スリーアウト チェンジ!
「ヒヤッハー! おらおら、邪魔だぁ! どきやがれ! ぶっころばすぞ!」
いきなりチャージ5%「《イカズチ》!」
バチバチッ、バシュッ! ぎゃんっ
世紀末仕様で登場してみました。俺は元気です。
しばらく主観での出番がないというのも……
ちょっと試してみたい事ができまして、実験中でした。大人しそうなモンスターを探して、森を歩いていました。で、目が赤くないと思って近づいてみたら、寝てただけだった。みたいな?
犬ゾリならぬウルフゾリ? とかできないものかと思い立ちまして。はは。未だ目処すら立っておりません。
《土壁》で牢屋を作って安全確保、少しずつ調教できたらいいなぁ、と思いまして。
ゴフリンさんもしゃべれるヤツとかいないのかな? 上位種っていうヤツ。知能が少しでもあれば、うまいこと共存共栄できないのかな? やっぱ甘い? 甘党だよ? スイーツとか気軽に口にできないからね、イライラしちゃうよ。コンビニのありがたさが身に染みる、今日この頃です。
「くっそー、無理か」
こんな事に時間を使わず、とっとと次の町を目指しますかね。
「はぁ、やれやれだ」
『青春きっぷ』でもあれば、できるだけ遠くへ行きたいんだけど、そんなに甘くない。移動手段は徒歩か馬車。しかもお高いんですよ、奥さま。長距離馬車とか、深夜馬車とか、寝台馬車とかないですから。お得なセット販売とか、送料無料なんてあるはずがない。金利手数なんて、なにそれ、おいしいの? お金なんて、簡単に借りられませんぜ、アニキ。
こんな根無し草が商売始めようと思ったら、何年もかけて信用と金を積んでコツコツやっていくしかない。それか目立たないように裏でコッソリやるか、金で黙らせるか、乗っ取るか、ヤっちゃうか。いかん、思考がどんどんヤバい方向に……
勿論、冗談なんだけど、普通にこの国で商売とか無理。定住先を見つけて一からやるか、町の外で見つかるまで独自の商売始めるか。
現実的なのは、権力者や商人に取り入って、知識チートで攻めるか、なんだけど。うーん、どうでしょう。やっぱり冒険者? 登録して、金を稼ぎなが信用を作り、その環境の中で顔を繋げげて、必要とされている事を見つける。で、それを形にして提供する。何でも屋。便利屋。
ぼったくり都市を張り切って出てきたのはいいけど、次の町までの移動は、時間がかかり過ぎる、『声の人』が言ってた通りなんだけど、何とかしたいさー。楽に行きたいさー。今後もあるから費用も抑えて安全に。
あ、ぼったくり都市っていうのは、冗談半分だよ。半分はもちろん本気。俺には優しくないからね。
王都での最後の夜に妄想しまくったけど、
仮に、魔法で空を飛べたとしよう。目立つよね? 何あれってなるよね? 狙われやすいよね? はい。襲われまーす。モンスターにも人にも。
そんな魔法があったら嬉しいけど、気を遣いまくりで、夜間飛行のみってか? えー、もっと危ないじゃん。真っ暗だよ。今まで飛んでる人見たことないから、多分ないのだろうね。そういうの。飛んでるのは俺のアタマ? はんっ。
次、車があったとしよう。速いよね? 目立つよね? 道は舗装されてないよね? はい。事故りまーす。当てられます。ボコボコです。燃料もないし、修理もできません。どうせスピード出せないから、馬車のがましじゃん。
次、もういいや。
いろいろ考えました。
『旅人の砦』に戻ろうか? 砦から城にして、国でも作る? やっちゃう? いきっちゃう? いきりきっちゃうか? ないな。結構いい感じに過ごせそうだけど、未来が見えない。ただ生きていくだけ。そんな感じしか考えられない。寂しいよね。誰にも必要とされてない。だから却下。
『始まりの町』は、指輪の『感知器』があるから問題外。感知されたくない。監視されて生きるなんて、まっぴら御免。
『導きの祠』はい、消えた。もういい。
『リーレイの町』一番ぐぐっとくるけど、微妙。何すんの俺? 商業ギルドの印象悪いからね。冒険者ギルドしか選択肢ないし、年取ってからの事、考えられないよね。一攫千金できるような依頼なんてなさそうだしさ。あっても受けないけど、痛いのヤダし。
『サウンの町』何の思い入れもない。ただ泊まっただけだし。
意表を突いて、『試練の塔』行っちゃう? 意味ないって言ってたけど、ホントかな? もしかしたら、更にパワーアップできちゃうかも? うーん。向かう方向が同じなら寄ってもいいけど、ワザワザいかないかなぁ。
『王都』は肌に合わない。デリケートだから、おいら。人多すぎ、いろいろ高すぎ、いろいろ印象悪すぎのサンスギ。
自由に商売できない国じゃ、夢のスローライフ、不労所得にありつけない。だからそれだめー。違う国に行くしかないさー。なんくるないさー。で、ごー。
でもその前に勝手に商売やっちまって、捕まる前に逃げるか? それじゃあヤバい指輪持ちに認定されてしまうではないかー。ふんがぁー。はぁ。疲れた。
でも、暮らしてる『人』達は良かったんだよなぁ。『声の人』には散々気をつけろと言われたけど、俺が出会った中では、そういうヤバい人に思い当たらない。俺が分かってないだけなのか、たまたまなのか。うーん。分からん。
王都には『銭湯』があるのだから、近隣に『複合レジャー施設・スパリゾート』でもどうかな? と本気で考えた時間もあった。正確には25分くらい。施設は、オイラの『生活魔法』でなんとかなる。……はず。水も川から引けば大丈夫。お湯も『魔石』を使えばなんとかなりそうだし。あとは、管理人やスタッフ、いろいろやろうとすればするほど、人が必要で、現状では何ともならない。
そもそも、どこでやんの? それなりの大きさの敷地の確保、整備、そこまでの移動手段。
あーー、無理。
「風呂入ろ」
かこ~~ん。冗談。
*
手持ちの現金、907200エーンがなくなるまで、とにかく遠くへ行くか。それとも細々ゆっくり行くか。
答えは、アホな事やりながら、ゆっくり進んでます。
「いちびっとると、いてまうぞ! われぇ!
