D・A・T・E 何の略?
「おーい。ミラ。アリー。臨時収入があったから、買い物に行くぞ。何か欲しい物とかあるか?」
「おお。もう終わったのじゃな。早かったのう。わしは、食べられる物なら何でもいいのじゃ」
「はい。私は、これと言ってありません。一緒に行ければ、どこでもいいです」
「ミラは、この前の殲滅の報酬だから、特別ボーナスだぞ? いつもと同じでいいのか? アリーも、武器とか装備は必要ないのかな?」
「ほう。特別ボーナスとな。そうじゃのう。屋台は昨日食べ尽くしたし、それなら、その辺の店に行ってみるのもいいかもしれんのじゃ。ガッツリ肉が食べたいのじゃ」
「私もいいのですか? 私は何もしていませんが……。そうですか。ありがとうございます。それならそうですねぇ。武器とか防具は、両親にも相談したいですし、あまり戦闘は得意ではありませんので、私はアクセサリーとかがいいかもしれません。ダメでしょうか?」
「ん。分かったよ。じゃあ、お昼になるまでは、肉料理がおいしそうな店を選びつつ、いろいろ回ってみようか。気に入ったアクセサリーが見つかるまでね」
*
うーん。何でだろう? 趣味ってみんな同じなの? ミラとアリーは感性が一緒なのか?
折角だから、皆でお揃いにしようという事になった。えっ、俺も? オイラ、アクセサリーとか付けるタイプじゃないんだけどなぁ。無理に買わなくてもいいんだよ?
ミラは指輪はダメ。理由は殴るのに邪魔になるから。それならヘアピンはどうかとアリーに連れて行かれたが、やはり、戦闘時に気になりそうなのでダメ。防具の下につけられて、邪魔にならない物ならという事で、ネックレスを選ぶ事になった。
シルバーのチェーンに、同じくシルバーの丸いリングが付いており、魔石がはめ込まれている。
魔石は、緑、赤、青、黒とあり、順番に値段も上がっていく。この魔石には、魔法を付与する事ができ、それはまた別料金。物理・魔法防御力アップ、攻撃力アップなど、魔石のランクによって付与できる強度が変わり、高い物ほど、強い付与となるらしい。
緑・付与不可
赤・微弱
青・弱
黒・中程度
みたいな感じだ。ゴブリンさんの魔石は赤色だったから、多分それを使えば微弱な付与が出来るという事なんだろう。
ここでふと気が付いた。この魔石ランクは、俺の指輪の変化とも似てるから、恐らく、そういう事なんだろう。思わぬ所で、またいい事を知る事ができた。
魔石のランクが、緑→赤→青→黒、となってるから、
この指輪も同じく、緑→赤→青→黒、と強化されていくと考えてよさそうだ。ここには関連があると考える方が自然な気がする。
俺の指輪は今『赤』色だから、最低でもまだ2回は強化できる余地があるという事だ。いいね。いい感じだ。俺はまだ強くなれる? 便利に暮らせる? 嬉しい発見だ。2人ともありがとう。やっぱりコレ、買わなくちゃな。
2人は嬉しそうにネックレスを選んでたけど、俺まで嬉しくなってきてしまった。2人とは意味が違うんだけど、まあ、ここはそのままにしておこう。みんなでニコニコいい買い物になったな。
でもあれだな。このランクからするに、モンスターのランクも上には上がいるという事だ。まあ、ゴブリンさんは、確かに強くはなかったけど、魔石は赤色だから、ランクが1つ上がるとどれぐらい強くなるかだよな。値段で判断できるのか? そこまで単純じゃないか。それは楽観的過ぎるかな。属性やタイプによっては、得手不得手も出てくるだろうしね。うん。これくらいにしておこう。
ちなみに、この指輪程の大きさの魔石で、リングへの加工代金込み、付与無しでの価格は、
緑 6000
赤 8000
青 12000
黒 20000
通常のゴブリンさんの赤魔石の買い取り単価が、ギルド員なら3000エーンだったから、ギルド→お店が購入→お店で加工→販売と考えれば、そんな感じなのかな? これだけじゃ分からん。
2人とも楽しそうにしてるから、良かったよ。
まあ、これなら確かに邪魔にはならないのかな。俺は気になるけど。「これくらい、『指輪』に比べたら大した事はないのじゃ!」と、押し切られる形となった。
これで3人お揃いのネックレスを身に付ける事に。
うーん。まあ、良しとしますかね。2人とも嬉しそうだし。今更、俺だけ付けませんよ、何て言えないよね。はあ。
でもさぁ、なぜ、同じ物を余分に購入するのさ。そんな必要あるのか? 無くしたときのための予備? え~、そういうモノなの? 大切にして身に付けておくモノなんじゃないのか? 無くすの前提なの? 俺って非常識? それに、在るだけ出してくれってさ。おかしくない?
