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彼女たちのルセット  作者: 鳥居れもん
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川本八重の場合 その2

昨晩、交換したLINEに彼女からお誘いがあった。

 ここ最近の昼休みは後輩と食事をしているというのは、ラーメンを食べながら聞いていた。正直意外だった。彼女にもそれなりに気を許せる相手がいたんだな、という少しばかり失礼な話だけど。しかし1年間、一緒の授業の間だけだったとはいえ彼女と交流していた限り、新年度が始まって数週間でそういった仲の後輩を作るタイプには思えなかった。そして尚且つ、私にもその誘いが来るとは思っていなかった。

 心境に変化があったからできた後輩なのか。それとも、その後輩との交流を通じて、心境に変化があったのか。

「こんにちは」

 実際、会ってみた後輩君の印象は特別なものではなかった。人当たりの良さそうな、よく言えば親しみやすい感じ。

「少し変わったお弁当を用意してみました!!」

 そう言って開かれた弁当箱には麺が詰まっていた。

「さらに!!」

 開かれたもう一つのお弁当箱には青ネギとメンマともやしが詰まっている。

「そして!!」

 取り出した巨大な水筒にはスープが詰まっているらしい。

「なんと今日のお弁当はつけ麺です!!」

 ちょっとした沈黙。

「あれ……お嫌いでした?」

「いや、好きだけど。昨日もラーメン食べに行ったくらい」

 再びちょっとした沈黙。彼は白川さんに視線を送り。

「……先輩言っといてくださいよ!! なんかスベりましたよ!!」

「ごめん!! まさかお弁当にラーメン出てくると思わないじゃん!!」

 思ったより意思疎通は出来てないらしい。

 しかし、そこにいた彼女は私が一年間見てきた彼女とは大きく違っているのは確かで。砕けた口調、コロコロと変わる表情。

 そんな風に笑うんだなぁ。


「クジョー」

「はい? イントネーション独特ですね?」

 つけ麺を楽しんだ後、お手洗いで白川さんが席を外した時、彼にちょっと聞いてみたいことがあった。

「白川さんさ、クジョーが初めて会った時からあんな感じ?」

「うーん、そうですね。そうだと思いますけど」

 軽く考えた後、彼は答える。

「そっかぁ。仲いんだね」

 別に深い意味はなく、なんとなく他愛ない会話としてふと質問してみる。

「なんか人と仲良くするコツみたいなのでもあんの?」

 クジョーはあごに手を当て、分かりやすい思案のポーズをとる。

「いやー、俺だってそんな友達作り得意じゃないですよ」

 あっちこっち視線を向けながら、彼は絞り出すように一つの回答を出す。

「強いて言うなら、同じ釜の飯を食う。じゃないですか?」

 うんうんと頷きながら続けるクジョー。

「美味しいご飯を食べるって凄い気軽にできる幸せを感じる方法だと思うんすよね。それで自分が美味しいなって思うモノを、一緒に食べてる人が美味しいなって感じてくれてたらやっぱ嬉しいんすよ。価値観の共有っていうか」

 同じ価値観の人同士が仲良くなるのはごくごく当たり前だ。美味しいモノが食べたいという価値観は確かに数多くの人にあてはまるかも。

「じゃあ私達ももう仲良しなわけだ?」

 私は自然と笑顔を浮かべていた。前向きな考え方だなと思う。そんな単純なことじゃないだろうとも思う。

「だったらうれしいっすね」

 けど、まぁ、悪くないかな。とも思う。

「ごめんーお待たせ」

「お気になさらずー。クジョーと相互理解が果たせた」

 戻ってきた白川さんに冗談交じりに返す。

「相互理解?というかいつの間にか呼び捨てに!」

 理解が追い付かない彼女をそのままにベンチから立ち上がる。

「ごちそうさま、クジョー。また来るよ」

「はい、是非に」

「なんかいつの間にか仲良くなってる!」

 教室に向かう足取りを一度とめ、振り返る。

「しーちゃん、またね」

「……しーちゃん?」

 私はちょっと照れ隠しがてらニッと笑う。

「あだ名!」

 返事を待たず、私はそのまま歩き去る。

 悪くない。こういう学校生活も悪くない。

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