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情報収集のお時間です 干支だよね?



 しばらくキノコ無双は続いた。


 俺はどこへ向かっているのだろうか? 



 近場の毒キノコを採り尽くす頃には、面白い循環形式が出来てきた。


→取り()えずみんなで食べられそうな物を持ってくる

→オイラが《殺菌》処理

→取り敢えず簡易キッチンで火を通す

→取り敢えずミラに食べさせる

→うまいなら更に回収、マズいならブラックリスト入り

→それぞれが戻ってくる度に○×(ありダメ)判定を伝達

 このローテーション


 人間、慣れとは恐ろしいもので、これだけの数をこなしていくと、感覚でいろいろ分かってくる事がある。これは大丈夫じゃね? これは、ちとキツいヤツかもな? という具合に。そんな事を繰り返しながら《殺菌》していくと、だんだんその正解率が上がっていった。


 毒の色は、やはり禍々(まがまが)しい紫色。濃かったり薄かったり。全体に包まれている物もあれば、一部分だけが紫色の物もあった。毒にもいろいろあるんだね。勉強になりました。


 もう一度問う。


 俺はどこへ向かっているのだろうか?



  *


 森って凄いね。自然の恵みに感謝だよ?


 少ないのも含め、毒ありが約7割。3割も普通に食べられる物が生ってるんだよ。ありがたい話です。ミラ×(ダメ)判定が全体の約2割弱。《殺菌》しちゃえば、採ってきた物の8割方は食料にできるってこと。


 ああ、何という事でしょう。食料問題に、光が射してきましたよ。〈エフェクト光〉出しちゃう?


 止めといた。


 見たことがある果物に、何かよく分からない実、キノコに山菜(さんさい)は盛りだくさん手に入った。あとは、狩りをして肉の調達か?



 試しにミラ×判定物を少し口にしてみたけど……

 うん、食べなくていい。もしかしたら、凄い栄養があったりするかもしれないけど、俺は食べない。好き嫌いじゃないんだ。ニオイとか食感とか、人として手を出しちゃダメなレベルの物まであった。


 ()えて言うよ? 食事時じゃない事を祈るよ? 


 毒はないから大丈夫、二日酔いでオロオロしちゃった物だけど、自信作なんだ。栄養たっぷりだから、食べてみてよ!って(あぶら)ぎったタプンタプンのオヤジさんに言われたら、どう? 食べる? おえ。


 《雷殺菌》!


 皆の頑張りでアイテムボックスも、マジックバッグの品(そろ)えも充実しました。あ、いろいろ焼きながら、熱々の状態で保存もしていったんだよ。途中でミラとの格闘もあったけど、ニコニコです。


 まさか、こんな所で《エフェクト雷》が役に立つとはね。ははは。《バーサクモード》は使わずに済んで良かったよ。流石にあれは、俺でもひくと思うから。



 遅めのお昼は、屋外バーベキュー大会。

《テーブル作成》《イス作成》《コンロ設置》するだけだから、準備も簡単。王都で買った焼き網と、鉄板が大活躍。大きめのを買っといて大正解。俺偉い。大は小を兼ねるってね。アイテムボックス様々です。


 働いた後の食事はおいしいね。食料確保の充実感も大きいし、皆の笑顔もいいスパイスになりました。


 みんなにも《洗浄》をかけて、違いを実感されるも、感謝されるのっていいもんだ。森を走り回ってたからね。服もキレイになれば、嬉しいよね。洗う手間も(はぶ)けるし。


 一家団欒(だんらん)のひと時に、今後について話し合った。



 パブロ 茶髪父 パブロスキー

 ルイ  赤髪母 ルイージャ

 アリー 赤髪の長女 アリージャ

 ジャック 双子の茶髪長男 そのまま

 レックス 双子の茶髪二男 そのまま


 名前の呼び方は、ちゃんと了承をもらい、少し短縮させてもらった。ちょっと仲良くなった感じがするし、呼びやすいから。


 双子のジャックとレックスには申し訳ないと思うが、そのままだ。ジャッっておかしいし、名前じゃないし。頭文字からジェイっていうのは、本人と合わない気がして(あきら)めた。だから、レックスもそのままになった。



