担ってヤツね。うん。大事なことだ。


 そのお陰で、岩山の周辺は大体把握できた。あとは、どこで線引きして壁を作って行くか。まあ、それも明日の返答次第だからね。場合によっては、お逃げしないといけないし、そんな事やってる場合じゃない。


 この地図があれば、領主さんにも、この辺まで『町』として確保させてもらうねって了解も得やすいだろうから。やって良かったと思う。それなりに楽しめたし。ドキドキトレッキング? 何てったって『場所』の確保のためだから、もしかしたら熊とか出るかもしれないし、ヤバいモンが潜んでいるかもしれない。


 食べ物の調査やら、地形の把握やら、やる事は多かった。みんなのお陰で、ずいぶん早く出来たと思う。こういう時に仲間がいると助かるね。1人じゃ、いつ終わるか分からないし、やってる途中でイヤになっちゃうかもしれない。



  * *



 領主のガルーマさんとの約束の期日。臨機応変に動けるように、俺1人で町まで行く事にした。岩山なら安全だし、まだ見つかり難いはず。屋上には手を着けてないからね。流石に、展望台なんか作っちゃったら目立つから、止めといた。まだね。



  *



 隣国の軍隊は来てないみたいだね。元町長の突貫で済んだみたいだ。どうなったんだろうね。まあ、実際に突撃していった訳じゃないし、こちらの言う通りに話したんだろう。それで理解し、引き上げてくれた。そう考えるのが普通かな?


 あの元町長は、簡単に死ぬようなタマじゃない。なぜかそう思う。うん。だって『アズナブール』さんだからね。名前が。この地方の領主さんは、『ガルーマ・ザッヒン』でしょ? うん。きっとうまい事やって生き延びてるよ。それで改名して、仮面被って現れるんじゃないかな。俺はそう思う。これでもかと言わんばかりにフラグっといた。待ってるよ? 復讐相手はオイラになってない事を祈ります。一緒に死にたくはないからね?



 待ち望んだ返答は、『オッケー』。新しく作る予定の、その町限定でお好きにどうぞと。軽く見られてるみたい。ま、いいんじゃね? お国の公認で商売できるなら、それでいい。商売の許可状。


『ロジアーブ王国 ガルーマ・ザッヒン領主付き特殊部隊』これに、『特別商隊』が加わった。『隊商・キャラバン』じゃないのがミソなんだな。は? 訳わかめ。


 領主代理執行班、建築班、諜報班、戦闘班に、商隊班ね。もうこの際、何でもあり隊で良くない? 領主代理って事でさ。『町を1つ作っていい』権利なんだから、固い事言いっこ無しでね。その方が後々楽だよ? 俺達が。どうせ、これから領地を回るんだからね。わざわざ難しく考えてないで、スパッと一言。よし。それでいこう。って言ってみて?



  *



 この後、『国境の町 オデルローザ』は、『身分の境のない町』『洞窟風呂の町』として注目度されていく事になる。それは、もう少しだけ先の話。



 まずは、拠点作り。それが落ち付いてから各地を回り、地下施設の建設と。



 笑顔だけの人は、信用しちゃいけない。というか、その段階ではと言った方が正しいのかな? 最低限、人を判断するのなら、その人の『喜怒哀楽』くらいは見ておきたい所だ。


 表面なんて、なんとでも着飾れる。服装1つで印象は変わるし、化粧なんてされた日には、…………おっと、凄まじい寒気がオイラを襲ったぞ? ヤバい。これ以上は危険だ。セバイスさん以上の圧力を感じた。ふー。



 で、でもね? 『化粧品』って、『コスメティック』って言うんだよ? ギリシャ語の『コスモス』からきてて、秩序・調和・秩序立って統一しているという所から、『宇宙』も意味するようになり、やがて『装飾』『美しい』の意味も含まれるようになったんだって。諸説ありかな?


 だから、化粧は、()()()()()、調和のとれた範囲でお願いします。誰だか分からなくなるような、悪魔のような、カオスの世界にはしないで下さい。だって、それ、反対の意味ですからぁ! 混沌(こんとん)!!


 ぐはぁっ!!


 言い切った。俺はもう満足だ。俺の(しかばね)を乗り越えて、先に行ってくれ。いや、言ってくれ!


 俺達もそう思うとっ!



 がっはぁっ! あ、あ、あ、……あべっしぃっ!!




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