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「やべぇぞやべぇぞ…… 人殺しはさすがにマズい……」
俺は人生で経験したことないくらいに顔面が真っ青になっていたと思う。
ただ、何を思ったのか知らないが、あっ、でも刑務所に入ったらあの激務から開放されるのかと思うとそれはそれで悪くないのかな、と思ったりしてしまった。
とりあえず突き飛ばしてしまった人の救護をしよう、うわあ、女の子じゃん。高校生くらいかな。ごめんな、君の人生を終わらせてしまって。救急車と警察……
「あの!」
「うわあ喋った!」
「ちょっといいですか!」
突き飛ばした女の子がすくっと立ち上がって俺に話しかけてきた。
「金ならなんとかする!今救急車を呼ぶから」
「え?大丈夫ですよ、私悪魔なので平気です」
悪魔とか言っちゃってるよ、頭をぶってやっぱり気が狂ってしまったのか。精神科の電話番号なんか知らないぞ……
「人間、君に話があるんだ」
示談内容かな、最近の若い子って怖いからな、いくら取られるんだろうか……給料何ヶ月分持って行かれるんだろう……
その女の子はずいっと僕の目の前にやってきて、一言言い放った。
「あなたの願い、なんでも一つ叶えてあげます」
え。
この子は一体何を言っているんだろう。なるほど、頭をぶった衝撃でもしかしたらぶつかったことも実は有耶無耶になってしまったのではないか。
試しに強気に出てみようか。
「ほんとになんでも一つ叶えてくれるんだな」
「私は嘘はつかないわ、ただしそのか」
ならば俺の願いというのは一つだけだ。
「よし、お前、ウチの店で働いてくれ」