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彼女たちのルセット  作者: 鳥居れもん
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川本八重の場合 その1

1年の選択授業。偶々隣に座った女子は優等生という言葉がしっくりくる女子だった。

 白川麻美。艶々とした長い髪に、整った綺麗とも可愛いともいえる顔立ち。上品な笑い方、誰からも好かれる穏やかで優しい雰囲気。成績も良く、委員会の仕事もして。それでも気取った様子もない。

 彼女は誰にでも平等に接していた。クラスメイトでも、初めて会話する私みたいな人にも。均等な距離感でそこにいた。その事にこれといって深く立ち入るつもりはなかった。私自身も人との距離が近い方でない。気になるところを強いて言うなら、距離を話すでもなく近づくわけでもない、距離を保つタイプだったことか。

 なんとなく、この付かず離れずの距離感を楽しんでいた。

 そんな関係のまま2年になろうかという頃、私は彼女の変化を感じていた。いや、変化というにはあまりに些細なことか。ひょっとしたら、初めからそうで、私は単にそれを勘違いしてとらえていたのかもしれない。

 彼女の浮かべる笑みは、穏やかさからくるようなものじゃなくて、ただの苦笑いなんじゃないかって。そう感じてしまうと、彼女から感じる距離に少しだけ納得できる。突かず離れずの距離は彼女にとって楽だからじゃなくて、何かしら無理をしてでも行うべきだと判断してのことかもしれない。

 我ながら捻くれた考え方かもしれない。そうでなければそれでいい。彼女とこれまで通りつかず離れずの付き合いをしていくだけ。けれどもし、彼女が無理をしていたなら。

 ほんの少しでいい。彼女の本来の笑顔が見てみたいな、と思う。

 そんな気持ちで私はある日の昼休み、彼女の教室へと向かった。近所に出来たラーメン屋を口実に、彼女と少し話をしてみようと。

 しかし彼女はそこにいなかった。教室に居た女子に声をかけ、彼女のことを聞いてみる。

「ちょくちょくお昼休みはいなくて……。 2年に上がってからは殆どいないの」

 そう語る女子の表情は寂しげで、この子もきっとあの子のことが気になってるんだろうなと思う。 女子にお礼を言って教室に戻る。次の授業は彼女と同じ選択授業。

 少しだけ、踏み込んでみようと思う。もし望まれなければ、また距離を保てばいい。

 そう考えながら、私は自分の教室へと戻る。この時はまだ、彼女のあんな反応を見れるとは夢にも思っていなかったけど。

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