「みんなお疲れ様。食料もだいぶ確保できたから良かったね」


パブロ「はい。お疲れ様でした。お陰様でたくさん集められました。ありがとうございます。初めて見ましたが、まさかあんな方法で食べられるようにしてしまうなんて……」


ルイ「お疲れ様でした。何から何までありがとうございます。これでしばらくは、食事の心配をしなくて済みそうです。我々にはお礼のしようもありませんが……」


ミラ「お疲れ様なのじゃ。わしも沢山食べられて、大満足なのじゃ。バーベキューも良かったのじゃ。またやるのじゃ」


アリー「あ、お疲れ様でした」


ジャック、レックス「「お疲れ様ー」」


 おっ、赤髪獣耳お姉ちゃんのアリーが普通に話してくれるようになったぞ。きっとバーベキュー効果だな。ふふ。みんなで楽しめば、打ち解けるのも早くなるものだ。


「あとは、狩りでもして、肉の調達ができれば言うことなしだよね」


パブロ「そうなんです。そうなんですが、ここのところ動物の姿が見えなくて困っていたんです。森で何かが起こっているのかと……」


ルイ「私たも狩りをして食料を調達していたんですが、ここのところめっきり動物の姿を見ていません。それで食料不足になっていたというのもありまして……」


ミラ「……もしかしたら、アレかもしれんのう。ほれ、おぬしと殲滅(せんめつ)させたヤツらじゃ。あれだけの数がいたんじゃから、この辺の動物は、逃げてしまったか、狩り尽くされとるかもしれんのじゃ」


「あー、そういえばここに来る途中にあったね。ゴブリンの巣が」


パブロ「ゴブリンの巣があったんですか!? この近くに」

 急に声を荒らげ、驚きを表す。


ミラ「そう慌てるでないわ。子供達が驚いておるのじゃ。そのゴブリンの巣は、タビトとわしで既に殲滅してあるのじゃ。もう安心していいのじゃ」


パブロ「ふー。……そうですか、既に殲滅されて……」

 力が抜けテーブルにうなだれる。


ルイ「まあ、ゴブリンの巣があったなんて……、森で出くわしていた可能性もあったのね……」


 子供がいるから、あの群れに遭遇したら、マズかっただろうな。すぐに逃げればいいが、戦闘を始めてしまえば、あの数に飲み込まれてしまうかもしれない。


 パブロ達の強さは分からないけど、あの数は脅威(きょうい)だ。しばらくはスピードでしのげるにしても、いつまで体力がもつか。それに、もしもがある。予期せぬ攻撃、見落とし。戦いに絶対はない。


 遭遇し、逃げ切れたとしても、もうこの辺りでは暮らしていけない。また移動の旅が始まる。戦うか、移動するかの選択を迫られる事になっただろう。


 多分それが分かっているから安心感もひとしおなんだろうな。俺たちが来たタイミングが良かったとは言え、少し間違えば、……あ、その前に毒でヤラレてたわ。


 いかん。スルーだ。



「まあ、それはもう終わった話だから、置いといて。これからどうするかを話したい。俺たちは、この先にある街道に向かう途中だったんだ。町を目指して進んでるところでね。


 実は、安心して平和に暮らせる場所を探しているのは、俺も一緒なんだ。それで、パブロ達が戦争に巻き込まれるのがイヤで逃げて来たと言っていたから、出来ればこれまでの事を教えて欲しいんだ。過ごしてきた国や町の事、見てきた事なんかをね。俺がこれから進む方向にも関係してくる事だから。


 お礼がしたいと言ってくれるなら、そういった話、情報って事でお願いしたいんだけど、どうかな?」


ミラ「ほう。おぬし、平和に暮らせる場所を探しておるのか? なんじゃ、そうだったのか。それなら一度、わしの村に来てみるはどうじゃ? 田舎ではあるが、穏やかに暮らしていくにはいい所じゃぞ?」


 え~、パブロとルイに向けて情報提供の依頼をしてたのに、なぜかミラが入ってきたよ。しかも自分の村を勧めてくれてるし。


 まあ、田舎だろうと、穏やかに暮らして行けるのならば問題はない。ミラが住んでるくらいだ。食料も豊富にあるのだろう。ふむ。一度行ってみるのも悪くないかな。だけどね、


「これこれ、ミラさんや。候補地を勧めてくれるのはありがたいんだけどね。おぬし、その村には帰れるのかな? ん、どうなんじゃ?」


「はっ! そうじゃった! わしは今どこにおるのかも分からなかったのじゃ。ぐぬぬぅ……」


「はい。ありがとうね、ミラさんや。ミラが勧めてくれるくらいだから、いい村なんだろうね。目指す方向が分からないから後回しにはなるけど、ちゃんと候補地には入れておくからね。ほら、これでも食べて、機嫌を直しな」