魔石は、自分達でモンスターを倒して手に入れるから、ここでは購入しないんだと、ミラがたいへん張り切っております。自ら手に入れてこそ価値があるのだと。
赤い石じゃイヤなんだね。そうだよね。ゴブリンさんじゃあねぇ。俺もそう思うよ。ゴブリンさんの魔石を、大事に胸にぶら下げたくはないかな。そこは賛成だ。
でも、そうなると、最低でも青いのを、もしかしたら黒い魔石をゲットしないといけない訳でして……。イコール、危ない事しちゃうんでしょ? どうせ。
はあ。今は考えないでおこう。
ちゃり~~ん。
俺の意見なんて、関係なかったね。ネックレス購入でーす。
20000×7で140,000エーン。
え~ん。臨時収入が飛んでいったよ~
うん。情報提供料として受け止めよう。魔石と指輪のランクに関連がありそうだと知れたからね。プロは自分を慰める術を知っているのだ。
その場で購入したてのネックレスを着け合った。と言っても、俺が2人に着けてあげたんだけどね。こういうのも初めで慣れてないから、手が震えちゃって、うまく着けられなかったよ。ははは。情けない。俺のはミラが代表して? 着けてくれました。もちろん、しっかりしゃがんだんだよ?
お揃いのアクセサリーなんて、ちょっと恥ずかしいと思ってたけど、こうして目の前で喜んでくれてるのを見ると、俺まで嬉しくなってくる。
ありがとう。ミラ、アリー。
残りの4つは、何故かミラが責任を持って預かる事になった。そんなに無くす自信があるのか? 末恐ろしいヤツなのじゃ。
*
すっかりお昼も過ぎてるのに、ニコニコしながら街を歩く3人。いや。正確には2人か。
お次は、ガッツリ肉を食べられる店だ。ま、ニオイですぐ探せるから、あっという間。
「「「いただきまーす」」」
最近では、みんな手を合わせて『いただきます』『ご馳走様でした』をするようになった。
最初は面白がって真似してただけだったけど、どういう意味があるのかを、しっかりレクチャーしたからね。みんな感心して手を合わせるようになった。いいね。その柔軟性。柔軟剤入りで、いい香りがしてくるよ?
「大変おいしゅうございました」
何の肉なんだろう。やっぱり肉はこっちの世界の方が断然おいしいと思う。熟成肉とか流行ってたけど、それよりもおいしいと思う。値段も、俺の価値観で見ても、こっちに軍配が上がる。
俺は牛の油は苦手だった。消化不良で下痢しちゃうくらいだったからね。デリケートなんだよ、オイラ。加工肉とか、脂を注入してる肉なんかもあったけど、もうピーピー。安いからって手を出しちゃうと、数時間後に後悔する事になる。おう。お食事中だったら、ごめんなさい。
牛、豚、鳥、羊の肉もある。それに加えてモンスターの肉だ。バリエーションも豊富だし、値段も安いと思う。
牛のステーキだって、俺がおいしく、腹一杯食べても2000エーンいかないんだよ。元の世界なら、チェーン店でも5000円は軽くいくだろうね。この質ならね。流石に、ここまでの量は食べた事ないけどさ。
胃にもたれない? 消化がいい? 栄養として吸収されやすいのかな? 赤身でも多少の油でも、全然気にならない。身体能力が向上してるのかな? はっ、これは〈身体強化〉の効果なのか? ぬおー。ぬかったわ。あまりにも気にせず発動させてたから、検証なんて考えてなかったよ。
まあいいか。おいしかったから。食に関しては悪くない。デザートというか、スイーツ類は少ないけどね。そこは、これからスイーツ無双の余地があると思っておきましょうか。
ふふふ。待ってろよ、スイーツ男子! ホントはみんな好きなはずだ。食べれば分かる。食べなきゃ分からない。当たり前か。オイラが広めてやるからな。男でも恥ずかしがらずに甘味が食べられる環境を作ってやりましょう。落ち着いたらね。
更に、材料が手に入って、体制が整えられたらね。まだまだ先の話だな。残念だったね、『国境の町オデルローザ』。ここじゃない。
「「「ご馳走様でした」」」
2人とも大満足。俺も満足。
臨時収入も飛んだ。大銀貨(1万)2つが仲良く羽ばたいて行ったよ。サヨウナラ。またね。また帰ってきてね。必ず帰って来るんだよ~~!
残金は、ほぼ無くなりました。やったね。何とか足りたね。臨時収入はすっからかんだけど、宿にいる4人にもお土産買って帰ろうか。何がいいのかな? こういうのもいいもんだ。
「お腹がいっぱいだから、どこかで少し休んでいこうか?」
「なんじゃ、あれくらいでへばってどうするのじゃ。敵が現れたらアウトじゃぞ」
「ミラさんくらいですよ、あれだけ食べたいのに平気でいられるのは。私も少し休みたいです。タビトさんに賛成です」
「まったく、おぬしもか。仕方がないのう。では、適当に歩いて、ベンチでも探すとするのじゃ」
「ありがとう、ミラ。ゆっくり歩けば消化にもよさそうだし、そうしようか」
しばらく歩いていると、物凄く頑丈そうな建物を発見。扉の上部に分かりやすくネームプレートがあった。なんて親切設計。
おお。ここが『クラン』の拠点かぁ。初めて見たけど、思ってたよりデカいぞ?
