国境の町 オデルローザ 変革の余波
ちゅん、ちゅん、ちゅん
しつこいようだが、もちろん意味なんてない。外で鳥が鳴いている。意味なんてまだない? 『家族』にも、いろんなカタチがあるからね。
家族なんだから、部屋も1つにした方がいいのでは? との意見もあったのだが、展開が早すぎるよね? 『家族発言』だけで、そこまで飛んじゃうの? ある意味、俺より発想が飛んでると思うよ。
家族と言えども、プライベートは大事。家族だと言って、何でもありになっちゃうと、ケンカの原因にもなるし、良い事ばかりじゃないからね。家族だからこそ、お互いに一線を引いて、心地良く過ごしていきましょう。
落ち着いて考えられる場所や、魔法の検証、妄想タイムとも言う時間は必要だと思う。相談や話し合いとは別の話。俺はそういうタイプだからね。
最初は、少し納得いってないみたいだったけど、これからもずっと仲良く過ごして行くためには、そっちの方がいいんだよ? の一言で落ち着いた。うん。ありがとう。
お酒が解禁されたのに、結局、ミラとアリーは、ジュースしか飲まなかった。よっぽど懲りたんだろうね。あの1回だけでお酒が止められるなんて、凄い意思の強さだ。俺には無理だ。まあ、この楽しみを無くすつもりなんてないけどね。人は反省し、成長していくのです。そう。だから、楽しめる範囲で飲むのです。それが大人です。
昨日も楽しい焼き肉パーティーの後、まったり団欒し、それぞれの部屋で眠った。もうしばらくは、こんな感じが続くと思われる。それぞれにやる事も見つかり、忙しくはあるが、充実していると思う。
そう。今日も朝から爽やか。宿の窓から朝日が射し込んでいる。良い天気だ。曇り空こそあったものの、まだ雨は降っていない。本当に大丈夫なんだろうか?
無銭宿泊記録も更新中。違った。宿屋のオーナーのご厚意により、サービスで泊めてもらってるんだった。あは。これぞアハ体験。違うわ。
こんなに長いこと滞在する予定でもなかったから、気にしてなかったんだよね。ほんの数日くらいなら、俺達の情報を売った代償としては安いモノだと思ったからね。うん。大丈夫?
へー。ちゃんと予算つけてくれてたんだ。へー。知らなかった。町の復興事業として動いてるから、ちゃんとパブロとルイが調整してたんだ。へー。やるねー。じゃあ、お仕置きにならないじゃん。え? 逆に、いち早く看板に、『情報が流出しないように意識改革を行っている宿』と謳った事により、評判も上がってお客も増えてるの? えー。やるね! 良かったね! 久々のグッジョブだ!
やっぱり、真面目に誠心誠意やってくのが良いと思うよ。うん。うん。そうか。じゃあ、どうしてやろうかな? ふふふ。今度調子に乗っちゃったら、〈バルシュ〉で建物崩壊させちゃおうかな。見せしめに? オイラ達に逆らうと、マジでこうなっちゃうよ的な? もう。冗談でんがな、オーナー。本気にせんといてや! うふふ。
結局、領主のガルーマさんから返答をもらうまで、この町に留まる事にした。
その間、みんなは、それぞれの仕事に向かう事になった。
ミラは、山に狩り行った。芝刈りじゃなくて、肉の調達の方。どれだけあっても困らないし、いい運動になるから、一石二鳥だと。まあ、頑張って下さい。
アリーは、拍車を掛けて花嫁修業。ニコニコ笑顔が増してるように見えるのは、俺だけだろうか。うん。楽しそうだから、いいや。おいしい物たくさん作ってくれるからね。有り難い話です。
パブロとルイは、それぞれにお役所仕事の手伝いに。今は、補佐役として面倒見てるって感じになってるみたい。うん。凄いね2人とも。もう、乗っ取っちゃう? いや。止めよう。そんな中核にいたら、いざという時、お逃げできなくなる。うん。それはマズいから止めとこう。
ジャックとレックスは、相変わらず2人で修業中。朝と夜には、両親を交えていろいろと話し合ってるみたいだから、順調にいってるのかな? まだ何も教えてくれないからな。いつになったら俺も一緒に修業できるのやら。まあ、気長に待つとしましょう。
俺はと言うと、計画通りに? 『国境の壁』の補強、増設、罠の設置を行っていった。
この国に留まる事になるのなら、平和な方がいい。攻め込まれないような、守りやすい壁。
『国境の町』と言うだけあって、今のままでも鉄壁っと言ってもいい感じだけど、更に上をいこう。要塞建築家のオイラが居るんだ。大船に乗った気でいればいい。土魔法だからと言って、泥船じゃないから安心してね?