 マジックバッグから、焼きたてホヤホヤのジャンボシイタケを渡してみる。


「うっ。……ありがとうなのじゃ。いただくのじゃ。でも、近くに行けたら、必ず寄って欲しいのじゃ。約束するのじゃ」


「そうだね。約束するよ。自分で行ってみて判断するしかないからね」


 満面の笑みに変わるミラ。おいしいよね、それ。俺も食べようかな?


 止めとこ。ミラになっちゃうわ。



「こほん。で、どうかな? パブロ」

 こほん転換で話をパブロに戻す。


パブロ「え、ええ。勿論、私達でお役に立てるのなら、これまでの事、話させていただきます」


ルイ「はい。私達も思いは同じです。こんな事で恩返しが出来るとは思いませんが、これまでの経験がお役に立てるのなら、何でも聞いて下さい」


「ありがとう。情報っていうのは、自分が思っている以上に価値があるものなんだ。特に自ら経験したような事なんかはね。求めている事は人それぞれだから、情報に対する価値観も人それぞれなんだ。


 勿論、鮮度や真偽は確認する必要はあるけど、パブロやルイの言う事なら、ずっと経験してきた事だし、間違いないと思う。信頼できると思うんだ。俺にとってみれば、今一番欲しい情報と言ってもいいんだよ。だからプライスレス。もの凄く価値があるんだよ」


  * *



 これまで過ごしていた国、町の事。前に聞いたような苦労話もあったけど、国の政策や、町の雰囲気、人の様子。俺が知りたい事、聞いてて気になった事、紛争や戦争の状況を知る事ができた。年月の経ったものもあるから、変化している事もあるはずだが、そう思っておけば十分参考にはなる。



 これは、進む方向を変えないとダメそうだ。世界地図でもあればいいのになあ。ないかな? 地図の能力とか。


 現在の移動手段が徒歩だから、少しのルート選択のミスでも時間のロスがでかい。ま、進行方向を少し変えるだけでもいいかもしれないし、早く気づけて良かったと考えよう。


 そのお陰で皆に出会えた訳だから。良い方向に考えておきましょう。使える技も増えたしね。でないと、やってられない。無い物ねだりしてても始まらないからね。



 インターネットってホント便利過ぎだった。情報の宝庫。探せば何かは見つかる。凄いよね。ウソ、大袈裟(おおげさ)(まぎ)らわしいモノも(あふ)れてたけどね。無意味なモノも多過ぎ。やがてそれらが意味を持つようになるのだろうけどね。俺には確かめられないけど。


 進化のスピードについて行くのもシンドイけど、突然環境が退化されるっていうのもシンドイね。特に心が。


 当たり前のように出来ていた事が、突然出来なくなる。自分のチカラではどうしようもできない。もどかしさ、悔しさ、情けなさの感情に襲われる。これまでが恵まれ過ぎで、当たり前のようにそれに慣れ過ぎてしまった代償が今、なんだよね。


