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<49>

 「……と、そう言った経緯であります」

 

 「八百万の國からの希人であり、魔王の庭に囚われた哀れな名無しよ」

 

 「いや、オレ……僕の名前は……」

 

 「答える必要はない。主様は、少年の真名を問いているのではない。

  この迷宮に誘致された駒としての名……つまり、役割が無いと仰せられているのである」

 

 「然り。

  運命に偶然はなく、ありとあらゆる事象は全て必然であるが定常。

  種火がなくば火は起こらず。火がなくば煙も立たぬが道理よ。

  

  然らば煙が見え、火が見えぬなら。それは見えておらぬだけに過ぎぬ。

  

  心得よ。原因因果宿命命運。流転する時の流れに身を任せ同化するのは逃げである」

  

 「……?」

 

 「少年よ。主様は、ただの偶然にみえても、ソコには必ず理由があり。ソレを裏を考えず運命だと諦めるな。と仰せられているのである」

 

 「……めっちゃ分かりにくいんだけど?」

 「神族とはそういうものである」

 「さっき、普通に話そうとしてたみたいだけど?」

 「……それを問いてはならぬ! 主様にも体面と言うものがあると察するが良い」

 「……把握した」

 

 女神が素の痴態を晒してから、状況を理解した後。真顔に成って手を振ると、部屋の惨状は夢幻の如く消え失せ。

 聖騎士もまた、何事もなかったかのように仕切り直した。

 

 整然とした謁見の間のような場所で超然佇む女神は、正しく女神としか例えようがない。

 凛とした声で静かに語られる言葉も、朗々と響き渡り。聞き違えること無く耳に優しく入ってくるようで、実に心地よい。

 

 だが、足元から感じる感触と、僅かに身じろぎしただけで、何かが崩れるような音が鳴った。

 

 どうやら、部屋を一瞬で片付けたのではなく。幻影か何かで誤魔化してるだけのようだ。

 

 その証拠に、すまし顔で淡々と語る女神をよく見ると、ほっぺたに食べカスらしきモノが付いていた。残念過ぎる……。

 

 「……」

 「……」

 「……」

 

 そして、その事にオレが気づいたことに、聖騎士も気づき。すっとさり気なく、女神の口元を拭いた。

 吹かれた女神も、それで失態に気づき、しばし、沈黙が訪れた。

 

 だが、さすがと言うか何というか……顔色一つ変えず。何事もなかったかのように女神は言葉を続ける。

 

 「繋がれた鎖を断ち切るには、祖の呪縛を断ち切るに等しき難事よ。

  下克上を成しえるには、機と実と和が無くばありえぬこと。

  

  然るに三の要。一つ足りとも満たさず汝の前に道はない。

  歩む道を誤りたもうなら、引き返すが最善の道とならぬが必定。

  

  心せよ、汝が歩む道は茨成り」

 

 「……?」

 

 「今のままでは、元の世界に帰るのは難しいので諦めなさい。と、主様は仰せられている」

 

 「冗談じゃない! 諦めろと言われて諦めるなら、オレはとっくに心が折れて廃人になってるさ!!

  それに……難しいって、ことは、不可能じゃないって事だよな?

  

  ―――だったら、オレは帰ることを絶対に諦めない。諦めるものかっ!!」

  

 「天命を受け入れず、定命を逆しし不死者は唾棄すべき存在。

  なれど、悲運と嘆かず。試練と為して歩みつづけしモノは好ましきこといとあはれ

  

  身を魔に囚われし妾なれど、心魂は自由成り。

  汝に祝福は非ず。されど、和と機は与えよう。

  

  ―――残る一の要。実を成すが答えとならん」

  

 「……えーと、助言はする。……ってこと?」

 

 「少し違うが、まあ大きく間違ってはおらぬ。

  本来なら祝福か加護を与えられるところなのだが……残念だろうがソレは諦めよ」

  

 「良くわからないけど、帰る手助けをしてくれるなら十分さ!」

 

 こうして、女神との会談も終わり。

 オレがここから帰るために必要な、具体的な事を聞こうとしたが……。

 

 「しばし待て、不埒者に諌を与える。

  糸に繋がれし魔と異なりしモノ……堪えて答えに応えよ」

  

 「……え? うわっ!?」

  

 突如女神が、オレを指差し。クイッと招くように指を曲げる。

 すると、オレの懐から何かが飛び出し……女神の手に収まった。

 

 ソレは……オレのスマートフォンであり。

 

 女神は慣れた手つきでスマートフォンを操り、どこかに電話をかけ始めたのだった。

 





 本来なら女神と人間が直接会話することなんてありえません。

 主人公の口調も崩れ。不敬を晒してますが、動揺しているのでお互いに気づいてません。


 元々は聖騎士と女神の話を聞いて、主人公は、イエスかノーを答えるだけの予定でした。


 残念女神は仕様ですが、それが人前に晒されることは本来有り得ません。


 主人公 (イレギュラー)と出会ったことによる事故みたいなものだと思ってください。


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