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国境の町 オデルローザ 変革の波及



 てんやわんやで数日が過ぎ、すっかりこの町にも慣れてしまった。


 いかんぞ。あくまでここは、テストケース。サンプルとして考えなければ。自分達で、『安心して平和に暮らせる場所』を1から作っていくんだぞ。もうここでもいいんじゃね? とか思い始めてるなんて言いたくない。みんなは、どう思ってるんだろうか。うん。聞いてみよう。



「なんじゃ。わしは、おぬしと居られれば、それで良いのじゃ。場所がどこかなんて、どうでもいいのじゃ。好きにするのじゃ」


「はい。私も同じです。タビトさんと一緒に居られるのなら、場所はどこでも大丈夫です。どんな所でもやっていけると思います」


「はい。その通りです。最終的には、タビトさんが決めていただければ、それに従います。

 今は、あくまでもテストケースとして力を注いでおりますが、この町には、良い所も、まだまだ改善すべき所もあります。それをどうして行くのかは、この町の人達の考えで決めるべきでしょう」


「そうですね。この町に留まるも、進むもタビトさんの決断次第です。私達は、それに従います。もう、ここまでの事をやっているのですから、これは町作りと変わりません。沢山の人達の意思がありますから、それを今後どうしていくか、それはこの町の人達次第ではないかと思います」


「「タビトに従うー!」」



 そうだよね。やっぱり俺次第ってなるよね。パブロとルイは、ずっと中核となって動き回って調整してたから、町の現実や、これからの課題なんかも、よく見えてるんだよな。俺達の目指すモノ。『最低でも、俺達が安心して平和に暮らせる場所』。どうなんだろうか。この町でも当てはまりそうだし、違うような気もする。うーん。悩ましい。


「みんなの気持ちは分かったよ。ありがとう。でも、もう少し考えたいし、みんなの立場からの意見も聞きたいから、思った事はなんでも教えて欲しい。急ぐ必要はないからね。よろしく頼むよ」



 この町を離れるにしても、そこまで急がなくてもいい。焦って決断しても、良い事ないからね。

 これまでは、1つの事に集中力して動いてたからな、今後は少し視点を変えて、町全体的として見てどうか、雰囲気や人々の様子なんかも注意して観察していこうかな。



 ふー。でも疲れたけど、こういうのは、いい汗かいたって言っていいレベルだな。やってる感がハンパないし。すげー充実してる。こんな感じは初めてかもな。自分だけじゃない、他者の為、それも町で暮らす人々の為って、凄い事だよな。


 そりゃあ、こんな中にいたら感覚も狂ってくるのかな? 『俺様すげー』ってなって行くのかな? 勘違い野郎の登場か?


 いやいやいや。でも分からんな。それが人間だし、俺ってば調子に乗りやすいしな。うん。ちゃんと立ち止まって、地に足をつける感覚を確認しておかないとな。俺も首輪着けたくないし。お、いいね。


『首輪着けたくなければ、地に足つけろ』ってね?

 額縁に入れて、洞窟の出入り口に飾っとこ。





 俺の洞窟開発事業も一段落。丁度いい機会なので、皆さんに向けて、調子に乗って講演会を行った。



 上からの視点と、下からの視点。実際に『首輪』を着けてもらった皆さんには、実感できたと思う。百聞は一見に如かず。机の上だけで物事を決めても、長続きしない。必ず現場で確認し、再調整していく事。これ大事。忘れないように、ノートにチェックしておいてね! 次のテストで出るからね? 心のノートでもいいんだよ? 


 何を感じ、何を思ったか。それを今後に活かしていって欲しい。同じ過ちを繰り返さないように。体験し、身に沁みたからこそ、こいういう言葉も理解できるはずだ。


 これも知識として活かしていって欲しい。自分の為だけに利用するんじゃなく、皆の為に活用して欲しい。知らない人にも手を差し伸べるくらいはして欲しいかな。


 言われるままに過ごしていけば、気持ちは楽かもしれない。でも、それなら操り人形と同じだ。あなたじゃなくてもいい。代わりはいくらでもいるからね。今のポジションを羨ましがっている人は多いと思うよ。


 だからこそ、自分にしかできないような、他者から認められる様な特技を持って欲しい。別に特殊な事じゃなくてもいい。時間に正確だとか、ミスが少ないとか、挨拶が気持ちいいとかね。1人1人がそういう意識を持って仕事していけば、活気のある職場になるし、風通しも良くなるかもしれない。


 人間は皆、生き物としては平等なんだよ。身分制度はあるけど、これを忘れちゃダメだ。人の命を軽く見ちゃいけない。そこから差別は加速し、悲惨な未来を迎えることになる。奴隷制度は上手く活用していけばいいと思うけど、それだけに頼ってもいけないと思う。強制されなくても、善政が行われるようになるのが理想だね。無理だと思うけど。理想を失ったら、人間お仕舞いだからね。『希望なき未来に、光は灯らない』。ここも大事だね。



 人間は、同じ過ちを繰り返す生き物だから、それも忘れちゃいけないよ。体制を整えて、対処していく必要は常にある。


 知識がある人たちが、良識を持って行動し、反省し、周りを導いていけばいい。そういう人達は、流される側の人間になってはいけないと思うから、疑問を感じ、話し合い、方向を見失わないようにして欲しい。あなた達なら、それが出来るはず。期待しています。


 これからのこの町は、あなた達次第です!