 分かっちゃいるけど、シンドイよ。


 いかん。せっかくいい話で乗り切ったと思ったのに、マイナス方向に思考が傾いてしまった。毒の影響か? 自分にも《殺菌》しとこ。ふゎ~~ん



 それから、他の種族の話が聞けた。獣耳大百科だよ。


 違うか。


 犬人族目線の主観と、ミラの偏見が入ってるみたいだから、実際には自分で確かめてみるしかないが、いい事聞けたと思う。心の準備って大事。


 あくまでも、教わった事があるレベルの情報もあり、信憑(しんぴょう)性に欠けるかもしれないと前置きされた。


()人族】

 非常に小柄で素早い

 ダンジョンや洞窟に生息

 1匹見つけたら100匹いると言われている


【牛人族】ミノタウロス

 大柄で力強い

 ダンジョンに生息

 非常に好戦的で会敵(かいてき)即戦闘となる


【虎人族】

 獰猛(どうもう)なうえに素早い。獣耳

 群れを嫌い、深い森や洞窟に生息

 好戦的だが、会敵(かいてき)即戦闘とはならないはず


【兎人族】

 小柄で比較的素早い。長獣耳。

 環境への適応能力が低く、ひと所に落ち着いている

 明るい気分屋で、傷つきやすい


【竜人族】リザードマン

 個体差が大きい

 ダンジョンや湿地帯を好んで生息

 好戦的で単騎戦から集団戦までこなす


【蛇人族】ラミア

 動きはやや遅いが獰猛

 ダンジョンや洞窟に生息

 会敵(かいてき)即戦闘となる。逃げられない


【馬人族】ケンタウロス

 やや大柄で素早い

 比較的環境への適応能力が高い

 友好的で頭の回転が早い


【魔人族】

 姿は人と変わらず、角がある

 身体能力が高く、魔力が大きい

 人間と同じく、それぞれに様々な考えを持つ


【猿人族】人間

 個人差が大きいが、知能は高い

 特殊な能力やスキルを持つ者が多い

 それぞれに様々な考えを持つ、要警戒


【鳥人族】ハーピー

 小柄だが、獰猛で素早い

 ダンジョンや山間部を好む

 好戦的で集団で襲ってくる


【犬人族】

 やや小柄で素早い。獣耳。

 環境への適応能力が高く、比較的どこにでもいる

 真面目で社会性が高い


【豚人族】オーク

 やや大柄で動きは遅く、知能が低い

 ダンジョンや森に生息

 好戦的で、会敵即殲滅(かいてきそくせんめつ)対象


【鬼人族】ゴブリン、オーガ

 ゴブリンは、小柄で知能が低い

  どこにでも生息し、群を作る

 オーガは、大柄で知能は低い

  ダンジョンや深い森に生息し、群れを嫌う

 双方好戦的で、会敵即殲滅(かいてきそくせんめつ)対象

 角もあるため、魔人族と考えられてきたが、知能も低く、外見も醜いため、別の種族であるとされている。



 種族間同士の力関係や、仲の良い悪いは、それこそ個人によっていて、比較的人間と共存共栄の方向にあるのが、魔人族と犬人族。勿論全てがという事ではなく、差別の対象となっていたり、戦闘を繰り返している地域もある。


 過去には種族の生き残りを()けた大戦争が繰り返されていたので、その名残もあると。


 また、ダンジョンに入らなければ会えない種族もいるが、戦闘は覚悟しておく必要がある。



 なんだろね。ツッコミ所が多いのは、いつもの事だけど、種族って何なんですか? って聞きたくなるよね。そもそも論になるから却下だよ。そういうモノなんだろうね。


 種族というか、もうモンスターでいいんじゃないのって言いたくなったのが多数。会いたくないのも多数。獣耳に触れてみたいのが少数。


 進化の過程で、いろんな方向にいっちゃったんだろうね。まあ、よしとしておきましょう。どっちにしろ、俺の中では、ダンジョンは極力行かない方向に決まったみたいだ。



 それにしても、【猿】の中に人間も含まれてるって所が、何か深い気がする。


【ヒト】とは、広義にはヒト亜族に属する動物の総称。


 こっちの世界では、そういう立ち位置にいるっていう事だろうね。人間の学名であるホモサ・ピエンスには『知恵のある人』という意味がある。【人族】と付く以上、言語や文化があり、それなりに知恵のある種族がこうして識別されていると考えるべきなのか?


 深く考えるとまた、思考の闇に引き込まれる事になりそうだから、ここで止めておこう。


 人間も動物。目が赤くないってだけで、一番厄介なモンスターなのかもね。

 

 あれれ~~。……これってフラグ?



 気になっていた、エルフやドワーフについては、【妖精】という(くく)りであったり、牛人族、魔人族、猿人族だなどと議論が絶えず、詳細は不明。当の本人達は、そこに(こだわ)りはないらしく、決着がつかない原因にもなっている。



 括ってみたところで意味はない。会えればいいのだ、会えればね。待ってろよ。ドワーフ! おいしいビールを造ろうぜ! 勝手に職人認定。君ならできるはずだ。応援はするからね。




 それにしても、パブロもルイも、いろんな知識があって情報通だよね。これくらいは当たり前なのかな? いろんな町を渡り歩けば、いろんな事を見聞きできるからね。そんなもんなのかな。見聞を広めるって大事だね。



 俺の常識は非常識。教えてくれただけでも感謝です。






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