簡単には破られないように、ガッチガチやぞ? ちょっと厳つく見えるけど『忍び返し』も付けといたから、簡単には登れないよ? そもそも、壁まで到達できるかな? お堀も作ったし、イヤらしく落とし穴もあるんだよ? ちゃんと決められた道を通らないと、落ちちゃうからね? 痛いと思うよ? 下はガッチガチに固めたトゲトゲが生えてるから。気を付けよう!
あ、お堀に放せるような鯉とかいないかな? 折角だし、生き物飼っちゃえば? 水棲モンスターとかでもいいかもよ? 後はお任せします。ご自由に。
軍隊の到着までには、まだ時間があるとはいえ、速攻で終わらせた方がいい。それなのに、丸っと3日は掛かったかな。いろいろ調整しながらだったから、思うようには作れなかった。全く。面倒だよね。攻めてくるような隣国なんて、気を遣わなくていいのに。見てない内に? 気付く前にチャチャッと作っちゃえばいいのにさ。一夜城ちっくにね。
おおぉっ! 何という事だ! いつの間に城壁がぁっ! って?
あ、思い出した。そう言えば、冒険者ギルドの処分は? ギルド長に問題はなかったので?
おう。聞かなきゃ良かった。オイラ、今日寝られないかもしれません。なんてね。今日も1杯飲んでグッスリだ。『いっぱい』じゃないよ?
何て事はない。ただの怠慢。ギルド長は、不正こそしていなかったが、労働意欲無し。それだけの事だったそうだ。なーんだ。良かった。また物理的に首が飛ぶとかにならなくて良かったです。まだ見たこともない人だけどね。はいはーい。お仕舞い。
結局、今回俺が1番驚いたのは、セバイスさんの本当の名前だった。いろんな話をしている中で、領主さんとの雑談で出てきた話。
『セバスチャン』だって。本当の名前。だって、本人談。
『セバスチャンさん』って言われるのが嫌で、変えたらしい。どこぞのチート持ちのクソ野郎に大笑いされた経験があり、非常に感じが悪かったと。1人だけじゃないんだって。
ちなみにそいつ等は、もう遠くへ旅立って逝ったらしい。物理的なダメージが大きかったみたいだね。うん。知ってる。本気で叩かれたら、肩とか外れるだけじゃ済まないよ? 気を付けようね。
俺は、イメージにピッタリの名前で良いと思うんだけど、そういうヤツもいるんだね。まあ、感じ方も人それぞれだ。どうしようもないね。やれやれ。言わなくて良かった。改名しませんか、なんて。本名なんだから。ふー。オイラの肩は、まだちゃんとあるからね。
代わりに与えられたのは、『肩書き』。
『ロジアーブ王国 ガルーマ・ザッヒン領主付き特殊部隊』
領主代理執行班、建築班、諜報班、戦闘班を兼ねる。それに、『町を1つ作っていい』権利付きらしい。
何じゃそりゃ。何でもありだな。それだけ期待されてるのか? 使い潰すつもりか? はっ、もしかして、俺達を特攻させるつもりか? 『栄光あれーっ!』って? でもここは公国じゃないぞ? 『ロジアーブ王国』だ。まさか、内情はいろいろドロドロしてるのか? 兄姉喧嘩してるとか? うーん。やっぱり、別の国に行くべきか? でもなぁ、この領主さんも裏切られて殺されなかったし、世界も違うから、また別の展開が待ってんるだろうな。うん。そうに違いない。
俺が隊長で、主に建築班、ミラが戦闘班、パブロとルイが諜報班って感じだろうか。まあ、細かい事はどうでもいいのかな。
じゃあ、この壁と守りの建設代金を一括で支払ってもらって、移動しますか。
え? そんな金はないって? タダでさえ不祥事の補填でいっぱいいっぱいで、これから金もかかる。そこに一括で払えなんて、酷い。酷過ぎる。闇金ですか? 〈闇〉属性を手に入れたからね。オイラ。『銀ちゃん』って呼んでもいいよ? 南の方で帝王やっちゃうか? やりません。じゃあ、やっぱり、現実的な落とし所として、あの辺り一帯をいただこうかな。そう。あの辺りね。ふふふ。
じゃあ、これからもよろしくという事で! 近いから、何かあれば直ぐに分かるし、定期的に訪問すればいい。人の流れも出来るから、お互いWINWINだね。ウィンウィンね。ういーん、ういーんって巻き取っちゃうヤツ? 何それ? 俺でも分からんわ。
でも、戦争が始まったりしたら、お逃げだからね。そこん所よろしくね。約束だよ。マジで。何なら、地下掘り進めながらでも逃げちゃうからね?