『我が身を守り賜え』《石弾》(中)×3」
ドシュ! ドシュ! ドッ!
「ふー。やっぱりモンスターいるんだね」
魔石の回収と《土葬》は忘れてません。事後処理大事。毎回の《火葬》は時間がかかるし、どうしても火の手が上がり煙も出る。なるべく穏便に森を抜けるために《土葬》にしている。
思ってたよりモンスターが多い。今までが平和すぎたのかな。それだけ町の行政がしっかりしてたってことか。
「やれやれ。これじゃあ、隣の国に辿り着くのはいつになることやら。
最短距離を爆進中! とまではいかず、一直線に進行中。アホだわ、俺ってば。平野だけじゃない。山に谷に川。丘や岩山なんてのもある。やってみないと分からない。やれば分かる、この辛さ。『道』って大事だね。
人生新たな出発! チャレンジだ! 自ら道を切り拓くのだぁ! で、このザマです。俺ザマァ。
歩くためにいろんな物をホントに切って払って進んでます。旅人の短剣、大活躍。
はぁ、情けない。でも次の町までは、やり切ってやる!
こんな道、通るのは獣かモンスター。あ、あとオイラ。
テンプレなんて起きないのさ。起こさせない。ふふふ。
「あー。しんど」
あるしんどになっちゃうよぉ。
* *
あれれ~~。おかしいな、こんな所に人なんている?
何も見なかった事にして、静かにスルーー。
はい。できませんでした。
黒のマントに小柄な人? うつ伏せになってて分かりにくい。少し離れた位置から観察します。
周りには、戦闘の形跡は……なさそう、だな。ここまできて力尽きたか、行き倒れ?
「…………」
動かない。ただの屍のようだ。もう少し近づいてみることに。
「…………」
やはり動かない。側に寄って、状態を見てみる事に。
「……」
性別不明、男の子とも女の子ともとれるのか。触るのも怖いけど、できる範囲でバイタルチェックしますかね。
【意識】は、目は閉じているから、呼びかけて反応をみる。
「おい、大丈夫か? おいっ」
反応なし、肩を軽くたたいて呼びかける。
「おーい、おーい、聞こえますかぁ」
「……」
次、【呼吸】は、……胸のあたりは上下に動いてないから、呼吸運動はなさそうだな。ピクリとも動かないし、呼吸音も聞こえない。もう手遅れ? な感じがする。
【体温】は、…………感じません。冷たくはないけど、生命活動自体を感じません。外傷も……見える範囲では特にはさそう、だな。
「……」
はい。屍認定します。
残念ながら、認定です。
「ぐぅ~~」
「……はぁっ?」
息してなかったよね。体温もなかったよね。どういう事? この聞き覚えのある音は、どこから?
勇気を出して死亡認定したのに。これでも生きてんの?
よかったわぁ《土葬》とか《火葬》しなくて、どっちにするか迷ったおかげで助かったね、あなた。どなたが存じませんが。危うく生き埋め事案発生か、火炙りの刑カマスところだったわ。ふー。殺人事件回避~。
「おいっ、大丈夫か? 生きてるのか?」
今の音はいびき? 腹の虫? さあ、どっち!
「…………」
反応がない、やはり認定し直すか?
「おいっ、寝てるのか? なんか邪魔したのか?」
体を優しく揺すってみる
「……」
うーん。どうしよう。放置でいくか? そもそも、怪しい人は認定だしな。あ、俺もか。はあ、
「おいっ、水か? 食べ物か?」
ありがたくプレゼント・フォー・ユーされた『マジックバッグ』が大活躍。この子、時間停止機能付きでした。もぉ感動の雨嵐。全俺が震えた、泣いた。今期ナンバーワンのヒット作!
検証では、6×6×6m以上。そう『旅人の小屋』と『旅人の生活小屋』がまるっと入っちゃいました。どんだけー。
参考価格で1×1×1mのアイテムボックスで100万エーン。これに時間停止つけたら、さあ How much? おいくら万エーン?