 クドい様だけど、この町で平和に暮らしていけるのは、誰のお陰なのか、その為に税金を払うのは当たり前の事だとか考えないように。


 権利や義務の問題じゃなく、お互いに言える事だから。社会生活の為に、お互いがお互いを支え、皆が理解し合って生きて行くんだからね。


 人間らしく、理性を持って。上に立つ人間は、常に大我を意識して判断し、行動していって欲しい。それができてこその『公』だ。そうあって欲しいと思っている。



 だからこそ、『守る』事の意味を間違えちゃいけない。


 あなた達が守るのは、市民の生活だ。町の安全を、安心を、快適な暮らしを、明るい未来を。守るべきなのは、そういう『公』の事。


 間違っても、自分達の身を守る為に、そのチカラを使っちゃいけない。今の地位を、仕事を、給与を、特定の者だけを。それは、上に立つ者のする仕事じゃない。


 よく覚えておいて欲しい。



 それができるかどうか、『この町』で『この皆』で、見せていって欲しい。




 まあ、こういう()れ言も、ああ、そうなのねって聞き流す人いもいれば、ほう、なかなかどうしてと、何かを感じてくれる人もいる。


 人間って面白い。その時の立場、状況、気分によっても変われるんだよね。だから、怖いとも言える。出来れば、面白くいられるままで過ごしていきたいと思うけどね。



 はい。皆さん、何かありませんか? よく堪えられました。多分、これからの方が大変だと思うけど、それは、それ。まあ、みんなで頑張っていって欲しい。



 じゃあ、1人800エーンだよ? 払わないと、会場からは出られないからね? 首輪が絞っちゃうよ? ふふふ。冗談でんがな。



 でも、これで俺は、しばしの休憩。何事もなければ、後はお任せします。また来ます。多分。きっと?


 ていうか、定期的にやってきますからね? 建物の保守・点検、強化・補強は必要ですからね? 集金なんて、その手数料みたいなもんですがねぇ。


 あっちにも、もう1つ、こっちにも、もう1つと、大概にしとかんといかんよ。そんな事してたら、本当に地下都市が出来ちゃうからね? それじゃあ町が()()になってまうがねぇ。新町長さんもいかんて、うますぎるもん。


 ここは、『国境の町 オデルローザ』だからね? 『国境の地下都市 モグルローザ』じゃないですから。


 



 基本的に、役人として働く人なんて、その血縁者か、余程能力がある人なんだと思う。中には、調子に乗っちゃってるのもいるんだろうけどね。それでも、真面目な人が多いのも事実。『アタマ』次第で良くもなるし、悪くもなる。それが『首輪』によって大きく変わった訳だから、良くなるに決まってる。


 ん? 決まってるよね? 頼むよ? 首輪もそんなに沢山ある訳じゃないからね? セバイスさんが手配してくれてるから、手元に届くには、もう少し時間がかかるよ? はい。ありがとう。これからも期待しています。



 ありがとう。ありがとう。


 今日は俺の為にどうもありがとう!


 最高だせ、お前達! また会おうぜ! あばよっ!



 ここでアンコールがかからないのが、オイラのクオリティ。

 人気取りなんてしてないし、今日、始めてる見る顔もある。そもそも、アンコールなんて知らないか? アルコールなら好きだけど?


 調子に乗って、いろいろやらせてもらったけど、これで良かったのでしょうか? 疑問です。(はなは)だ疑問です。



 皆さんとは、もう会う事もないだろうけど、頑張って欲しい。


 お前も頑張れよ。



 この後、これまで不遇職だった土魔法使いに光が当てられ、待遇も見直されていく事になった。メンテナンスや補修くらいは出来るように鍛えていくのだとか。うん。良い事だと思います。是非とも頑張っていって欲しい。


 必要なら、また指導はするからね。もちろん有料で。



  * *



 報酬は、またしても追加の『強化の指輪』と、『験者(げんじゃ)の石』の2つだった。


 何ですか? この『石』は。魔石とは違うのか? 黒くて、赤っぽい色が混ざり込んでるような不思議な石だ。隕石(いんせき)なのかな? でも、名前が物凄く怪しいんですけど?


()()の石』じゃないの? 