商売の許可状は、まだ時間が掛かるみたいだから、『町を1つ作っていい』権利を持って移動します。誰に見せる訳でもないけどね。何となく?
* *
はい。という事で、やってきました『岩山の住み家』。
よしよし。周りも、隠し扉にも変化なし。誰もここには近づいてなさそうだ。
パブロ達一家が、一時期済んでた岩山だ。まずは俺達の住環境を整えよう。その後で、もし住みたいという物好きがいるのなら、『集落』として体裁を整えていけばいい。何も、最初から張り切って『町』を作る必要はない。そんな事、簡単にはできないしね。うん。そうだ。そうしよう。
この巨大な岩山を、いかに有効活用するか。うん。楽しいね。いろいろ考えよう。あちらの軍隊が到着するなら、あと3日。何事もなければいいが、一応見に行く予定? というか、その日に会う予定にさせられた?
上手い事やるよね、領主のガルーマさん。国からの返答は、その時に聞けるコトになっている。だから、それまでに、この岩山をより住みやすく環境を整える。3日もあれば余裕だと思うけど、拘り出すと長いからな。止まらない?
じゃあ、早速行きますよ。みんなで話し合った通り、岩山の改装、始めます!
ふんふんふん ふふふふふーん。
ん? 何だろ? 以前に比べて、魔力の浸透が早いって言うのかな。すーっと発動していく感じだ。これも、指輪が強化され事による影響かな? シェルター拡張してた時より作業が進むのが早いぞ。俺すげーー。
あくまでも強えーーってならないのが、『生活魔法』クオリティ。安定の安心感です。人を殺めるチカラより、俺はこっちの方が良い。守るための強さは欲しいけど、そんな奴らが現れなければいいんだよな。やれやれ。
『スペード』の属する闇の組織。『奴隷狩り』。多分それだけじゃない。人を貶めるような奴、利用しようとする奴、平気で嘘をつく奴、狡い奴。挙げていったらキリがないんだろうな。人の数だけ、いや、それ以上に欲望はあるからな。今後も気を付けていかないと。
ふー。どげかいね? こんなもんで良かたいね?
これだけの大きさの岩山だからね。軽く、5階建てのビルがすっぽり入っちゃいそうだ。かと言って、掘り出し過ぎても怖いから、そこは利便性よりも安全性重視でいきましょう。
1階は、今まで使ってた住居スペースを総合エントランスとして利用できるように、そのまま確保。トイレの場所は、更に拡張して、個室を増やしておきましょう。共同トイレだね。町で手に入れた『扉』が大活躍だ。これで安心して扉の開閉ができる。ありがとう。
みんなで寛いで食事できる広さのスペースと、広めの台所は必要になると思うから、女性陣の意見をしっかり聞いて、使い易いように配置も、高さも調整。
俺は平屋派だから、生活するのに、いちいち階段を上り下りするのは面倒だ。全てワンフロアで済ませたい。1人で暮らすなら、1LDKくらいで丁度いい。寝室は分けたい派。勿論、キッチンスペースに、バス・トイレ付き。みんな同じ間取りで作ります。
各自の寝室として使えるプライベートスペースとして確保。それとは別に、パブロ達家族用の部屋も大きめに確保。
大部屋1つに、個室が7つ。使う使わないは置いておいて、まあ、これくらいかな。岩山マンションだね。いい出来だ。家具類は、各自で用意してある分をアイテムボックスから取り出して並べるだけ。模様替えも簡単に出来るから、いい仕事します。アイテムボックス。1人1つが標準仕様でいいと思うね。金さえあれば。
広いお風呂は地下に。やっぱり洞窟風呂を男女別に作成。作れば作る程思い通りに進んで行けるのは、いつもの事ですな。はい。いい感じ。オデルローザで作ったヤツより高級感がある気がするぞ。何でだろ?
まあ、今日はこれくらいかな? なかなかどうして、建築家としてもやっていけそうなレベルだぞ? あとは、大工さんが居てくれたら言う事ないんだけどな。どこかにいないかな、野良大工? 雇うような環境でもないし、悩ましい所だよな。大工作業だけやってもらえればいいって環境でもないし。余裕もないし。
まあ、それも今後の課題だな。しばらくは、必要な物を町で作ってもらって対処していくしかないかな。まあ、それでも十分か。
よしよし、着々と形が出来てきたぞ。いい感じがします。
今日も、取り敢えずの拠点完成のパーティーしないとな。
ただ、乾杯したいだけだったりして?