『第2クラン オデルローザの暁』と書いてある。『第2』ということは、当然『第1』もあり、『クラン』として順番に登録されているとか、規模による順位決めでもあるのだろうか。まあ、どちらにせよ、この町ではそれなりのクランなのだろう。
下手したら、ギルド会館よりも頑丈なんじゃないかと思わせるような要塞っぷりだ。この要塞建築家のオイラがそう思うんだから、間違いない。とにかく、壁が分厚くて、頑丈そうに見える。ただそれだけだけど。凄いな、中の構造はどうなっているのかなぁ。迷路みたいにしてるのかな。でもそれだと、もう『迷宮』だよな。
土魔法があれば、構造計算なんかも必要ないから、ホント凄いよね。この世界。そもそも、構造計算自体があるかも知らないけどね。
真面目にやってると、本当に大変なんだよ?
構造計算は、構造物の安全性や使用性を確認するのが目的で、建築構造物・土木構造物などが、固定荷重・積載荷重・積雪荷重・風荷重・地震荷重などに対して、どのように変形し、どのような応力が発生するのかを計算し、構造物がそのような変形や応力に耐えられるのかを判定するもの。構造計算書なんて、A4紙で3桁は軽くいくからね。
建物自体の重量、【積載荷重】建物の床に乗せる、家財道具や人や重さ。【積雪荷重】雪が積もったときに屋根にかかる重さ。【特殊荷重】ピアノやウォーターベッドなどの特に重いものなどを計算し、建物にかかる重さが力としてどのように伝わり、その力に耐えられるかを調べる。
建物にどのように重さ(下向きの力)が伝わるか、伝わった重さに材料が耐えられるかを検証。さらに、地震や台風が来た場合を想定して、持ちこたえられる建物かどうかを検証。
その上、【層間変形】地震・台風それぞれの場合に、建物がどのくらい傾くのか。【剛性率】建物の上下階の硬さのバランスを調べ。【偏心率】建物の重さと硬さが偏っていないかを確認し、バランスよく重さを支えられるかを調べる
もう、イヤになってくるでしょ? まだあるんだよ? うん。なんかごめんなさい。こんな事まで考える必要がないなんて。
わんだほー 魔法! びば 土魔法! って知ってる人なら、当然そうなるよね。
しかも、法律をつくっている国(国土交通省)は、大きな地震が起きるたびに、これといって大々的に注意喚起する事もなく、建築基準法を強化してきたんだよね。命に関わる重要な事なのにね。知ってた?
規定の壁の枚数を増やしていくという形で、過去60年間で3回もこの『壁量規定』において、規定の壁の数を増やしている。 在来工法の壁の量は、50年間で約2倍に増えてるんだよね。
今現在、一般市民は何を信用したらいいんですか? 国の提示している基準は、本当に安全なんですか? って話。
安全な家を建てるためには、最低でもそういった知識を身につける事が、平穏な日常を、ひいては自分の命を守る事につながる。
科学的な根拠に基づいた構造計算をしっかりすること。使われる材料がそれぞれに強度基準を満たしていること。設計通りの施工が確実に行える業者が施工すること。そもそも、その土地自体は大丈夫なのかっていう大きな問題もあるんだけど、それはまた、別の話。
間違っても、軽くセールストークを教えられただけの営業マンに、それらしい数字や過去の実績、長年の職人の腕がある。とかの言葉だけで騙されない事。営業の人は販売員。売るのが目的です。ず~~と担当して、責任取ってはくれないよ?
情報も常に新しいモノを、信頼のおける筋から入手すること。フェイクニュースも多いけど、口コミなんかもバカにならない時代です。うまく活用していきましょう。
木造住宅の現状は、基準が曖昧だし、本気で命の重要性を考えてチェックする組織が少ない。やはり、ここでも最後は自己責任。数年後に痛い目を見るのは自分自身。くれぐれも慎重に。裁判では思っているようには、失ったモノは返ってきません。時間と労力とお金の無駄遣い。精神的にシンドイだけですから。
あれれ~~? 何の話をしてたんだっけ?
デートには、思った以上にお金がかかるから、所持金には余裕を持ちましょう? 魔石のランクから、指輪のランクも多分同じ仕組みだと思われるから、もっと上を目指して頑張りましょう? 青か黒色の魔石を手に入れる為に、ミラが張り切ってるから、今後の動きに気を付けましょう? お肉がおいしくてお値打ちだから、食べ過ぎて困っちゃうよ?
あれれ~~?
違った。間違ってはないけど。
特に木造住宅を建てる時には、物凄く注意しましょうねって話だった。
どうも最近アタマが飛んじゃってイカンね。
ふー。