 錬金術師たちが追い求めて止まないという、伝説級のアイテム。摩訶不思議なチカラが宿るとか宿らないとか、様々な言い伝えのあるヤツ。別名『哲学者の石』じゃないの? 濁点付いてますけど? 意味が違ってくるでしょ? 怖いんですけど。



 ()()って修験道の実践者の事でしょ? 修験者とか山伏(やまぶし)って言うヤツだよね? 悟りを得るために山に籠もって、それはそれは厳しい修行をして、人並み外れたチカラを持ってたりとか何とか……


 オイラを驚かせようとしてるのは知ってるけど、これ怖いですからね? 驚きというより、脅かしですよ?



『験者の石』。所持している者により効果が変わるとされている謎の石。過去には、この石が身代わりとなり、命を救われたとか、この石のお陰で、捜し物が見つかったりとか、この石のチカラで、特殊な能力を授かったりとか、いくつかの言い伝えはあるらしい。


 えー。それって、言い伝えでしょ。実際に見聞きしてないの? ヤバいんじなないの? 大丈夫? オイラ実験台? 実験するのは好きだけど、されるのはイヤなんだよ? 怖いから?


 えー。問題ないって? その自信はどこから? 根拠もないよね? えー。断れる訳ないよ? セバイスさんからの満面の笑み付きの贈り物だよ? いただきますよ。わざわざ手配して下さいまして、ありがとうございました。ふん。



 直接、面と向かって俺が驚く姿が見られないのは残念だが、これなら間違いなく驚く事になる。感謝される事間違いなし。だとさ。本当かねぇ。期待はしないけど、所持している者によって変わる効果ってヤツは、見てみたい気もするのは確かだ。


 アイテムボックスの『1枠』を使ってしまう事にはなるが、必ずそれ以上の価値がある。お値段以上どころではなく、プライスレス。感動、感謝のお便りが全国、いや、全世界から届くレベルの代物らしい。


 だから、そのお便り見せてみて?



《スルー》するしかない。有り難く頂戴しておきましょう。俺の身体の平和のためだ。アイテムボックスの『1枠』くらいなら、安いモノだ。


 それに、確かに面白そうではある。どんな事になるのか、楽しみがまた1つ増えたからね。ははは。爆発するとかは止めてよね? せめて、万が一の時には、身代わりになって助けて欲しいかな? 新たな能力も捨てがたいけど、やっぱり命を大事にだ。頼むよ?



  * *


 皆とゆっくり過ごしながら、現場の調整を見守る事に。


 そして、オイラは、新たな指輪の検証です。



 さあ今度こそ、俺ってば、憧れのムキムキないすバデーを手にするのだ。でもムキ過ぎ注意でね?



 グッと軽く押し込んで、左手中指に並べて装置。前回と同様に、スーッと指輪が調整されてピッタリフィット、同時にポワーンと暖かい光を放ち続けた。



「はい。どうも。これで4回目。オイラも成長したもんだ」


 その光は全身を優しく包み込み、暫しばらくすると消えていった。身体が温かい。


 指輪が合わさって1つになり、色が『黒』っぽくなっている。やはり魔石と同じランク制だ。この次があるかは知らないけど、取り敢えず、今分かってるランクはここまでだ。これで1段落って事かな? ようやく一人前になれたのかな?


 違いの分かる男の誕生か?



 知ってたけど、やっぱり憧れの、すっきりムキムキないすバデーに強化はされなかったみたいだよ。へん。自分で頑張るしかないよね。うん。毎日筋トレしてるから。そのうちに手に入れてやるんだからね?



『ステータスブック』

 ……ほいっと。


★はnew 投稿後に追加されたもの

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

『生活魔法』

 《火》《水》《土》《風》

 《光》《雷》《闇》★《氷》

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 今回は《氷》ときましたか。まあ、そんな所か? こうも立て続けに強化していると、なんか驚きも少なくなってるのかな。慣れって怖いね。


 あとは何があるんだろう。楽しみだけど、もう結構いい感じだからな。過度の期待はやめておこうかな。



 生活魔法で言う所の〈氷〉だからね。もう、素晴らしいよね。念願の『氷』だよ? 冷やしちゃうよ? 《スルー》以上に冷えちゃうからね。凍えちゃうかもよ? ふふふ。期待に添えるように頑張らねば。ノリツッコミの技術は、まだまだだからな。師匠に弟子入りしないと、これ以上は難しいのかな?



〈氷〉と言えば? かき氷、製氷機で作った氷、冷凍庫、冷凍保存、チルドとかもあったから、これで『冷蔵庫』の使い分けができるかな。氷の彫刻、つらら、クーラー、エアコン強化、スケートリンクって感じかな。



 でもなぁ、やっぱり試してみるしかないよね? ロマンだよね? 〈火〉と〈氷〉が使える訳だから、消滅魔法ってヤツ? 出来るのかな? 


 でっきるかな、でっきるかな、はてはて?


 右手に炎、左手に氷。大きさ合わせて発動って感じだったかな?


 ふっふっふっ



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