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迷わず逝けよ? 逝けば分かるさっ!
迷いに迷った末、脳内に響いた幻聴に唆され、勢いで行動したが……普通に散った。
―――魔物の巣。
ソコに有ったのは、鬼人の城塞だった。
―――
――
―
ほんの僅かだが、上階から空気が流れてきてる事に気づいたオレは、上を目指すことにした。
そして階段を登った先にあった十字路を、左手の法則に従い左折。
しばらく進んだところで、二体のオークと遭遇。
優先すべきは地理の把握とばかりに、強引に突破して全力逃走。
ゴブリンは足の長さの差で、圧勝。
インプは素早いが、持久力が無いので、普通に逃げきれる。
コボルトの場合、足が速い上に追跡能力が高いので逃げ切るのは困難。
―――と言っても、コボルトは臆病な性質なので、飼い主? である、ゴブリンやオークを排除すれば逃げ出すので、さほど脅威ではない。
そして、オークの場合。体格はオレより良く、図体に見合った筋力の持ち主でかなりの強敵だ。
だが、見た目から予想できるが……DEBUだ。
ぽっちゃりとか、ふとましいとか、マシュマロなんちゃらって言葉で誤魔化せないほどブーデーだ。
確かにパワーは有るが、スピードが無い。
さらに、スタミナも無ければ、知能も足りない。
それでも正面から戦えば脅威だが、逆に言えば正面から戦わなければどうとでもなる程度の相手だ。
―――それが油断だったのだろうか?
流石に死亡数三桁超えた今のオレに、死に戻り前提の行動に忌避感は無い。
いやまあ、痛いは痛いし、苦しい事は変わらないが……所詮は一過性のモノだから我慢できるってわけだ。
そんなこんなで、下手に闘うよりも、逃げて未知の道を調べた方が良いと判断しての強行突破だったが……失敗した。
後ろから追ってきたオークは振り切ったが、次の交差点で出会った多くのオークズにボコられた。
ボコられたまでは規定の範囲内で、ある意味予定通りだったが……ボコられた後、殺されずにお持ち帰りされたのは予定外だった。
え? 拉致られた!?
え? え? オレ食われるの?
むしゃむしゃされるのは嫌だなぁ……いっそ自害するか?
無抵抗状態のオレをオークは無造作に担ぎ上げ、その巣に運びこむ。
いやいや、コレはピンチでチャンスだ。
情報を集める格好の機会だ……なあに、経験上。この負傷具合なら数時間でオレは死んで帰れる。キツイのも少しの我慢だ……。
痛みと腫れで霞む視界の中、オレは必死に情報を集めようと辺りを見渡した。
広い空間に、高い天井。
複数構造の構造物に、壁と言うか、塀。
歩哨のように巡回するオークと、ゴブリン。
一際大きな構造物の前で、門を守るように立っている有角で赤色肌の漢。
―――ああ、これ城塞だ。