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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

当てつけの恋

作者: どんC

 ナタリーとセレブロス(私)が婚約したのは、ナタリーが五歳私が六歳の時だった。

 幼い彼女は、たどたどしくしゃべる。小太りのみっともない子供だった。


「よろしく。ナタリー」


 彼女は私に一目惚れした。

 キラキラした瞳で私を見詰める。

 絵本の中の王子様を見る眼つきだ。


 ナタリーは私に釣り合うように努力した。

 勉強もダンスもマナーも語学も、正に血を吐くような努力だ。

 そして美人ではないが気品が出てきた。


 今度は私が釣り合わなくなった。

 サボっていた訳じゃないが。

 彼女の成長が著しく。

 追い越されてしまった。


 私の好みは守ってあげたくなる儚げな美人だ。

 まあ そんな女は侯爵家に相応しくない。

 せいぜい妾か愛人だ。

 社交界の海千山千の妖怪どもと太刀打ちできないからだ。


 そんな時私はナタリーの異母妹サラに出会った。

 体の弱いサラは美貌以外取り柄もなく、全て人並み以下だった。

 寝たきりだった彼女は学園に入るまで会った事が無かった。


 だが婚約者ナタリーに当てつけるには、最高の相手だ。

 彼女も姉にコンプレックスを持っていたようで。


「嬉しいです。姉様より私を選んでくださるなんて」


 無邪気に笑う。


(そうだよな。美貌なんて十年もしたらおじゃんだし。頭の空っぽな美人は三日で飽きるし。子供でも産めば骸骨かデブかどちらかだが、知性と気品は衰えないが……)


 私達は一目をはばからずデートした。

 学園や公園や図書館やパーティー。

 彼女のよく行く場所だ。

 当てつけの恋は人目に付かなければ意味が無い。

 特に彼女の目に触れねばならない。


 ナタリーが何か言いたげだったが。


「何か言いたいことがあるのか」


「……」


 彼女は俯き黙り込む。

 少しイラつく。

 彼女の笑顔を見たのはいつだったか?

 キラキラ尊敬の眼差しを向けられていたのは何時までだったか?


 代わりに手紙が山のように来たが、机の引き出しに封もあけずに放り込む。


「醜悪だな。嫉妬に狂った女の顔は最悪だ」


 昔 彼女をそう評していた従兄弟がパーティーでこう告げた。

 何でも私に近づく女に警告していたらしい。


 婚約者に近づくなと!!


 私は笑った。

 私はサラにドレスを送っていた。

 今日サラはそのドレスを身に纏いまるで女神のようだ。

 私はサラと踊る。

(下手くそなダンスだ。ホントこの女。顔だけなんだよな~)

 ナタリーには花束や本を送った事があるが、ドレスやアクセサリーは無い。

 辛うじて代々我が家に伝わる婚約指輪は婚約した時、父が侍従をとうして送った。


「大丈夫か?」


 従兄弟のモリス・エスビビルが心配そうに尋ねる。

 冴えない風貌の彼は男爵家の三男だ。


「みんな君がナタリーと婚約破棄して、サラと結婚するんじゃ無いかと噂しているよ」


 私は嗤った。

 歪な笑顔だ。


「あり得ないよ。ナタリーは僕に夢中なのに。別れられるものか」



 ある日ナタリーの妹が代々我が家に伝わる婚約指輪をはめて、侯爵家にやって来た。


「一体どういうことだ!! なんでお前がその指輪をはめている!!」


「こんにちは。セレブロス様。あら?知らないの。お姉様と貴方の婚約は破棄されました」


「なんだ!! まさか!! 俺とお前が婚約したなんて言わないだろうな!!」


「まさか~。ご安心ください。私とセレブロス様となんてありえませんわ」


 彼女は笑いながら手で口を隠す。

 指輪がキラリと光る。


「サラと僕が婚約したんだ」


 いつなまにかモリスがサラの横に立った。


「僕は聞いたよね。大丈夫なのかって、セレブロスきみは廃嫡されたよ」


「なんだって!!」


「僕がエスビビル侯爵家を継ぐことになった」


「そんな馬鹿な!! ナタリーはどうした!!」


「姉様は何度も何度も何度も貴方に手紙を書いたわ。それを見れば分かるわ」


 私は自室に駆け込んだ。


 机の中の沢山の手紙を見る。

 ナタリーからの手紙。


 それによると数人の男爵令嬢や金持ちの令嬢が私の子供を妊娠したと言い出し。

 彼女は父上と相談して私は廃嫡された。

 産まれた子供は、養子に出され。

 女達は修道院に入れられた。

 辛うじて私は一番爵位が高い、ソフィア男爵令嬢の家に婿養子になることに決まり。

 ナタリーは隣の国に嫁入りする事になったと書かれていた。


「お姉様は実は隣の国の王様とメイドの子供で、メイドはお姉様を産むと直ぐに無くなって。お父様とお母様が留学生だったけどお姉様を養女にしたの」


 いつの間にかモリスとサラがいた。


「運命なんてわからないものね。王子や王女が王位争いで潰し合って。残ったのはお姉様とはとこに当たっるアンソニー様だけなの」


「アンソニー?留学生の?」


「そう一緒にランチしたでしょう」


「アンソニー様もお姉様と貴方が仲が良ければ取らないつもりだったけど。貴方を見て花盗人になることを決めたそうよ。花盗人なんて面白い言い方よね」


「俺は、はめられたのか?」


「「自業自得でしよ(だろ)」」


「モリスも言っていたでしょ。大丈夫か?って」


「ナタリーのこと醜悪だと言っていたじゃないか!!」


「醜悪なのは、お前に纏わりついていた女どもとお前だよ」


「男爵令嬢達を孕ませ、後始末をナタリーに押し付け。伯父上も伯母上もあきれ果てていたぞ」


「何度も姉様と話し合いをさせようとしたけど、貴方私とデートしてすっぽかしていたでしょう」


 サラが嗤う。


「私 貴方が嫌い。愛されることに胡坐をかいて。何時までも女が待っていると思ってたの?」


 ホントにお馬鹿ね。と嗤う。


「貴方好みの儚げな少女の化けの皮を剥がすと強欲な化け物よ」


 一息つくと。


「今日姉様と彼。船で旅だったわ。『男爵令嬢とお幸せに』って」


 二人は出ていった。


 後には……一人……私だけが取り残された。






             ~ Fin ~



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2018/4/9 『小説家になろう』  どんC

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★セレブロス・テロ・エソセード 18歳

ナタリーの婚約者。ナタリーが優秀になり当てつけの恋をするようになった。


★ナタリー・アデソン 17歳

セレブロスの婚約者。優秀になりすぎて嫌われる。


★サラ 16歳

ナタリーの妹。儚げだが凶暴。拳で語る派。


★モリス・エスビビル 19歳

不細工だが真面目でコツコツ努力派。

サラに捕まる。気苦労が絶えなさそう。


★アンソニー様

外国の王族。花盗人。




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