このバッグ、1000万とかいくかもね。かもねかもね、そうかもね。クセになっちゃう? オイラには、『簡易アイテムボックス 強化版』もあるから、使い分けもできて、本当に助かってます。
いかん。また現実逃避行。旅立ってしまった。近場だったから良かったよ。今を見なければ。
恐らく、生きていると判断。
コップには《飲料水》を入れ、マジックバッグから、大鍋を出し、木製の大皿には、温かいスープを注ぐ。
「ぐぅ~~」
匂いか? 言葉には反応せず、食べ物の匂いには反応するわけか。あら、身体って正直。
「俺の言葉は分かるか? おいっ、生きてるんだろ? 水は飲めるか? それとも体の治療が必要なのか?」
「……うぅ、み、水より食べ物をぉ…………」
「食べ物かいっ! こういう時はふつー、まずは水だろっ!」
思わず全力でつっこんでしまった。緊急事態だよね?
かすれそうな声を、やっとのことで絞り出したかと思えば食料の催促ときた。食べても大丈夫なのか? どれくらい食べてないのか知らないけど、いきなり固形物はいいのか? まあ、スープだし、具もやわらかくなってるから平気かな。
「よし、自分で起き上がれるか?」
まぶたを重そうに開け、なんとか指先をこちらに向けるので精一杯みたいだ。片膝をつき、両手で体を反転させ、抱き上げる
「よっと。おぉ、軽いな。ほら、大丈夫か?」
思ってた以上に体重がなく、軽く上半身を持ち上げてしまった。楽な体勢に座らせて様子を見る。
「ほら、大丈夫か? 自分で食べられるか?」
「うぅ、……」
無理そうだな。腕も上げられないみたいだ。どんだけ最後の灯火だったんだよ。マジやばそうだ。仕方ないから、食べさせてやるか。
「ほら、口を開けな。ゆっくりだぞ、ゆっくり流し込むから、飲み込むんだぞ」スプーンをゆっくり傾け、少しずつスープを流し込む。
「ん、ずず……ゴクン」
「よし、飲めたな。少しずつだからな」
飲み込む喉の音まで聞こえてきた。この調子でゆっくり食べさせていった。
*
「ぷっはぁー。生き返ったぁ! もう食べられん!」
「マジかぁ」
途中から自分でスプーンを取り上げ、食べ出した。食べて食べて食べきった。大鍋全部いかれました。完食です。その体のどこにその量が入ったんだ?
「いやぁ~気持ちいいねぇ。食った食った。いい食いっぷりたぁ、この事だね。っておい。お前はどこの大食いチャンピオンだ!」
さすがに全部いかれるとは思わなかったわ。ノリツッコミだ。
テレビで見てる分には楽しめるけど、俺の大事な食料だからね?
どんどんなくなっていくんだからね。しかも、手作りあったか具だくさんスープだよ。はぁ、また作ればいいけどさぁ。
腹を両手でポンポンやりながら、こちらに目を向ける。
「はー、助かった。礼を言うぞ。しかもうまかったのじゃ。空腹は最高の調味料とか聞くが、それ以上じゃの。死にかけてたから格別じゃな。ははははは」
なんだコイツは。この軽さ、タダもんじゃねえ。本当に死にかけてたのか? 顔色も良くなってもう動けるのか。身体も性格も軽いとは、厄介だな。巻き込まれ街道まっしぐらのコースだ。いかんぞ。しかも、ここへきて、中途半端な「のじゃ」属性発動だ。のじゃロリならぬ、のじゃババだぞ。
「……そいつは良かった。それは何よりだ。俺は予定があるから、先に行くぞ」
元気そうで何よりだ。あの状態からの、この復活力。これ以上、関わらないに限る。食料は軽く一週間分はいかれたが、諦めよう。イヤな予感しかしない。
「まあ、待つのじゃ」
片付けを手早く済ませ、立ち去りたいのだが、やはりダメみたいだ。
「気にしなくていいぞ。困った時はお互い様ってね、気まぐれもあるけど、できる事をしたまでだ」
全て仕舞い終わり、挨拶をして別れる雰囲気を醸し出してみる。
「もう体は大丈夫そうだな。事情は聞かないが、動けるなら1人でもなんとかなるか?」
「そう急がんでもよかろうに、せっかちじゃのう。礼くらいはさせてくれてもよかろう。わしなら腹が膨れればなんとでもなる。こう見えてもかなり強いのじゃぞ」
両足を広げ、両手を腰に当ててポーズをとっているのだが、子供が、いやババアが戦隊ものの決めポーズをしているようにしか見えん。何やそれ。ヒーローごっこか? スルーだな。
俺はスルースキルを身につけた。
「そうか、それなら大丈夫だな。俺は行くな、じゃ!」
片手をあげ、お別れの挨拶のつもりなのだが、
「そっちに行くのか? じゃあわしも行くとするかの」
て、ついて来るんじゃねぇ。あれか、ボディーガードのつもりか? 後ろからついて来たら俺が先導して、介護してるようにしか見えんだろうに。やれやれ。しばらくはこのまま様子を見ますかね。