第1話
建物の前で車が止まる。車から降りた僕達は建物を見上げた。
ここが、「囚人学園」…。
大きめの玄関から入ると白衣を着た大人が2人立っていた。
「はじめまして。」
「どうも」
2人とも女性だった。
片方は髪が短く、もう片方は髪を結んでいる。
「じゃあ、付いてきて」
そう言って髪を結んでいる方の女性は歩き始めた。私とお姉ちゃんは言う通りについて行く。
学園内は若干暗い。天井の蛍光灯も切れかけていた。
「2人は、姉妹なんだって?」
髪が短い方の女性が声をかける。
「はい。そうです。」
お姉ちゃんが返事をする。
「そっか。」
しばらく歩いていると部屋の前に来た。
「じゃあ、お姉ちゃんの方はこの部屋に入るわ。」
そう言って髪の短い女性がドアを開けようとする。
「あなたは、もう少し歩いてね」
そう言って髪の長い女性は僕の手を掴む。
お姉ちゃんとは、きっとしばらく会えないのだろう。お姉ちゃんの方を見るとまるで「大丈夫」と言うかのよう頷いた。
僕は髪の長い女性について行き、しばらく歩いたところでお姉ちゃんが入った部屋にそっくりな部屋の前に着いた。
「ここよ」
そう言って髪の長い女性は部屋に入った。
部屋の中には椅子が2つだけあった。
「ここに、座って。」
女性はもう1つの椅子に座った。
僕も椅子に座る。
「この学園な入学するためには、いくつか質問を受けてほしいの。」
「……はい」
僕は素直に頷く
「あなたの名前は?」
名前…名前って、お姉ちゃんが僕の事を呼んでいた呼び方だろうか?
「…るり。」
「るりちゃん?なんて漢字書くの?」
漢字?そんなもの考えたことないしお姉ちゃんは僕の名前を漢字で書いたことは無い。
「わから、ないです。」
女性は少し目を見開くと紙にさらさらと何かを書いていた。
「この中でしっくりくる字はある?」
いくつか漢字が書いてあった。その中で、1つ気になるものがあった。
「瑠璃…」
「あら、この漢字が好き?」
頷くと女性はニコリと笑って頷いたあと別の紙にその名前を書いた、と思われる。
「じゃあ、次。誕生日は?」
誕生日…お姉ちゃんが言っていた日の事だろうか
「えと、12月、31日…だと」
「だと?どういうこと?」
………やっぱり、そうなるか
「僕の親は、僕達に興味なんてなかったんです。名前、誕生日も全部お姉ちゃんから教えてもらいました。僕の事を名前で呼んでもらったことなんてないし、誕生日…も祝ってもらったこともないし…学校って言うのも行ったことない。親は、僕達を存在しない、という事にしていた…」
女性は真剣に聞いてくれた。
「そう、だったの。」
また私は頷く。
「…だから、殺そうとした。」
女性は手に持っていた紙に何かをさらさらと書いた。
「…分かったわ。ありがとう。」
そう言って女性は立ち上がった。
「今からあなたの部屋に案内する。ついてきて。」
僕たちは立ち上がり部屋の外に出る。
「ここの通路が囚人学園の寮に繋がっているの。」
「へぇ。」
「慣れないこともあるかもしれないけど、何かあったらすぐに周りの人に頼っていいのよ。」
「は、はい。」
しばらく歩いていると102と書かれたドアの前についた。
「ここが、あなたの部屋。あなた以外にもう2人いるから挨拶してね。あなたが来ることはもう知っているはずよ。」
「はい。」
「そうだ。最後に私の名前を教えないとね」
そう言って紙にさらさらと何かを書いた。
「私は水月。何かあったら呼んでいいからね。」
じゃあね、と呟いて水月さんは歩いていった。
いよいよ、囚人学園での生活が、始まる。
僕はドアノブに手をかけそっと開いた。